3Dラテアートに世界が驚愕!? 進化を続けるネット生まれのラテアート作家じょーじさん

カプチーノからネコやキリンの首が飛び出す――そんな3Dラテアート作品がネットで話題を呼んだじょーじさん。しかしもはやそれすら古い! 進化を続けるラテアート道に密着。

» 2013年12月05日 10時00分 公開
[稲葉ほたて,ねとらぼ]

 エスプレッソの表面にミルクなどで模様や絵を描いた画像が、TwitterやFacebookのタイムラインに流れてくるのを見たことはないだろうか。こうした技術は「ラテアート」と呼ばれており、実は世界大会も開かれている。最近ではさらに進化し、下のような立体的な作品を見かけることが増えた。

画像

 調べてみると、どうやら作者は日本人。筆者も初めて見たときは驚いたが、海外でも大きな驚きをもって受け止められたようだ。そこで今回は、こうした「立体ラテアート」とでも呼ぶべき作品を独自に思いつき、Twitter上で公開して大きな話題を呼んだ、じょーじさん(@george_10g)に話を聞いてみた。

海外まで拡散したラテアート画像

 勤務先のカフェがある大阪から東京にやってきたじょーじさんと会ったのは、今年の7月半ばのこと。エスプレッソマシンのあるカフェで落ち合うと、さっそく立体ラテアートを作るところを見せてくれた。

 「ラテアートはミルクを細かく泡立てるのがコツなのですが、立体ラテアートの場合は、さらに蒸気を多めに入れて膨らませます。それをしばらく置いておくと、ミルクの脂の部分が固まって、上の方にしっかりした泡を作ってくれます。それを使って描くんです」

 じょーじさんは慣れた手つきで作業を進めていく。彼がラテアートをTwitterで公開しはじめたのは、3年ほど前のこと。「本日の暇カプチーノ」という言葉とともに投稿される彼の絵は、マンガやアニメのキャラクターのような身近な題材が多く、徐々に話題になっていった。

画像 初期の作品「銭形警部」のラテアート

 現在では、地元大阪のテレビ局などから出演依頼が舞い込むこともある。最近では、Facebookに画像が転載され、それが世界中に拡散された。「韓国語やアラビア語など、いろんな言語で感想が来ますね。メールで来たものについては、翻訳ソフトを使って返したりしています」

画像 海外で話題になった3Dラテアート。ネコがカップから飛び出しててすごい!

ラテアートの新境地“立体ラテアート”はこうして生まれた

 もともと、じょーじさんはカフェのアルバイトで覚えたラテアートを、友人たちに見せたり、mixiで写真を公開していたという。それをTwitterに流してみたところ、大きな反響を呼んだのだ。「特にうれしかったのは、プロの漫画家さんから反応があったことです。自分の父がカフェを経営していて、子どもの頃からそこに置いてあった、たくさんの漫画を読んで育ってきたので」

 あるとき、Twitter上で「RT(リツイート)してくれた人のアイコンをカプチーノで描く」という内容をつぶやいてみた。すると、なんと3万人にRTされてしまった。結局、ひと夏かけて1日約3枚、100人分のラテアートを描いたところでTwitterで謝り、打ち止めにさせてもらったという。

 そんなじょーじさんが立体ラテアートのアイデアを思いついたのは、昨年夏のことだ。その後、ドラゴンクエストの「はぐれメタル」を作成してみると、思いのほかうまく行った。続いて作ってみた、うさぎの立体ラテアートは、耳の部分がきれいにくっついて、上手い効果が出せた。そうした作品たちは、Twitterに投稿すると瞬く間に拡散されていった。

画像 はぐれメタル完成
画像 ダリの傑作もラテアートでこの通り。時計がだらーん
画像 首がぐいーん

 それまでの平面ラテアートと違ったのは、この立体ラテアートでは版権物のキャラクターなどではない「一次創作」の作品でもネットで話題になったことである。

 「やはり、自分の作品に感想を言ってもらえているな、と思えます。また、ラテアートの世界大会に出るような作品を見ると、絵の細かさみたいな部分を競い合っている印象なんです。その技術は確かに凄いと思う。でもそれって一般の人にはどうでもいいことじゃないですか。ある意味で立体ラテアートは、そういう狭い世界をぶち壊していると思う」

