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» 2013年09月22日 15時00分 UPDATE

ゲームの可能性を広げるための「Kickstarter」という選択 「ロックマン」の生みの親、稲船敬二氏へのロングインタビュー[2/3]

『Mighty No.9』と『ロックマン』はどこで差別化を図るのか――稲船敬二氏に新ゲームプロジェクトについて聞いた。

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 ロックマンや鬼武者、デッドライジングなどの生みの親であるcomcept 稲船敬二氏によるKickstarterプロジェクト『Mighty No.9』のインタビュー第2回をお届けする。→第1回はこちら

――なにか、本腰を入れようと思われたきっかけやエピソードはあったりされますか。

稲船 具体的にこれ、というエピソードはありません。ただ、外国のイベントに参加させていただく都度、多くのファンから「『ロックマン』を作ってくれてありがとう!」という声をいただいており、自分の作品によってこれだけ喜んでくれている人たちがいるんだ、ということを何度も実感させてもらいました。それだけの作品を作ることが出来た、という自分自身に対しての誇りをもらったその恩返しとして、もっと喜んでいただけるゲームを作りたいと思ったのが、きっかけと言えるかもしれません。私はもうすでにカプコンを退社しており、『ロックマン』自体を作ることは出来ません。ただ、僕の『ロックマン』を作ってきた経験はなくならないし、『ロックマン』を作ってきた仲間と一緒なら、より一層面白いゲームをつくれるに違いない、そう確信しています。その確信が本物なのかどうか、ファンの方々に判断してもらうのに最適な場が、Kickstarterだったんです。

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――その結果、世界中のファンから多くの支援が寄せられましたね。

稲船 成功して、本当に良かったです。間違いなく言えるのは、道のりは簡単ではなかったということです。開発スタッフを集め、ゲーム作りに取り掛かったのが4、5カ月前。もちろん、始めた当初は支援金もありませんので、すべて自腹で開発費を捻出していました。Kickstarterで目標金額に達しなかった場合を考えたら、非常に大きなリスクです。つまりそれだけのリスクを背負うだけの覚悟をして、ゲーム作りに取り組んだということです。実際のところ90万ドル集まったからといって、ゲーム開発がその金額で足りるかと言ったら足りません。実際には、90万ドルの中にはリワード(支援者への特典)の費用やKickstarterに支払う手数料なども含まれており、それらを引いたら、手元に残る開発費はそれほど多くありません。もちろん、何も支援のない状況から比べれば天と地ほど差はあります。けれど相当な金額が集まったとしても、外から見るほど、実際の開発に回せるお金は多くないということを、支援者の方たちにも理解いただきたいです。ただ、資金を理由に中途半端なものを作るくらいだったら、身銭を切ってでもしっかりとした作品を作る覚悟は有りますので、その点はご安心ください。

――『Mighty No.9』をPC用のゲームソフトとして開発されることに決めた理由も開発費を抑えるためですか。

稲船 それもあります。例えばPS3で作ります、といったらやはりXbox 360ユーザーやWii Uのユーザーを悲しませる結果になってしまうので、全機種で出したい。けれど、そのためには当然開発費も必要になり、ハードルは上がります。PCソフトであれば、PCを持っているユーザーみなさんに遊んでいただけると考え、PCソフトから始めよう、と決めました。

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――DRMフリーで出されるとのことなのですが、コピーされるリスクについてはいかがお考えですか。

稲船 気にしないわけではないです。ですが、僕らはこのプロジェクトをインディーズのゲーム開発として捉えているんです。それなら、ガチガチに権利を縛るよりも、色々な可能性を残した状態でユーザーに遊んでもらうほうを選ぼうという判断です。『Mighty No.9』を最初にプレイしてくださる方たちは、間違いなく僕らを支援してくださった方たちです。たとえコピー版で遊ぶ人たちがその後出てきたとしても、それはあくまでイレギュラーなケースです。僕らがしっかりと考えなくてはいけないのは、なによりも出資してくれた人たちです。その人達にもっとも喜んでいただける形でゲームを出すのが、僕らの義務でもあると考えています。コピー版を取り締まることにばかり注力し、最も喜んでいただきたい人たちが喜べないようなゲームにしてしまっては本末転倒なんです。

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――ゲームファンの間では、MODを作って、ユーザー自身が新しいゲームの楽しみ方を作っていくこともゲームの魅力として定着しつつありますからね。

稲船 MODというツールによって、ファン同士がより強くつながりあい、コミュニティが拡大していくことは、ゲームにとってとても良いことだ、とポジティブに捉えることが大事だと思うんです。そうやって柔軟に考えることが出来るのも、僕らがインディーズだからこそですね。

