どうして相談はいつも失敗に終わるのか? 「ぷよぷよ」作家・米光一成が語った、明日から使える「タロット思考術」
タロットと言えば占いの道具だと思ってませんか? タロットを「思考ツール」として活用してみないか、というイベントが7月21日、阿佐ヶ谷Loft Aにて開催された。
親身になって相談に乗ってあげたつもりでも、最後は「もういいよ! 相談なんかするんじゃなかった!」って言われてしまった経験、ありませんか?(特に男性諸君!) でも、これからはもう大丈夫。なぜなら「タロット様」が答えてくれるから!
7月21日、阿佐ヶ谷Loft Aにて開催された「思考ツールとしてのタロット」。ゲームクリエイターであり、立命館大学映像学部教授であり、そして裏では「魔術師」としての顔も持つ、米光一成さんのワークショップ型イベントだ。
タロットと言えば占いの道具というイメージが強いが、今回の趣旨はあくまでタロットを「思考のためのツール」として使おう、というもの。タロットを引くことで、これまで自分が持っていなかった新しい視点や考え方を得ることができる、というのが米光さんの考え方だ。
1枚1枚のカードにはそれぞれいろんな意味が込められているが、厳密に言えば、すでにある言葉や概念をタロットに当てはめたのではなく、「言葉を持たない無垢な状態にもどって、世界をたった22のカードに分類したものがタロット」と米光さん。だから、この世のあらゆる言葉や概念は、22枚のどれかに必ず当てはめることができる。この、米光さんによるカード解説がまた面白かったんだけど、長くなるので割愛。
で、それを占いではなく「思考ツール」として使う。そこで米光さんが例に挙げたのが、はじめに書いた「なぜ相談は失敗するのか」問題だ。
「神秘様」のかわりに「タロット様」を
なぜ相談は失敗に終わることが多いのか。一言で言ってしまえば、相談された側は「当事者じゃない」からだ。どれだけ話を詳細に聞いたところで問題の全貌は共有できないし、相談者とは持っている文脈がそもそもまったく違う。だからこそ、それが冷静なアドバイスであればあるほど、相談者側としては「全貌も文脈も分かっていないあなたならそう思うでしょうね!」「あなた何様!?」と感じてしまう。
ちなみにこの「何様!?」を取り払うために、占いでは助言の主語を神様や運命などの神秘的なもの(米光さんいわく「神秘様」)に置き換える。これなら「いやいや、神様がそう言ってるんだもん!」で済む。なるほどなあ。
でも神秘様はちょっと……という人もいるだろう。というわけで、ハイ! タロット様のご登場だ。会場ではここで、実際にタロットを使って誰かの相談に答えてみることに。米光さんが示した方法はこうだ。
- 同じテーブルの人とペアになり、相談内容を語る
- 相談を受けた側は質問し、相談内容を理解する
- タロットを3枚めくる
- カードの意味を説明し、左からあなたの過去、現在、未来をそれぞれ示していると告げる
- 相談者はそれを聞いて、何かに思い当たる
- その「思い当たり」を語る
ここで重要なのは、タロット使いは助言やアドバイスをしてはいけないということ。あくまでカードの意味を説明するだけ。主語はあくまで「私」のままで、相談者側が自分で思考し、気づくのが大切。「当たるんじゃなく、思い当たる。これが大事!」と米光さん。
実際に僕も相談してみた。相談内容は、ええと……ちょっとプライベートすぎるのでここではヒミツ!
出てきたカードは「愚者(自由/無軌道)」、「星(希望/ネットワーク)」、「塔(衝撃/脱皮)」。なるほど、過去の自分は確かに無軌道で自由すぎたのかもしれない。で、現在の自分は、新しい人間関係に希望を見いだしつつあって、未来の自分はさらにそこから脱皮しようとしてる? 「星」の解釈はちょっと強引だけど、言われてみればそうかも……という感じ。確かにカードによって新しい視点を得られたことになる。
「誰かに相談する時って、自分の中では答えが出ていることが多い。それがカードによって顕在化する。あくまで自分の意思だから強いし、相談された側もアドバイスの罠に陥らなくてすむ」(米光さん)
同じ反省の繰り返しから脱出するには
他人を占うことができれば、あとはこれを自分の思考プロセスに活かすだけだ。たとえば朝、家を出る前にカードを1枚引いてみる。星のカードが出たから、今日はいいことがありそう。恋人のカードなら、何かドキドキするようなことがあるかもしれない。そんな風に考えることで、いつもの道でなにか新しい発見ができるかもしれない。当たるか当たらないかは重要ではなく、大切なのはカードによって「別の視点を得る」ということだ。
何度も同じ失敗をしてしまってヘコんだことはないだろうか。そのたびに反省するんだけど、やっぱり繰り返してしまう。なぜかと言えば、同じ反省しかしていないからだ。「同じ反省の繰り返しから脱出するには、別方向からの視点が必要になる」(米光さん)
毎朝カードを引くのもいいけれど、米光さんが実践しているというのが「師匠を持つ」こと。22枚のカードをシャッフルし、ランダムに2枚を引く。1枚目のカードがあなたの「師匠」に、2枚目に引いたカードが「魔獣」になる(僕は「悪魔」と「死神」のカードでした。なぜよりによって……)。
師匠が決まったら、名前をつける。そして毎日、エサをあげよう。つまり師匠が喜びそうな話題について、アタマの中で師匠と対話する(悪魔だったら、抑圧とか誘惑とかの話題)。あまりほったらかしにしておくと「どんどん弱ってボロボロになっていく」ので、なるべく定期的に。魔獣は師匠の反応がにぶい時のツッコミ役だ。そうやって師匠と日々対話していくことで、自分の思考を自然に広げ、より深めていく練習になる。ちなみに米光さんの師匠は「魔術師」のカードだそうだ。
イベントの中で印象に残ったのが、米光さんの「悩んでいる人は視野が狭くなっているのに自分で気づいていない」という言葉。そうそう、わかっちゃいるけど、そこに気づけたら最初から悩んでなんかいないんだよ! で、そんな時に、外からの視点を提示してくれるのがタロットなのだ。
これからは何か悩み事があったら、まずはタロット様に聞いてみようと思う。あと男子諸君、これからは女の子に相談されたら「タロット様に聞け」ですよ!
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