“中食のザッポス”を狙うお弁当宅配「ごちクル」って何?:有名店の味が会社で食べられる
「ごちクル」という、とても好調だが、あまり知られていないサービスがある。靴通販のザッポスのようなこだわりの顧客サービスで、「飲食業界に革命を起こしたい」という。
昨年、飲食業界に「ごちクル」というサービスが生まれた。このサービス、とても好調で拡大を続けているのだが、知らない人も多いだろう。一般の人ではなく、企業をメインに相手にするビジネスだからだ。
競合がいない、これまでなかったサービス
ごちクルは、これまでの飲食業界にはなかったサービスを提供している。それが飲食店の「中食」立ち上げ支援だ。飲食業界には、飲食サービスを提供する3つの形式がある。「外食」「内食」「中食」だ。
「外食」は言わずもがな、飲食店でイートインする形式。「内食」はスーパーなどで食材を買い、自宅で調理する形式。自炊する人も増えているので、もしかしたら聞いたことがあるかもしれない。そしてあまり聞き慣れない「中食」だ。
「中食」とは、自宅の外で作られた食事を自宅で食べる形式のこと。ピザの宅配サービスを思い出してほしい。ピザ屋ですでに作られたピザが自宅に届く、これが「中食」だ。持ち帰りの惣菜やお弁当もそうだ。中食のデリバリーを提供したいという飲食店を支援するのがごちクルだ。
「え、何が新しいの?」と思った人もいるかもしれない。ごちクルは「中食向けの商品開発」から「集客」「注文受け付け」「宅配」「顧客サポート」まで、「調理する」こと以外すべてを飲食店に提供しているのだ。顧客は、さまざまな飲食店が載ったごちクルのサイトやカタログを見てお弁当やケータリングを注文し、飲食店が食事を作り、ごちクルがそれを配達する、という形になっている。これに対して一般的なWebの出前サービスはそれぞれのお店が受注から配送まで、全てを自前で行わなければならない。
すでに中食を提供しているピザ屋のように、飲食店が自前でその体制を作るとなるとそれは大変。バイクやそれを停めておくための駐車場、顧客サポートの人員を確保しなければならない。「中食に参入すれば、副収入が見込める」(ごちクル運営元スターフェスティバルの岸田祐介社長)。と分かっていても、初期コストから実施に踏みきれない飲食店は多いそうだ。ごちクルはその部分をカバーする。
ごちクルは企業をメインに配達している。テレビ番組のロケ弁や社内パーティーなど、多くのスタッフが集まるシーンでよく活用されており、また少しぜいたくな食事を食べたいという時にも利用されている。
有名店のお弁当も
取材ではごちクルで人気の商品を紹介してもらった。
南青山惣助の「惣助弁当【蓮(はす)】」(3200円)。9升のお弁当箱に野菜を中心にヘルシーなおかずを詰めた、2段重のお弁当。合成保存料、着色剤を使わず作っている。
叙々苑游玄亭の「特選和牛カルビ弁当」(6000円)。最上級の霜降り和牛カルビを使用した贅沢な焼肉弁当。「高額のお弁当も売れています」(岸田さん)
利久の「温まる! 牛たん『極』幕の内弁当」(2750円)。通常の牛たんより柔らかく、さらに厚くスライスし味付けしたワンランク上の「極たん」を使用。牛たんづくしの副菜や仙台名物の笹かまぼこなどを盛り付けた、利久ならではのお弁当。熱々を食べられる加熱容器仕様だ。
筆者もお昼ごはんに仙台の有名店「利久」の「牛たん「極」幕の内弁当」をいただいた。肉厚な牛タンはほのかに甘く、しかしたんの味はしっかりと。かつ、一切れ一切れ食べ応えは十分だ。オリジナルの味噌をタンにすこし載せてあわせて食べると、本当に白米がよく進む。お肉をがっつりいただきたい男性も、ボリューム満点で満足できるだろう。
筆者はこれが「利久」初体験だった。「そうか、東京、しかも会社のオフィスでこれを食べられるのもごちクルあればこそだよな」と食べながら思ったものだった。
ザッポスのような顧客サービス
ごちクルのカタログには有名店がそろっているが、提携する飲食店に対して同サービスがこだわっているポイントは、顧客がどれぐらいの分量を注文したらいいか判断できるように「1人あたりの食べる分量を明確に表示すること」。ケータリングでは、Webサイトやパンフレットに「1皿に約30カット程度。概ね20〜30名様分」と記載するなど、電話やネットだけでも安心して注文できるような工夫がなされている。
また、メニュー以外にも「○○円ぐらいの予算でおすすめの弁当ありますか?」「お肉を食べられない人がいるので、1つだけ野菜メインに変えてもらえますか?」など、顧客からの相談も細かくサポートすることを重視している。岸田さんの口からも「あのザッポス(手厚い顧客サービスで知られる靴のネット通販サービス)のように」という声が出るほど、顧客サービスにはこだわっている。そのような工夫もあって、顧客からの反応は「普段食べられないお店のごはんを届けてもらえるのは嬉しい」「ここまで持って来てもらえるとは思えなかった」と上々だ。
岸田さんは、出前・宅配サービスの楽天デリバリーの立ち上げに参加したあと、プロ野球チーム楽天イーグルスの創業にも参加した異色の経歴の持ち主。お客さんに何かを提供して喜んでもらう商売が大好きだという。先日、グロービス・キャピタル・パートナーズとグリーベンチャーズを引受先とする総額2億5000万円の第三者割当増資を実施したというニュースもあったが、今後はますます、中食に飲食店が参加していくための土台になる会社を目指し、飲食業界に革命を起こしたい、と言う。
現在は、関東、関西、中部、九州の一部にお弁当を配達している。最低お届け金額は1万円から(エリアによって異なる)。会社での会合などに試してみてはいかがだろうか。
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