お経とダンスミュージックが融合! 現役住職の音楽ユニット「TARIKI ECHO」目指すは「お経の一般化」

浄土真宗の現役住職による異色の音楽ユニットが注目を集めている。意外と(?)仏教界、音楽界から評価の高い彼らに、活動の背景と展望を聞いた。

» 2012年05月09日 11時00分 公開
[岡徳之,ITmedia]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 いま現役の住職コンビが注目を集めている。ひとりは釈一平さん、島根県にある龍教寺というお寺の住職だ。もうひとりは釈明覚さん、埼玉県にある善巧寺の住職だ。彼らが注目を集めているのには理由がある。その異色な職業だ。この2人、現役住職とは異なるもう1つの顔を持っている。それがダンスミュージックユニット「TARIKI ECHO」だ。

 彼らの楽曲には確かにお経が登場する。そして意外とハマっているのだ。どうしてお経とダンスミュージックを掛け合わせることを思いついたのか、仏教界のタブーには当たらないのか。インタビューしてきた。

ヘルメットと袈裟が特徴的なTARIKI ECHO

きっかけは放課後のセッション

 釈一平さんと釈明覚さんが出会ったのは、東京都中央区築地にある築地本願寺。同寺にある住職志望の学生が通う夜間の学校、東京仏教学院だった。学院では、インド仏教、中国仏教、日本仏教、お経を朗唱する声明など、住職になるための知識や作法を座学・実践で学ぶ。音楽の授業もあり、築地本願寺にはピアノが置いてあった。出会う前からバンド活動をやっていた2人は音楽を通じて意気投合。学生も先生も帰った放課後の音楽室で、警備員に追い出されるまで2人でセッションをしていたそうだ。

 セッションをしているうちに「音楽とお経を組み合わせてみようぜ」という話になり、学生のみが参加するお寺の仏教青年会で、仏教讃歌のハウスバージョンを演奏。「もし先生に聞かれてたら怒られていたと思う」と釈明覚さんは当時を苦笑いで振り返る。半分悪ノリで始めたこのころのバンド活動が、のちに生まれるTARIKI ECHOのルーツとなった。

出会いから20年後、TARIKI ECHO結成

 学院で意気投合した2人だが、卒業後は別々の道に進んだ。釈一平さんは祖父が務めていた島根県龍教寺の住職に。しかし、お寺周辺が過疎地のため、現在は東京に移住して親戚のお寺を手伝いながら、キーボード演奏、楽曲提供などアーティストとして活動している。一方、釈明覚さんは卒業後、お経の節や雅楽を学ぶための学校に通った。その後、京都本願寺などでの勤務を経て、埼玉県にある善巧寺の住職を務めている。

 かたや音楽のプロとして、音楽センスと制作スキルを磨いた釈一平さんと、かたやお経のプロとして経験を積んだ釈明覚さん。そんな2人が東京で再開する機会があり、TARIKI ECHOの結成に至る。「学校の音楽室で弾いていたときは“ネタ”“おふざけ”の域を出なかった。いまだからこそうまく合わさった」と、釈明覚さんは20年の過程を語った。

左:島根県にある龍教寺の住職・釈一平さん 右:埼玉県にある善巧寺の住職・釈明覚さん

「お経は気味が悪い」――そうじゃない

 釈一平さんは東京仏教学院に入学する前、東京のいわゆる一般家庭で育った。これが普通の感覚だと思うが、と前置きした上で「宗教とか気持ち悪い。お経は気味が悪い。なめていた」という。しかし、本格的にお経を学ぶうちにその魅力に気づき「お経とは縁遠い方にもっと聞いてほしい」と思うようになったという。お経といえば、一定の暗い音程で唱えられるものという印象を持たれているが、中には独特の節まわしで“メロディアス”なものもあるそう。また、歌詞(=お経)には「仏様がいるから大丈夫。あなたの未来は決して暗いものじゃない」という前向きなメッセージが込められている。「西洋音楽はもちろんかっこいい。しかし、お経には日本古来のもののおもしろさを発見できる」と釈明覚さんは言う。

意外な仏教界からの反応

 釈明覚さんは、お寺での御法話会にくる業界の先輩方にTARIKI ECHOの楽曲を聴かせてみたそうだ。「お経に触れるよいきっかけになるのでは」と、意外に(?)反応はよかった。この「お経×ダンスミュージック」という新ジャンルを、ヘビーメタルや、ロックンロールと同じ地位にまで引き上げていきたいと2人は語る。目指すは年末のNHK紅白歌合戦。「音楽を通じてお経を一般化させる」――高い志をもった彼らのメロディアスなお経が、街中で聴こえてくる日は近いかもしれない。

音楽を通じてお経の一般化を目指す2人

関連キーワード

音楽 | お寺 | ダンス | NHK紅白歌合戦


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2404/25/news016.jpg 「電車の中で見ちゃダメ」「笑ったww」 実家からLINE「子ヤギがすばしっこくて捕まらない」→送られてきた衝撃姿が320万表示!
  2. /nl/articles/2404/23/news090.jpg 誰も教えてくれなかった“裁縫の裏ワザ”が目からウロコ 200万再生のライフハックに「画期的」と称賛【海外】
  3. /nl/articles/2404/21/news011.jpg 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  4. /nl/articles/2404/25/news129.jpg プロ野球チップスでまた“不良品”流出 伊藤大海「176m」表記に続き…… カルビー謝罪「深くお詫び」
  5. /nl/articles/2404/25/news043.jpg 娘の給食の献立表を見たら…… 正体不明の“謎の料理名”が「これはわからんw」と話題に その意外な正体に納得!
  6. /nl/articles/2404/24/news018.jpg 1年半ケージに引きこもっていたシャーシャー猫が、ある夜布団に入ってきて…… 感涙の行動に「まるで別猫」「こんな日が来るなんて」
  7. /nl/articles/2404/23/news185.jpg 子どもに高級キーボードのパーツを捨てられた → 公式の“先読みしすぎた対応”が話題「そういうこともあろうかと」
  8. /nl/articles/2404/24/news017.jpg メルカリで300円の紙モノセットを買ってみたら…… 出品者のあたたかな心遣いに「利益は考えていないんでしょうね」「見ててわくわくします」
  9. /nl/articles/2404/22/news124.jpg ダイソー「マルチ万能ほうき」が家事ラクの救世主 名前負け知らずの便利さに「これやばっ!!」「220円に驚き」の声
  10. /nl/articles/2401/18/news015.jpg 巨大深海魚のぶっとい毒針に刺され5時間後、体がとんでもないことに…… 衝撃の経過報告に「死なないで」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  2. 富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
  3. 2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに少々強引な寝かしつけをされると…… コントのようなオチに「爆笑!」「可愛すぎて無事昇天」
  4. 異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
  5. 【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
  6. 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  7. 1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
  8. 業務スーパーで買ったアサリに豆乳を与えて育てたら…… 数日後の摩訶不思議な変化に「面白い」「ちゃんと豆乳を食べてた?」
  9. 祖母から継いだ築80年の古家で「謎の箱」を発見→開けてみると…… 驚きの中身に「うわー!スゴッ」「かなり高価だと思いますよ!」
  10. 「ゆるキャン△」のイメージビジュアルそのまま? 工事の看板イラストが登場キャラにしか見えない 工事担当者「狙いました」
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」