荒川線と電車ごっこはどっちが速いのか?:百年戦争終結?(1/2 ページ)
都営荒川線は昨年8月で開業100周年を迎えた。御歳100歳の荒川線に、電車ごっこで(勝手に)立ち向かった「team DG」の物語。
電車 vs. 電車ごっこ――100年夢見た対決が昨年末、ひっそりと行われた。果たしてどっちが速いのか……。長らく議論すら交わされることもなかったその疑問に、あるチームが挑む。電車ごっこが戦う相手は、昨年8月に開業100周年を迎えた都営荒川線。熊野前駅から梶原駅間の並走可能な区間(約1.9キロメートル)で争われた。
都営荒川線は、東京都交通局を事業主体とする三ノ輪橋駅(東京都荒川区)から早稲田駅(同新宿区)を結ぶ軌道路線。開業当時あった都電路線の大半は廃止され、軌道線としては日暮里・舎人ライナー、ゆりかもめの軌道扱いの部分をのぞけば、荒川線と東急世田谷線を残すのみとなっている。1911年8月に開業して以来、下町を支える生活の足として今も多くの乗客を乗せて運行されている。
そんな歴戦の勇者に電車ごっこで立ち向かったのは、東京日の出研究所や東京庚申堂を主宰するヤマグチケンスケさん。初めて荒川線に乗った際、「東京にもこんな牧歌的な電車があるのか」と感動すると同時に、「これ自分で走った方が速いんじゃね?」という疑念が生まれたのがそもそものきっかけだったと振り返る。
しかし、自分で走るのは疲れるので嫌だと、すぐに忘れることにした。それが昨年、飲みの席でふとそのことを思い出し、友人に話したところ「それ試してみようぜ」と盛り上がり、さらにジョギングが趣味だという別の友人が走ってくれることになった。実にとんとん拍子。そして集まった人々により「team DG」(Densha Gokkoの略)が結成されたのだった。
線路に並行して伴走できる熊野前駅から梶原駅のほぼ直線の区間に目をつけ、事前に調査。停車駅や信号、周囲の交通量などから開催に踏み切った。しかも、ただ走るのではなくこちらも“電車”としての対等な勝負を望むことになる。
調べてみると、2011年は荒川線がちょうど100周年の節目だと判明。「やろう」となったのは11月だったが、「せっかくなら年内にやった方が荒川線さんも喜んでくれるに違いない」と勝手に思い込み、1カ月で準備した。
ノリで決まったとはいえ、実際に戦うとなるとやはりルールが必要となる。荒川線も交通法規を遵守して信号は停止し、駅にはちゃんと止まるのであれば、電車ごっこ側も走る際は歩道を走り、信号は止まり、駅を設け乗り替えを設定した。道路交通法で問題がないかを確認し、二度にわたるコースのロケハンもした。
歩道を走る行為はランニングと同義としても、数人が連なる電車ごっこに巻き込まれる通行人がいないとも限らない。そこで車体(走者)の連結にはゴム紐を利用し、ちゃんと前後に運転手と車掌を配し安全面にも気をつけた。
ちなみに電車ごっこ側が途中で1カ所停車駅を設けたのには、乗客の入れ替えをすることで駆動力を復活させる思惑もあった。時には姑息と思われても勝たなければいけない戦いがそこにはあったのだ。では、今回の対決の舞台をご覧いただこう。
より大きな地図で 荒川線競争map を表示
熊野前駅から梶原駅の区間には4つの停留所がある。荒川線は短い区間を加速、減速、停止を繰り返し、時には信号で止まりながら進んでいく。電車ごっこ側は、その停留所とイレギュラーな信号での停止時間を利用して荒川線から距離を稼ぐ作戦だ。ちなみに熊野前駅から梶原駅間は約1.9キロメートル。荒川線のその区間の所要時間は9分ということで、時速12.6キロメートル以上で走れば計算上は勝てる計算。この時点まで電車ごっこ側は勝利を確信していたという。
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