――個人的には、ゲームにとってファン同士のコミュニティが果たす役割は非常に重要だと思っているので、『Migthy No.9』が発売された時、どのような化学反応が起きるのか、非常に楽しみです。

稲船 そうですね、僕自身もファンの方々と一緒に『Mighty No.9』という作品が、世界中に広がっていくことを楽しんでいきたいな、と思います。

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――話をより具体的なゲームの中身に移させていただきたいのですが、今回の『Mighty No.9』と先ほどから上がっている『ロックマン』、どういったところで差別化をはかろうとなされていますか。

稲船 ゲームに関してのシステムや細かな部分に関しては、これから作り上げていくので詳細は明かすことが出来ませんが、それ以外でも大きな違いをストーリーに見て取れるようにしていこうと思っています。今の時代に合った、より奥深いストーリーと世界観を用意しょうと思っています。『ロックマン』の物語については、そこまで多くのことをつめこむことが出来なかった部分でも有ります。「ドクターワイリーが悪さをしだした。何とかしなくては!」でストーリーが始まる。シンプルでわかりやすい物語であることは間違いないのですが、ゲームとして最優先していたのは物語ではなかったことも事実です。ですので、ファン同士が『ロックマン』について語り合う時の話題として、「あのステージのボスがさ……」や「あのステージの音楽がさ……」などはあっても「ロックマンのストーリーがさ……」はあまりないと思うんですよ。

――そう言われると、確かにそうかもしれませんね。

稲船 でも『Mighty No.9』は違います。9番というのは、バトルコロッセオというロボット格闘リーグに参加するチームの9番目のメンバーという意味なんです。9番がいるということは、当然1番から8番のキャラクターもいて、主人公はそのチームの補欠なんです。主人公である彼だけが飛び抜けた力もなく、例えるなら『みにくいアヒルの子』のような感じです。けれど1番から8番の中には、怖いお兄さんもいれば、頼り甲斐のあるお兄さんもいて、そういったほかのキャラクターとの間でストーリーが展開していく。その物語をより楽しんでもらうために、『ロックマン』で培ってきたノウハウ、つまり魅力的なアクションだったりステージ上のギミックが随所に活かされるようにしていきます。

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――ゲームのあらすじをKickstarterのページを拝見した際、「可能性」という言葉を今回の『Mighty No.9』では大切にされているという印象を受けたのですが、その点はいかがでしょうか。

稲船 「可能性」という言葉はたしかに『Mighty No.9』というゲームのキーワードといえるかもしれません。何も出来ない主人公が、いろいろなキャラクターたちから力を借りて、少しずつ成長していく。その中で主人公は、「僕は何の取り柄もない」というところから、ほかのキャラクターたちが持つ能力を吸収することで、「真似ることが出来る、成長することが出来る」ということに気づいていくんです。最終的には、手に入れたその力で、お兄さんたちである1番から8番のキャラクターたちを助けに行く。言葉で言えば「成長」そして「学び」と言い換えることも出来ます。ロボットも、人間も、つねに学ぶことで成長していき、学ぶことをやめた段階で成長もとまる。その事実を、ゲームを遊ぶファンの方たちへのメッセージとして盛り込んでいます。ゲームを遊ぶことで、プレイヤー自身のプレイスキルも、精神面も、一歩一歩成長していく、その喜びを思い出してほしいな、と思っています。レトロなゲームはみんな、そういうコンセプトを持っていましたよね。 最近のゲームだと、お金を払えばゲームのキャラクターの能力をいきなり上げることも出来るものもあるじゃないですか? 悪いとはもちろん言わないですが、もう一回ゲームとして立ち返るべきだと思うのは、遊ぶことでプレイヤーが少しずつ成長できるということなんです。ある意味、Kickstarterというシステム自体が、そのコンセプトとリンクしていますよね。世界中の人たちの力を借りて、少しずつプロジェクトが成長していく。大切なことは、日々の一歩一歩なんです。

――それはつまり『Mighty No.9』という作品が成長していった先には次回作もありうる、という認識でよろしいでしょうか。

稲船 もちろん、ありえます。次回作もKickstarterという場を使って開発するのかは、その時の流れで変わってくると思います。→第3回

Mighty No. 9 Kickstarter Page

英文:Interview with Keiji Inafune, the Father of Mega Man, on Choosing Kickstarter to Expand the Potential of Game Development [2/3]

photo by Miyuki Suemitsu



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