寝る間も惜しんで

画像

 じょーじさんは、夏休みの自由工作で賞をもらうような子どもだったという。料理学校にいた高校時代にはスープのコンクールで最優秀賞をもらったこともある。つまりは「自分のアイデアで工夫したり、細かい作業をして何かを作ったりするのが好き」なのだ。したがって、実は絵それ自体には、さほどこだわりはないという。

 「マンガはずっと好きでしたが、特に絵を描きたいわけではないです。むしろカプチーノを、あの手この手で工夫して見せているという感じです。今の絵の技術は、2000枚くらい描く中で身についたものです。最初の頃は、PCの画面に紙を当てて、上からなぞって練習をしたりもしました」

 自分のラテアートを練習するのは、カフェの仕事が終わる夜中1時や2時過ぎからだ。店の機械を借りて1時間ほど行い、次の日のネタを撮影してから帰る。そんな風に、寝る間も惜しんでラテアートを作り続けた結果、じょーじさんは気がつけば有名になっていた。

 夢は自分のカフェを持つこと。地元で父が経営するカフェを継ぐ予定だが、それとは別に東京でカフェを出すことを目標にしている。「(ネット投稿は)別に有名になりたくて始めたわけではないのですが、現在は、これはきっと『自分の夢につながるのだろう』と思っています」。最近では、niconicoで活躍する歌い手のCDジャケットも手がけた。来年頭には集英社から本が出る予定もあり、芥川賞作家の長嶋有さんや、はるかぜちゃんこと春名風花さん、「ジョジョの奇妙な冒険」の作者・荒木飛呂彦さんとの対談も掲載される。さらには「ラテアートでの絵本の制作にも興味がある」と話は広がる。どうやら、夢はカフェの経営だけには留まらなそうだ。

 今後のラテアートについて聞いてみると、「実は3Dラテアートには、限界を感じているんですよね」と意外な答えが返ってきた。泡が形を保てる制限時間などを考えると、実はできることは多くないからだと言う。

 「そういう意味では、とっとと3Dラテアートを殺したいですね(笑)。やれることをやり尽くして、やり方をどんどん広めて、終わらせてしまいたい。そのための方法を、色々と考えてるんです。この間は、カップの外でうさぎが休んでる姿を作ってみました。もうカフェラテじゃないだろって(笑)。これはかなり終わりを早めた気がしますね。そしたら、じゃあ次は、実際のにんじんの上にうさぎを置いてみたらどうだろうとかね(笑)」

画像 もはやラテアートの域を超えてます

 インタビュー中、ほかで見かけるシロップや着色料を使ったラテアートについて聞いた際、じょーじさんは「僕自身は、ちゃんと飲めるものを作るのが大事だと思います」と言っていた。しかし一方で、その発想はもう、ラテアートとは何かを問うようなところまで、進んでしまっているようだ。

 そんな話を聞きながら、筆者の頭のなかでは「ラテアート道」という単語が点滅していた。Twitterへのラテアートの投稿は、どうやら彼を、当初思いもかけなかった場所へと連れて行きはじめているようだ。

撮影協力:JELLYJELLYCAFE

アクセス:東京都渋谷区宇田川町10-2 新東京ビル202

インタビューの際に店内をお借りしました(※じょーじさんが勤めるお店ではありません)


稲葉ほたて(@jamais_vu)。ネットライター。サークル「ねとぽよ」主催者の片割れ。サイゾー、PLANETS等に執筆。ネット周りの話をいろいろ書いてます。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

先週の総合アクセスTOP10
  1. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  2. 富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
  3. 2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに少々強引な寝かしつけをされると…… コントのようなオチに「爆笑!」「可愛すぎて無事昇天」
  4. 異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
  5. 【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
  6. 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  7. 1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
  8. 業務スーパーで買ったアサリに豆乳を与えて育てたら…… 数日後の摩訶不思議な変化に「面白い」「ちゃんと豆乳を食べてた?」
  9. 祖母から継いだ築80年の古家で「謎の箱」を発見→開けてみると…… 驚きの中身に「うわー!スゴッ」「かなり高価だと思いますよ!」
  10. 「妹が入学式に着るワンピース作ってみた!」 こだわり満載のクラシカルな一着に「すごすぎて意味わからない」「涙が出ました」
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」