ジャンクがミクに変わる――パーツに命を吹き込み、芸術を生み出すアーティスト(前編)
ボルトやナットなどのジャンクパーツから作品を生み出すアーティスト、下平大輔さん。なぜジャンクにこだわるのだろうか。
壊れた機械を分解して、要らないスクラップを集めて……ジャンクパーツの山から新たな生命が生まれる。これから伝えるのは、ジャンクアートのお話。人気キャラクター――例えば一大サブカルチャーを築いた初音ミク――をモチーフにしたジャンクアートの創作は、現代美術ではまだ未知数のアプローチだ。「ジャンクミク」を手に、ジャンクアート分野の大家である下平大輔さんがTokyoOtakuModeを訪れ、独占インタビューに答えてくれた。
「私の作品はすべて、どこにでもあるありふれたパーツで作られています。ボルトやナットだけではなく、ペンクリップのようなものも使います」
確かにジャンクミクをよく見ると、1つ1つの部品が少しずつ見えてくる。さまざまなナッツやワッシャー、ミシンのボビンのような複雑な部品、小さなバターナイフ。こうした部品の使い方は、見る人を当惑させる。複雑なパーツを組み合わせることで、その形から目的に至るまで、パーツに新たな命が吹き込まれる。それを考えると、完成した作品を見て、初音ミクの細部が容易に見えることに驚く。この種のアートは技術だけでなく想像力も必要となる。オリジナルのパーツを使ってゼロから作ればどんなふうにでも自由に作品を形作れる。だが彼はなぜジャンクを使うことにこだわるのか、尋ねずにはいられなかった。
「たぶん、自分に限界を設けたくないからだと思います。この作品は初音ミクだから、もちろんネギを持たせないといけませんでした。そこで、その辺のパーツを使ってネギを作ろうと挑戦してみましたが、ダメだったんです。どうやってもうまくいかなくて。そんなふうにしたらダメだと気づきました。それで思考の幅を広げたんです……」
正直なところ、これほどの労力をかけていても、彼独特の作品の美しさには苦労の跡は全く見られない。人間型の作品は構造が非常に複雑で、人体の構造に従って関節も動く。だから人間に可能な動きしかできない。細部への気配りはそれだけではない。機械の観点からも作品を作っており、実際の機械が動くのに必要なパーツを取り入れている。例えば、エンジンに似たパーツ、冷却に必要なパーツ、燃料の供給に必要なパーツなどをすべて作品に組み込んでいる。作品の外側にあるパーツの多くが見分けづらいのはたぶんそのためだろう。
「僕、工業高校出身なんですよ」
往々にして、天才を理解するのは難しいものだ。
(続く)
Facebook:https://www.facebook.com/junk.shimodaira
Photos by Tetsuya Hara
続きはこちら→ジャンクがミクに変わる――パーツに命を吹き込み、芸術を生み出すアーティスト(後編)
原文:Daisuke Shimodaira - A Master in the World of Magnificent Junk Art [1/2]
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