わたしは暴れん坊ガキでした――松本零士トークショー全掲載ニコニコ超会議(1/5 ページ)

ニコニコ超会議の超鉄道ブースで開催された松本零士氏のトークショーがあまりにも縦横無尽だったので全文掲載してみる。

» 2012年05月01日 15時40分 公開
[作倉瑞歩,ITmedia]
※本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 4月28日、29日と千葉県・幕張メッセで開催された「ニコニコ超会議」。鉄オタとしても有名な向谷実氏がプロデュースした「超鉄道ブース」では、漫画家の松本零士氏を招いてのトークショーを開催。普通はまとめて記事にするところですが、やっぱり松本零士はただの男ではありませんでした。縦横無尽、さまざまな豪傑話が出てきて端折るのはもったいないので、全部掲載することにしました。お読みください。

向谷実氏(以下、敬称略) 超鉄道ブースのステージに、素晴らしいゲストをお招きしております。それではご紹介します。松本零士先生、よろしくお願いします。

松本零士氏(以下、敬称略) ご紹介頂きました、松本零士でございます。よろしくお願いいたします。

向谷 実は僕、松本零士先生とは初めてお会いするんです。よろしくお願いいたします。

松本 こちらこそよろしく。

画像 向谷実氏(写真左)と松本零士氏(写真右)

向谷 松本零士先生といえば、「銀河鉄道999」を初めとしていろいろな世界でお世話になっていますが、鉄道関係のラッピングとかいっぱいされてますよね。鉄道の車両やなんかも。

松本 はい、はい。

向谷 松本先生は昔から鉄道が好きだったんですか?

松本 好きも嫌いも、わたしの家の前、そうですね距離にして(客席の)5列目あたり(約5メートル程度)を鹿児島本線が走ってたんです。

向谷 鹿児島本線?

松本 そうです。ですから特急も急行も貨車も何もかもそこに止まって、ぼーぼー、ぼーぼー、汽笛を鳴らす場面があるわけです。だから、これがわたしには子守歌なんです。あとは急ブレーキの音。ですからこどもの時から、わたしの場合は終戦直後ですよ。例えば列車が走るでしょ。その横を「ハーロック、ハーロック」って歩いたんです。だからハーロックという名前は、ごく自然に生まれた、僕のかけ声だったんです(※)。

※松本零士氏は線路脇を歩く際、いつの頃からか「ハーロック」とつぶやくようになっており、その思い出が後のハーロック命名へとつながっていく。

向谷 え、それがあの、「キャプテンハーロック」につながるんですか。

松本 ええそうです。わたしは轟音の中でも平気で寝られるタイプですから。いかなる音の中でも寝られるので有名な男で。一緒に旅行してもわたしだけケロッと寝てるわけです。みんながうらやましがるのと一緒に、「これほど清く正しく美しく寝てる男はいないだろ」と言ったら、「お前はそうかもしれないけど、そのいびきがなあ」と(笑)。

向谷 なるほど(笑)。お若いときからいびきが大きかったんですか?

松本 そうらしいです。わたしはどんな音の中でも平気で寝てしまうんで。

向谷 松本先生が生まれた終戦直後といえば、もちろん電車よりSLが多いわけですよね。

松本 そうです。市電はありましたけどね。わたしは昭和13年、1938年生まれです。ですから戦争の体験もあります。わたしの頭上を飛び越えて。B29の大編隊。そして雷撃機や艦載機ですね。それがわたしの頭上を飛び越えて、呉、広島の方に飛んでいきました。それを要撃する日本の紫電改や四式戦闘機が空中戦もずいぶん見てます。わたし自身が米軍から機銃掃射を浴びた。グラマンの飛行機が「パン、パパン」「パン、パパン」と6回音が聞こえた気がしたんですが、何十発と撃っていたでしょう。そういう時代を生きてきた少年だったわけです。

