なぜ、ジャンプの操作にはジャンプボタンを使うのか?:ゲームの素朴なギモン
なんか理由あるの?
左手で移動、右手でジャンプが古来からのゲームのお作法!?
ゲームのコントローラは左手側に方向キーやレバーが、右手側には各種ボタンが配置されているのが昔からのお約束。「スーパーマリオブラザーズ」シリーズのようなアクションゲームにおいては、主人公にジャンプさせるときは多くの場合ジャンプ専用に割り当てられた右手側のボタンを押すようにデザインされています。
と、ここで素朴なギモン。ジャンプ、すなわち上方向へ移動をするときには、なぜ方向キーの上側ではなくボタンでの入力にするのでしょうか? 上に動くのであれば、方向キーを上に入力して操作するほうが自然な気もするのですが、いったいこれはなぜなのでしょうか?
(C)1985 Nintendo
(C)CAOCOM CO., LTD. 2005,2006,
(C)CAPCOM U.S.A., INC. 2005,2006 ALL RIGHTS RESERVED.
(C)1985 IREM CORP. LICENSED FROM BRODERBUND
仮説1:ハシゴの存在がジャンプとボタンの架け橋になった
ジャンプのテクニックを要求されるアクションゲームとしては、任天堂が1981年に発売したアーケードゲームの「ドンキーコング」がもっとも古い部類に入るでしょう。本作は4方向レバーとボタン1個を使用して主人公のマリオを操作し、タルや火の玉などの障害物が接近してきたときはジャンプで跳び越えるかハシゴを昇ってかわさなくはいけません。障害物を避けるときにジャンプをする場合はボタンを押し、ハシゴを昇る場合にはハシゴに重なった状態でレバーの上を入力することが必要です。
もし仮にハシゴの移動がレバーではなく、ボタン入力になっていたとしたらどうでしょうか? ジャンプボタンとハシゴのボタンが2個並んでいると、プレイヤーが慌ててタルを跳び越えようと思ったときに間違えてハシゴ用ボタンを押してミスをする可能性が生じてしまうでしょう。しかし、ハシゴ移動がレバー操作になっていればその心配はありませんし、万が一プレイヤーがミスをしても「あ、今はジャンプのタイミングが悪かったからやられたんだな。」と瞬時に納得できるハズです。
また、ハシゴ移動もジャンプもレバーの上方向で行う仕組みになっていた場合はどうでしょうか。左右に移動しながら、タルが転がってきたタイミングでその都度レバーを上側に切り返すようになると左手が四六時中とても忙しくなり、逆に右手は何もすることがないので何だか落ち着かない気がしませんか? さらにハシゴと重なった地点で上に入力をしたときは、ジャンプをするのかそれともハシゴにつかまるのか、どちらのアクションになるのかが分かりにくいのでプレイヤーは困ってしまいます。
よって、ジャンプのアクションはボタンに割り当てたほうがスムーズかつ快適に操作できることになります。そして、その後押しをしたキーマン的存在は人間のキャラクターではなく実はハシゴだったというワケですね。
仮説2:アクションアドベンチャーゲームの普及による影響
マップを上から俯瞰(ふかん)した画面構成になっているアクション、あるいはアクションアドベンチャーゲームにおいても、主人公のキャラクターにジャンプをさせるときはボタンで行うのが普通です。もしジャンプの操作が方向キーの上になっていたとしたら、プレイヤーは上方向に移動する場合はどうすればいいのかが瞬時にイメージできません。ジャンプが方向キーの上で、上方向への移動は上移動専用のボタンで操作するなどという操作デザインになっていたら、その不自然さのあまり頭が混乱しそうですね(笑)。
よって、ゲームの開発スタッフは必然的に上への移動は方向キー、ジャンプはボタンでというデザインをすることになり、またプレイヤー側も類似ジャンルのゲームを繰り返し遊んでいるうちに、「ボタンはジャンプでするものだ。」という一種の文法が自然と定着して現在に至っているのでは、と思われます。
(C)KONAMI 1986
(C)CAOCOM CO., LTD. 2005,2006,
(C)CAPCOM U.S.A., INC. 2005,2006 ALL RIGHTS RESERVED.
