ニコニコ超会議は「達成感が足りない」 ニコ動運営長が明かす舞台裏と“次”の構想:ボツになった企画とは?(1/2 ページ)
ニコニコ超会議から早1カ月が過ぎた。実はすでに来年の幕張メッセを予約しているという同社。果たして次はいつ、どんな形で実現するのか……!?
ゴールデンウィーク明け直後、ドワンゴのオフィスを訪ねると、ニコニコ動画ユーザーから「運営長」の愛称で親しまれている、ニコニコ事業本部の中野真事業推進部長が少し疲れた顔をしていた。聞けば、休み中に38度の熱を出し、最近まで寝込んでいたという。ニコニコ超会議を乗り越えて「少し気が抜けたのかも」と苦笑いする。
2日間で9万人以上が集まったニコニコ超会議で、各企画の進行管理や調整に奔走した中野部長は、現場の様子を最もよく知るスタッフの1人だ。企画が持ち上がってからのアレコレを改めて振り返って欲しいとお願いすると、「どこから思い出せば良いか分からない」と言いつつもプロジェクトへの熱い思いが言葉になって次々にあふれ出た。
ニコニコ超会議の夜に開かれたライブイベント「ニコニコ超パーティー」では、エンジニアを中心に同社のスタッフ約40人がステージに上がり、ユーザーから暖かい声援を受ける一幕があったが、中野部長はインタビュー途中、そのシーンを思い出して「こみ上げてくる」と言葉に詰まるほどで、達成感に満ちあふれているようにも見えた。
だが返ってきたのは意外な一言だ。「ニコニコ超会議はやりきったという感覚がない。達成感が足りないんです」――。一体なぜなのだろうか。
「大惨事になるんじゃないかとドキドキした」
ニコニコ超会議は「ニコニコ動画のすべて(だいたい)を地上に再現する」というコンセプトで開かれた。歌、踊り、ゲーム、痛車、コスプレ……多彩な企画で幕張メッセを埋め尽くす。小室哲哉さんのようなビッグアーティストからボカロPまでプロ・アマ問わず多くのアーティストが主役として輝いた。宇宙、ハッカソンといった硬派な催しも目白押しで、会場を訪れた枝野幸男経産相は「まさしくクール・ジャパンだ」と驚いた。
中野部長が「壮観だった」と語るのは、「踊ってみた」ブース。ニコ動ユーザーによるダンスレッスンが開かれ、100人以上の来場者が一斉に踊る。「レッスンという体なのにみんな振り付けを覚えて会場に来ていて、テレビ局のスタッフも驚いていました」。3カ所のカラオケブースも大盛り上がりで、プロの歌手が出ているわけでもないのに人があふれ、自然と歓声や手拍子が生まれる。「ああいうものがコンテンツとして成立していたところに感動した」。
時計の針を少し戻そう。昨年12月。ニコニコ超会議を半年後に控えたこのタイミングでもまだイベントの中身はほとんど決まっていなかった。企画を考える社員たちには「最初から抑えめに考えるとしょんぼりしたものしか出てこないから、全力で考えろ」と号令が出て、アイデアが大量にリストアップされたものの、1つ1つをどのように詰め込めるかはさっぱり分からない状態だったそうだ。
ニコニコ超会議の赤字は約4億円だったと言われているが、社員が全力で考えた企画を全て実現しようとすると、桁が違うくらいの「とんでもない予算」になる計算だった。「さすがに無理だ。そこまでは攻められない」と、企画を見送ったり、スケールダウンさせたりしながら、現実的なレベルに落としこんでいく。見た目が冴えなくても中身で喜んでもらおう――そんな意図から、ユーザー向けには「ニコニコ超会議は大人の文化祭」であるとアピールした。
確かに当日の会場の見た目は、企業ブースなどの一部を除くと質素だった。通路を広めに取ったゆとりある設計で、ゲームショウのような派手な電飾はほとんどなく、控えめな印象。準備が完了し、白いパーテーションが並んだオープン前の会場を見渡して、中野部長は「これからまだ何か用意するんだよね? と焦ったし、不安になった。これでお客さんが集まらなければ大惨事になるんじゃないかとドキドキした」と明かす。
当初の予定では会場にいる動物の種類はもっと多かった。「アイドルマスター」の765プロはもっと大がかりに、トイレや普段映らない別室までリアルに再現する計画だった。「これは絶対残さなきゃいけないという判断が難しく、見た目という意味では思い描いていたものと路線が変わってしまったものもあるが、中身はギリギリ死守できたかなと思っている」と語る。
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