向谷 そういった経験がなければ、ああいったいろいろな作品ができないんだと思うんですけど、その頃見てたアメリカ軍が日本に勝って進駐してきますよね。占領者になって。

松本 そうです。終戦直後、その時わたしは愛媛県の大洲市に疎開してたんです。母親の実家に。両親とも元々は愛媛県の大洲市出身でした。そしてわたしは久留米で生まれて小倉で育った男です。というのはわたしの一族はみんな小倉市にいた。実はここも原爆の標的になって、第1目標。長崎に行く前に小倉の上空を20分間くらい周回したそうですね。B29が原爆を積んで、ですよ。ところが八幡製鉄の煙と、時雨があったのと、なにしろ気が短いですからね。小倉の人間は。なので高射砲を撃って撃って撃ちまくるは戦闘機隊は上がるわで落ち着かなくなって長崎に行った。それで長崎が犠牲になった。わたしの一族は助かったんですが、うれしいかというとね、切なくて切なくて、喜んでいいやら分からないんですよ。わたしの一族は生き残りました。しかし長崎の人たちのことを考えると胸が痛んでね。何とも言えない気持ちになるんです。今度は米軍の占領のまっただ中で、北九州の小倉で育ったんです。ですから同じ町の出身者で、皆さんご存じの中尾ミエさんや山本リンダさん。わたしの家の近くで育った人なんです。その時すれ違っても気がつきませんけどね(笑)。

向谷 山本リンダさんなんか、派手な印象ですからね。

松本 中尾ミエさんは、わたしがよく漫画の本や教科書、小説や参考資料を買っていた本屋さんの娘さんなんです。

向谷 じゃあ、ものすごく近いですね。

松本 近い。城下町ですから。中尾ミエさんのお宅は“宝文館”。大きな本屋さんで。京町、問屋町、栄町という風に城下町の名前が付いているわけです。小倉城の。明治維新の時に燃えましたけどね。

向谷 なるほど。で、今日ここはですね、「超鉄道ブース」という名前になってまして、集まってる方は多くの鉄道ファン、たくさん集まっているんですけど、松本零士先生と言えばいろんな鉄道のイベントにも参加されるし、銀河鉄道999ももともと古い客車と機関車という組み合わせでできているじゃないですか。鉄道に関して、(作品を)作っていく上で相当こだわられていると思うんですよ。鉄道に関しては。

松本 自然に見てますから。列車とはこういうものだと。上京するときだって蒸気機関車で、片道切符で。帰りの汽車賃を持っていないんです。覚悟を決めて死んでも帰らんということで上京した。小倉駅を午後5時半に出て、夕方です。東京に着いたのは明くる日の午後5時半。

向谷 24時間! 松本先生のデザインの鉄道模型が出るときは、そういうときはチェックされるんですか。

松本 (鉄道模型を)見て、ここがこう違う、ここが大きいとか小さいとか、そういうことは言いますね。我々は列車と一緒に走ったりですね、横を。踏切に立ってて何メートルまで頑張れるかということを。やっちゃダメですよそんなことは。絶対に(笑)。終戦直後のむちゃくちゃな時代ですから。何メートルまでがんばれるかなんて、5メートルくらいで飛び退くんです。そしたら機関士が怒って石炭をぶつけてくる(笑)。こういうこともやってました。それから1円玉を(レールの上に)置いてね、走ると引いていくわけです。

向谷 先生それはちょっとちょっと(笑)

松本 (1円玉が)半分広がっていくんだよね。もうむちゃくちゃです。戦後の大混乱期。それから占領軍の列車はですね、真っ白に塗ってありまして。一番いい列車を占領してるんです。何しろこちらは敗戦側ですから。亡国の民ですよね。あの無念さ。町中を米軍の戦車が走ってるんですよ。市電の軌道上を。トラックが走ってはいけない、と言っているところをM4中戦車がだらだら走っていって。自転車屋さんを見つけて、ピンが外れたから直しなさい、と言う。

向谷 自転車屋さんで? 戦車を?

松本 そしたら自転車屋さんのおじさんが「ここは自転車屋なのでできません」というと「何を言うんですかあなたはプロです。直しなさい」といってピストルを突きつけるわけです。焼け火箸をカンカンに焼いて、ピンにたたき込んで「OK!」。そしたら100円か、1000円か、と言う。そりゃ1000円って言うに決まってますよね。それをわたしはチビの時ににらんで。本当ににらみつけてる。そういう少年だったんです。

       1|2|3|4|5 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2403/17/news022.jpg 【追記あり】夫に「油買ってきて」と頼んだのに、手ぶらで帰宅した理由はまさかの…… とんでもないオチに「やめてww」「久しぶりに大爆笑」
  2. /nl/articles/2403/18/news022.jpg 1歳息子の“はじめての寝落ち”が140万再生 10歳兄のやさしい行動に「なにこの平和でかわいい世界」「最高に癒やされる」と絶賛の声
  3. /nl/articles/2403/17/news063.jpg 「予言者いた」「先見の明」 大谷翔平選手&真美子さんの結婚を2021年時点で予言(?)している投稿が発掘され話題に
  4. /nl/articles/2403/17/news047.jpg 北海道内の移動距離を本州と比較したら…… 感覚がバグるマップ画像に「これが北海道」「大きすぎる」
  5. /nl/articles/2403/18/news042.jpg 生後1カ月の赤ちゃん「ぼく泣かないもんねっ」 うるうるおめめとへの字口が「はぁ〜たまらん!」「ぐぁぁああああっっ」取り乱すほどかわいい
  6. /nl/articles/2403/15/news126.jpg 「一番イチャイチャしているように見える」 大谷選手が公開した写真でドジャース山本由伸選手の“手つなぎ”?が話題に 「そっちに目が行く」
  7. /nl/articles/2312/29/news019.jpg 「妻の服を勝手に着て脱げなくなったムキムキ夫とデカワンコ」に爆笑の嵐 シュールすぎる状況が500万表示突破
  8. /nl/articles/2403/18/news025.jpg “おしりが5日で変わる”トレーニング! 「明日からやるか」「1日1回だけなら続けられる」と累計3000万再生突破
  9. /nl/articles/2403/18/news056.jpg 大好きなボールを100個プレゼントされたときのワンコの表情に「放心ww」「引いてない?」 直視できない姿がSNSで話題
  10. /nl/articles/2403/18/news064.jpg 赤ちゃんが妙に静かだと思ったら…… 思わぬものへの“真剣モード”に笑顔になる人続出「たれたもちもちほっぺたまらん!」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  2. 昭和時代に“無かった物”が写っている……? 細かすぎて伝わらない「未来から来たことがバレた写真」に6万いいね
  3. 「マジで汚い」「こんなもんです」 辻希美、“大散乱”のリビングと“新”キッチンの差を公開し共感の声集まる
  4. 双子の赤ちゃん、姉が全力でくしゃみして…… 被害にあった妹の反応に「生後3ヶ月でドリフのコントw」「めちゃどっちもカワイイ」と絶賛の声
  5. 「よくも病院に連れてきたな……」とにらむ猫、先生が来た瞬間 驚きの変貌に爆笑の声「これがほんとの猫かぶり」
  6. 急に片耳がたれたワンコ、慌てて病院にいった結果…… 「こんな可愛い診断結果初めて見たよw」「笑っちゃった」と反響
  7. 「何羽いる?」一見普通の“草むら”、よく見ると……? 思わず絶叫まちがいなしの1枚に「どっさりいるw」「まさに迷彩!」
  8. 店員に「この子は懐きませんよ」と言われたチンチラ、家に来て3日後…… 人を信じる姿に「愛が伝わったんですね」
  9. 元SDN48光上せあら、目を離した隙に……子どもが商品を触り“全買取” 「子連れママに厳しすぎないか?」
  10. 柴犬を子どものように育てた結果、人間みたいな行動をするようになった 何気ない幸せな日常に「完全に家族の一員」「全部が愛くるしい」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 釣れたキジハタを1年飼ってみると…… 飼い主も驚きの姿に「もはや、魚じゃない」「もう家族やね」と反響
  2. パーカーをガバッとまくり上げて…… 女性インフルエンサー、台湾でボディーライン晒す 上半身露出で物議 「羞恥心どこに置いてきたん?」
  3. “TikTokはエロの宝庫だ” 女性インフルエンサー、水着姿晒した雑誌表紙に苦言 「なんですか? これ?」
  4. 1歳妹を溺愛する18歳兄、しかし妹のひと言に表情が一変「ちがうなぁ!?」 ママも笑っちゃうオチに「かわいいし天才笑」「何度も見ちゃう」
  5. 8歳兄が0歳赤ちゃんを寝かしつけ→2年後の現在は…… 尊く涙が出そうな光景に「可愛すぎる兄妹」「本当に優しい」
  6. 1人遊びに夢中な0歳赤ちゃん、ママの視線に気付いた瞬間…… 100点満点のリアクションにキュン「かわいすぎて鼻血出そう!」
  7. 67歳マダムの「ユニクロ・緑のヒートテック重ね着術」に「色の合わせ方が神すぎる」と称賛 センス抜群の着こなしが参考になる
  8. “双子モデル”りんか&あんな、成長した姿に驚きの声 近影に「こんなにおっきくなって」「ちょっと見ないうちに」
  9. 犬が同じ場所で2年間、トイレをし続けた結果…… 笑っちゃうほど様変わりした光景が379万表示「そこだけボッ!ってw」
  10. 新幹線で「高級ウイスキー」を注文→“予想外のサイズ”に仰天 「むしろすげえ」「家に飾りたい」