考察:ジャンプの操作が上入力のゲームには驚くべきヒミツが!?
では、方向キーやレバーの上方向でジャンプをするゲームは昔から全然存在しなかったかというと、けっしてそんなことはありません。
以下のプレイ動画に収録した「ドラゴンバスター」「ソロモンの鍵」「大乱闘スマッシュブラザーズX」がその一例で、いずれもレバーまたは方向キーを上に入力するとキャラクターがジャンプする操作デザインになっています。
と、ここでひとつの興味深い事実があります。冒頭でご紹介した「ドンキーコング」や「スペランカー」は主人公が高い所から落ちると即ミスとなるのに対して、これらのゲームはいずれも高い所から飛び降りただけではミスにならないということです。
動画に収録した3作品は、ジャンプよりもボタンをタイミングよく押したり連打することで敵を倒したり、先へ進むための道を切り開くことでプレイヤーが快感を覚えるゲームです。よって、ジャンプを方向キーに割り当てることで右手は攻撃による爽快感を得るアクションに専念することが可能となり、同時に使用するボタンの数を少なくして操作をよりシンプルでわかりやすくする狙いがあると言えそうです。
逆に「ドンキーコング」や「スペランカー」は、ジャンプのタイミングをひとつ間違えただけでミスとなるスリリングな場面が出てくるところにゲームの面白さがあります。なお、「魔界村」の主人公は高い所から落ちただけでは死にませんが、画面外に落下すると即ミスになるシーンがたびたび登場しますので、やはりジャンプという行為には高いリスクがともなうゲームになっているので、ジャンプはボタンで操作するようになっているのでしょう。
ちなみに、皇學館大学教授の小孫康平氏の著書「ビデオゲームに関する心理学的研究」(風間書房)によると、プレイヤーは下に落ちそうになると無意識にジャンプボタンよりも先に上を押したり、ジャンプ中に土管を跳び越えられそうにないと思ったときにも同様に上を入力したりボタンと上方向を同時に押す人が多かったという実験結果が得られたのだそうです。ジャンプという単純な動作の中にも、いざ調べてみると実はとても奥の深い世界がそこにはあったのですね……。
また、ゲームにおけるUI(ユーザーインターフェース)デザインの考え方については、筆者も執筆の協力をさせていただいた「ビジネスを変える『ゲームニクス』」(日経BP)にも詳しく載っていますので、もしご興味のある方はぜひこれらの本をお読みになってはいかがでしょうか?
著者プロフィール
鴫原 盛之 Morihiro Shigihara
1993年よりゲーム雑誌および攻略本などでライター活動を開始。その後、某メーカーでのグッズ・店舗開発や携帯コンテンツの営業、ゲームセンター店長などの職を経て、2004年よりフリーに。現在は各種雑誌やWebサイトでの執筆をはじめ、某アーケードゲームの開発なども手掛ける。著書は「ファミダス ファミコン裏技編」(マイクロマガジン社)、「ゲーム職人第1集 だから日本のゲームは面白い」(同)の他、共著によるゲーム攻略本・関連書籍を多数執筆。近刊は共著「デジタルゲームの教科書 知っておくべきゲーム業界最新トレンド」(ソフトバンククリエイティブ)がある。
Twitterは「@m_shigihara」です。
関連記事
- ゲームの世界とゲームセンターの秩序を守る最強の存在
「忘れ去られたアイデアシリーズ2:永パ防止キャラ」について考察する。 - プレイヤーをますますやる気にさせる! ビデオゲームに見る“ほめる技術”の極意
ゲーマーもほめて育てる。 - ここから先は通さない! プレイヤーの命を守る“愛の通せんぼ”
当たり前だと思っていませんか? そこには開発者の見えざる手が行き先を指しているんですよ。 - 「実は俺ってゲームがうまくね?」 プレイヤーの学習能力をさり気なく引き出す巧妙な仕掛け
なに? すべて開発者の手のひらで踊っていたとでもいうのか!? 経験値がゲームを面白くする。 - 「お前の命はあと3分だ……」 プレイヤーに立ちはだかる大きな壁とは?
