かつて世界最大、いま廃墟―― 琵琶湖をのぞむ大観覧車「イーゴス108」は今でもときどき動く
滋賀の琵琶湖近くにそびえ立つ巨大観覧車。営業終了から12年、その裏には元社長の意地が。
滋賀県大津市の琵琶湖岸に、ひときわ目を引く巨大な観覧車があります。この観覧車、12年前に営業を終了し、現在は使われていません。表面はあちこち錆びていて、まさに廃墟のようなありさま。地元の人からは、どこか壊れるのではないかという不安の声も聞かれているのですが、実際は壊れていないどころか、今も元気に動くというのです。
この観覧車の名前は「イーゴス108」。足元にあった遊園地「びわ湖タワー」の目玉アトラクションとして1992年に建てられ、完成時には世界最大となる108メートルの高さを誇りました。しかしその後、2001年に「びわ湖タワー」は閉園し、「イーゴス108」も営業を終了。跡地にはスーパーや家電量販店が出店していますが、この観覧車だけが今も取り壊されずに残っています。
現在「イーゴス108」を所有する大阪の不動産会社に問い合わせてみると、今後どうするかは何も決まっていないというお答え。その代わりに、詳しいことを聞きたいならばと、びわ湖タワーの社長だった前田茂さんを紹介されました。前田さんは現在89歳ですが、はっきりした口調で「イーゴス108」に関するエピソードを語ってくれました。
今も観覧車だけが残されている理由は、「もしほかに運営してくれる人がいれば、あの場所で再開したい」と前田さんが希望したため。他の場所に移設して動かすという話もあったそうですが、「他所に持っていってほしくなかったが、なかなか条件が合わず、そのままになっている」というのが、事の真相だそうです。
そしてこの「イーゴス108」、今もちゃんと動きます。「ゴンドラやセンター軸のベアリングが壊れないように、時々回しておかないといけない。もう電気が来ていないので、非常用のガソリンエンジンで動かしている」という前田さん。既に所有者ではありませんが、ボランティアでメンテナンスを買って出て、閉園から10年間、毎月1回動かしてきました。ちなみに今は2カ月に1回のペースで動かしているそう。
さすがに人を乗せるには整備が必要ですが、大仕事にはならないと前田さんは言います。物を載せるくらいなら構わないということで、地元の大学やテレビ局などから依頼され、カメラを載せて、108mの高さから琵琶湖を撮影したこともあるそうです。
気になる今後については、東南アジアに移設する話があるものの、まだ決まってはいないそうです。前田さんは、「観覧車を建ててから、去年で20年目。現在も街のシンボルになっていて、私にしたら自分の子みたいなものなので、潰したくない」と胸の内を語りつつも、「ここでどうしてもダメなら、移築が実現して2度目のご奉公ができれば、12年間ボランティアでメンテナンスをしてきた値打ちがある。『びわ湖タワー』を閉めた時は77歳、今は89歳。もうちょっと元気でおらんと」と笑っていました。
前田さんはほかにも、「同じ図面で作られた観覧車が仙台でも同時オープンした。どちらも107mだったので、土台を1m上げて世界一にした」、「遊園地で、駐車・入場無料というのは全国でもウチだけ。ドライブインレストランから始まったので、入場料はええやろう、数で勝負しようといっていた」と、いろいろなエピソードを語ってくれました。
ともあれ、移設の話がまとまれば、「イーゴス108」はついに琵琶湖岸から姿を消すことになります。閉園から12年経った今なお、日本で指折りの巨大観覧車。もう乗るのは無理ですが、今のうちに見に行ってみてはいかがでしょうか。
なお「イーゴス108」という名前は一般公募で選ばれたもの。約8000通もの応募があったそうです。前田さんいわく「懸賞金の50万円が効いていた」だそうです。
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