かつて世界最大、いま廃墟―― 琵琶湖をのぞむ大観覧車「イーゴス108」は今でもときどき動く

滋賀の琵琶湖近くにそびえ立つ巨大観覧車。営業終了から12年、その裏には元社長の意地が。

» 2013年01月24日 11時00分 公開
[石田賀津男 ,ITmedia]

 滋賀県大津市の琵琶湖岸に、ひときわ目を引く巨大な観覧車があります。この観覧車、12年前に営業を終了し、現在は使われていません。表面はあちこち錆びていて、まさに廃墟のようなありさま。地元の人からは、どこか壊れるのではないかという不安の声も聞かれているのですが、実際は壊れていないどころか、今も元気に動くというのです。

画像 2013年1月現在の「イーゴス108」。高さは今も昔も108メートル

 この観覧車の名前は「イーゴス108」。足元にあった遊園地「びわ湖タワー」の目玉アトラクションとして1992年に建てられ、完成時には世界最大となる108メートルの高さを誇りました。しかしその後、2001年に「びわ湖タワー」は閉園し、「イーゴス108」も営業を終了。跡地にはスーパーや家電量販店が出店していますが、この観覧車だけが今も取り壊されずに残っています。

画像画像 遠目にはわかりにくいですが、近づいてみると錆び錆び。これで108メートルあるので、確かに怖いです

画像画像 観覧車の周辺は立ち入り禁止。設備は荒れたままになっています。

画像画像 近くにあったアトラクションや施設も放置され、まさに廃墟

 現在「イーゴス108」を所有する大阪の不動産会社に問い合わせてみると、今後どうするかは何も決まっていないというお答え。その代わりに、詳しいことを聞きたいならばと、びわ湖タワーの社長だった前田茂さんを紹介されました。前田さんは現在89歳ですが、はっきりした口調で「イーゴス108」に関するエピソードを語ってくれました。

 今も観覧車だけが残されている理由は、「もしほかに運営してくれる人がいれば、あの場所で再開したい」と前田さんが希望したため。他の場所に移設して動かすという話もあったそうですが、「他所に持っていってほしくなかったが、なかなか条件が合わず、そのままになっている」というのが、事の真相だそうです。

 そしてこの「イーゴス108」、今もちゃんと動きます。「ゴンドラやセンター軸のベアリングが壊れないように、時々回しておかないといけない。もう電気が来ていないので、非常用のガソリンエンジンで動かしている」という前田さん。既に所有者ではありませんが、ボランティアでメンテナンスを買って出て、閉園から10年間、毎月1回動かしてきました。ちなみに今は2カ月に1回のペースで動かしているそう。

 さすがに人を乗せるには整備が必要ですが、大仕事にはならないと前田さんは言います。物を載せるくらいなら構わないということで、地元の大学やテレビ局などから依頼され、カメラを載せて、108mの高さから琵琶湖を撮影したこともあるそうです。

画像 震度7の地震や、風速60メートルの暴風にも耐えられる設計。錆びていても現役です

実際に動かしている様子を撮影した動画もありました

 気になる今後については、東南アジアに移設する話があるものの、まだ決まってはいないそうです。前田さんは、「観覧車を建ててから、去年で20年目。現在も街のシンボルになっていて、私にしたら自分の子みたいなものなので、潰したくない」と胸の内を語りつつも、「ここでどうしてもダメなら、移築が実現して2度目のご奉公ができれば、12年間ボランティアでメンテナンスをしてきた値打ちがある。『びわ湖タワー』を閉めた時は77歳、今は89歳。もうちょっと元気でおらんと」と笑っていました。

 前田さんはほかにも、「同じ図面で作られた観覧車が仙台でも同時オープンした。どちらも107mだったので、土台を1m上げて世界一にした」、「遊園地で、駐車・入場無料というのは全国でもウチだけ。ドライブインレストランから始まったので、入場料はええやろう、数で勝負しようといっていた」と、いろいろなエピソードを語ってくれました。

 ともあれ、移設の話がまとまれば、「イーゴス108」はついに琵琶湖岸から姿を消すことになります。閉園から12年経った今なお、日本で指折りの巨大観覧車。もう乗るのは無理ですが、今のうちに見に行ってみてはいかがでしょうか。

 なお「イーゴス108」という名前は一般公募で選ばれたもの。約8000通もの応募があったそうです。前田さんいわく「懸賞金の50万円が効いていた」だそうです。

画像 「イーゴス108」の名前の由来が分かる看板。大事なことなので3回言いました

画像 プラットフォーム上にあるゴンドラ。小さく見えますが1基6人乗りです

画像 錆びてはいますが、堂々たる威容です

画像 支柱部分は8色に塗り分けられているのが、今でも確認できます

画像 隣の家電量販店がまるでミニチュアのよう

画像 家電量販店のガラスに映りこんだ「イーゴス108」。今しか見られない光景かも

関連キーワード

琵琶湖 | テーマパーク/遊園地 | 関西


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/19/news150.jpg 「情報を漏らされ振り回され……」とモデラー“限界声明” Vtuberのモデル使用権を剥奪 「もう支えられない」「全サポート終了」
  2. /nl/articles/2411/20/news028.jpg 「うどん屋としてあるまじきミス」→臨時休業 まさかの“残念すぎる理由”に19万いいね 「今日だけパン屋さんになりませんか」
  3. /nl/articles/2411/20/news224.jpg “ドームでライブ中”に「76万円の指輪紛失」→2日後まさかの展開に “持ち主”三代目JSBメンバー「誰なのか探しています」
  4. /nl/articles/2411/19/news169.jpg 高畑充希と結婚の岡田将生、インスタ投稿めぐり“思わぬ議論”に 「わたしも思ってた」「普通に考えて……」
  5. /nl/articles/2411/20/news031.jpg 「本当に同じ人!?」 幼少期からイボをいじられていた男性→美容師の“お任せカット”が衝撃 「めちゃくちゃ大変身」
  6. /nl/articles/2411/19/news022.jpg 「おててだったのかぁああああ」「同じ解釈の人いた笑笑」 ピカチュウの顔が“こう見えた”再現イラストに共感続々、464万表示
  7. /nl/articles/2411/20/news042.jpg 「腹筋崩壊」 ハスキーをシャンプー&パックしたら…… “予想外のハプニング”に「こ〜れは大変だわ」「沼にでも落ちたのかとwww」
  8. /nl/articles/2411/20/news216.jpg “歌姫”ののちゃん、6歳現在の姿に驚きの声「あれっ!?」「ビックリしてます!」 2歳で「童謡こどもの歌コンクール」銀賞受賞
  9. /nl/articles/2411/20/news041.jpg 黄ばみのある68年前のウエディングドレスを修復すると…… 生まれ変わった姿に「泣いた」「受け継ぐ価値のあるドレス」
  10. /nl/articles/2411/18/news107.jpg 走行中の車から同じ速さで後方へ飛び降りると? 体を張った実験に反響「問題文が現実世界で実行」【海外】
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  2. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  4. まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
  5. 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
  9. ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  10. 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた