地震発生! クロサイ逃走!――上野動物園の猛獣脱出対策訓練に密着してみた(1/2 ページ)

地震でクロサイがおりから逃走した――という事態を想定し、上野動物園で実施された「猛獣脱出対策訓練」に潜入。真剣な表情で臨む職員たちを追った。

» 2012年02月08日 21時04分 公開
[笹山美波,ITmedia]
画像 こちらは本物のクロサイ(の看板)。こいつがもしも脱走したら……

 もしも東日本大震災のような大きな地震が発生して、猛獣が動物園のおりから脱走してしまったら――。恩賜上野動物園(東京都台東区)で2月8日、地震で崩れたおりからクロサイが逃げたことを想定した訓練が実施された。

 来場者が見守るなか、張りぼてのクロサイを追いかける職員たち。おおっと1人が負傷したぞ。大丈夫か! なおも暴れるクロサイ。早く、早く麻酔銃を……! とまあこんな感じで真剣に繰り広げられる訓練の模様をお届けしよう。

ほのぼのした昼下がりが一転……

画像 おりの外へ出てきたクロサイらしき物体

 逃走する動物を捕獲し、来場者を安全な場所へ誘導させる「猛獣脱出対策訓練」は、多摩動物公園と毎年交互に行なっている。今回は12回目。上野警察署と上野消防署の協力のもと実施された。舞台は動物園の西園。お昼時でほのぼのした雰囲気が漂う。100人ほど入る食堂は満席だ。

 20人近い取材陣が位置につき、カメラを構える。しばらく待っていると、飼育員用の扉の向こうに灰色の影が見えた。あれがクロサイか……? のそのそと動き始める灰色の物体。それに合わせて園内アナウンスが流れた。「クロサイが1頭おりから逃げ出しました」。な、なんだってー!

 静まる園内。目の前に張りぼてのクロサイが現れた。実はこれ、職員が1カ月かけて手作りしたもの。中に職員2人が入り、それぞれが前足と後ろ足となって移動させる。もちろんサイズは実物大(体長約3メートル、高さ約180センチ)。まつげが生えていたり、シワが描かれていたりするところは割とリアルか。

 それにしてもクロサイの動きがぎこちない。中の人の呼吸が合っていないのだろうか。報道陣に微妙な空気が流れ、記者も少し笑いそうになってしまった。だがぐっと我慢。なんとか気持ちを切り替える。だってここは真剣な訓練の場なのだ。

 クロサイが園内をふらつき始め、あろうことか来場者のいる広場の方へ向かってしまった。絶対に通すまいと10人ほどの職員が白い網を広げ、遮断。だがクロサイはなおも突進し、網の突破を試みる。これはピンチだ。職員は太い竹の棒で応戦。クロサイはひるんで方向転換。おい、どこへ向かうんだ……。


画像 ク、クロサイ……か?
画像 遮断網に突進を諦めたクロサイ

画像 カメラ目線?

 クロサイがたどりついたのはシマウマのおりの前だった。シマウマ(本物)は野生の感で身の危険を感じたのか、クロサイを見るやいなやおりの中をグルグル走り回る。かなりパニックになっているようだ。そりゃあ突然でかい張りぼてが現れたらびっくりするよな……。

 クロサイは1歩1歩ゆっくりとおりの前を通り過ぎる。そんなクロサイを至近距離で捉えようと、記者は意を決して前へ。するとなぜかこちらを向いてカメラ目線で少し立ち止まってくれた。サービス精神旺盛なできる子じゃないか……などと思いつつ、引き続きクロサイを追う。

 その先にはまたしても職員がバリケードを張っていた。突破を試みるクロサイ。真剣な眼差しで対峙する職員たち。そのとき1人が体当たりを受けて倒れてしまった。遮断網は崩壊してしまい、クロサイが通り抜ける。倒れた職員はピクリとも動かない。だ、大丈夫か?

 なんと職員は「心臓震盪(しんとう)」で重体(という設定)だった。駆けつけた救護班に担架で運ばれ、すぐにAED(自動体外式除細動器)で応急処置を施された。素早い対応により、どうにか命は取り留められたようだ。ふぅ。良かった。はっ! そういえばクロサイは……?

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