アーケードゲームはスタートから3分後に“魔の時間帯”がやって来る!
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
イオンモールで販売「シフォンケーキ」にカビ発生、5000個回収へ “下痢”の報告で調査中……出店企業が謝罪
-
業務スーパーの“高コスパ”人気冷凍商品に「基準値超え添加物」 約1万5000個販売……自主回収を実施
-
“スケスケ成人式コーデ”が物議のモデル、「3度見される服」を披露 「コレは見ちゃうわ」「洗っても大丈夫なのか」の声
-
秋元康、AKB48卒業の柏木由紀に送った手紙が物議 “冒頭の一文”に「昭和丸出し」「嫌すぎる」
-
IKEAの新作カーテンが「家中これにしたい」ほどすてき!→どうやって付けているの? 垢抜けインテリア術に視線集中「すっごいかわいい」「色味が最高」
-
500円玉が1つ入る「桔梗のお花ケース」が100万件表示超え! 折り紙1枚で作れる簡単さに「お小遣いあげるときに便利」「美しい〜!」
-
【今日の計算】「500×99」を計算せよ
-
「これは変態だ」 職人が“鉄の塊”から作った「はぐれメタル」がガチすぎる 狂気の手作業に驚き「いかれてるw」
-
「そっち使うの?!」「これは天才」 さびだらけの鉄くぎをぐつぐつ煮込むと……? DIYに役立つ“まさかの使い道”が200万再生
-
2歳娘、自分のバースデーフォトをセルフタイマーで…… プロ顔負けの仕上がりに「すごーーーーーーー!!」「天才すぎます」と称賛の声
- 釣りに行こうとしたら、海岸に子猫が打ち上げられていて…… 保護後、予想だにしない展開に「神様降臨」「涙が止まりません」
- 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
- しぶとい雑草“ドクダミ”を生やさない超簡単な方法が115万再生! 除草剤を使わない画期的な対策に「スゴイ発見」
- 天井裏から変な音がする→スマホを突っ込んで撮影したら…… 映った“とんでもねぇ”モノに「恐ろしい」「何これ」と騒然の196万表示!
- 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
- 誰も教えてくれなかった“裁縫の裏ワザ”が目からウロコ 200万再生のライフハックに「画期的」と称賛【海外】
- 「電車の中で見ちゃダメ」「笑ったww」 実家からLINE「子ヤギがすばしっこくて捕まらない」→送られてきた衝撃姿が320万表示!
- 顔の半分は童顔メイク、もう半分の仕上がりに驚がく 同一人物と思えない半顔メイクが860万再生「凄いねメイクの力」
- 元「AKB48」メンバー、整形に250万円の近影に驚きの声「整形しすぎてて原型なくなっててびびった」
- スーパーで買ったレモンの種が1年後…… まさかの結果が635万再生「さっそくやってみます」「すごーい!」「手品みたい」
- 庭に植えて大後悔した“悪魔の木”を自称ポンコツ主婦が伐採したら…… 恐怖のラストに「ゾッとした」「驚愕すぎて笑っちゃいましたw」
- 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
- 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
- 「歩行も困難…言動もままならず」黒沢年雄、妻・街田リーヌの病状明かす 介護施設入所も「急激に壊れていく…」
- 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
- 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
- 釣りに行こうとしたら、海岸に子猫が打ち上げられていて…… 保護後、予想だにしない展開に「神様降臨」「涙が止まりません」
- 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
- 築152年の古民家にある、ジャングル化した水路を掃除したら…… 現れた驚きの光景に「腰が抜けました」「ビックリ!」「先代の方々が」
- 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評