クウェートのオタク事情は? うわさの“コミケの石油王”とアキバの休日してきた海外オタク見聞録

「湾岸諸国で一番濃いオタク」国家・クウェートからコミケにやってきて石油王と騒がれたアクバルさんにインタビューしました。

» 2014年01月08日 14時23分 公開
[松岡洋,ねとらぼ]

 コミックマーケット85で、「アラブの石油王がコミケにやってきた」とうわさになったクウェート人のアクバルさん(実は石油王でなく学生さん)。秋葉原に付き合ってほしいとの連絡があり、半日案内しながらクウェート事情などの話を聞いてきました。

 コミケの会場に民族衣装で現れたアクバルさん、その日のうちに自分の写真がネットで話題になっており、しかも「石油王」という文字が頻繁に現れていたので英語(OIL TYCOON)に翻訳してその意味を理解。じゃあ、秋葉原にもう一度民族衣装で現れたらどういう反応があるか、ということで案内係を仰せつかった次第です。

 待ち合わせしたのはヨドバシAkiba前で、さすがに道中騒がれるだろうということでホテルからタクシーでやってきました。

 しかし、風変わりなものがこれでもかと集積してる秋葉原では、写真を撮られることもなく完全にスルー!

 GUNDAM Cafeのテラスで雑談していると、Google Glassをかけた方が通りがかりしばし技術談話に花が咲きました。ちなみにこの方は横須賀の米海軍に勤務しており、一般ユーザーとして購入したとのこと。秋葉原を散策しながらGoogle Glassで撮影したものを手元のXperiaで見せてくれましたが、これもガジェット好きが集まる秋葉原ならではの光景でしょう。

通りすがりのGoogle Glassユーザー

 この日は暖かかった年末のコミケとはうってかわって冷え込んでおり、寒さをしのぐため場所を移してクウェートの様子などをうかがいました。

石油王と言われたら信じてしまうアクバルさんの貫禄

 アクバルさんは現在大学でビジネスマネジメントを専攻しており、ゆくゆくは石油会社に就職するか、大使になりたいとのこと。ただクウェートでは大臣などの重要ポストは王族、もしくはそれに連なる家系であることが必須で、王族ではないので大使になるのは難しいと話していました。

 しかし話をうかがううちに「伯父が国防次官だった」などという衝撃的な話がポロポロと。国防次官といえば、国防大臣(=王族)を補佐する重要なポストであり、アクバルさんは王族を補佐する部族の、いわゆる「良家の御曹司」なのでした。

 かつて海外に留学していた時も玉の輿を狙って近寄ってくる女性がおり、自分を財布としてしか見ず、しかも2人の子持ちと判明した時にはさすがに「3次元の女性は怖い」と逃げてきたそうです。

 ここで少しクウェートのことを紹介しておくと、もともと過酷な土地で生活するため共同体としての部族の結束が固く、またさまざまな文物をもたらしてくる商隊は貴重な存在であり、それが資源大国となった今も、訪問者を丁重にもてなす文化として伝承されています。海外でもてなした相手がクウェートに行くと、その数十倍のもてなしを受けるとのことで、GUNDAM Cafeでおごった私も期待MAX状態!

 中東地域は過去に欧州列強の植民地だったため、欧州諸国や米国などに対して冷ややかな目で見ているのに対し、日本については、戦後の焼け野原から復興して先進諸国の一角を占めていることに驚き、しかもイスラム教徒が理想とする徳目(勤勉、礼節、約束を守る、など)を日本人が実践しているのを非常に好意的に見ているようです。

 東日本大震災では被災した三陸鉄道の復興支援として車両の購入を援助したり、日本に原油500万バレル(約400億円相当)の無償提供などを行いました。

 クウェートでは膨大な石油収入のおかげで1人当たりGDPは世界トップクラス、大学出の初任給が日本円に換算して約35万円、それに子ども1人あたりの補助金が人数に制限なく出るため、子どもが6人ほどいた場合にはそれだけで月収60万円になるそうです。お金に不自由なく、海外からの労働者をたくさん召使いとして雇い入れているため時間も余っているものの、屋外は暑く、戒律によって娯楽も制限されているため、レストランでの豪遊か友人宅でのパーティーが主な娯楽となっているのです。

 つまり、お金と時間がたっぷりあり、しかも屋内でのひきこもり娯楽という環境=オタク的な土壌がそろっているため、アニメにハマる若い世代も多く、アラブのアニメ事情に詳しい方の話では「湾岸諸国で一番濃いオタク」国家なのだとか。ただ、戒律により女性が肌を露出していたり、暴力的な表現が禁じられているため、アニメの放送や上映などが非常に制限されており、クウェートのオタクたちはDVDなどを入手したり、インターネットでアニメを鑑賞しているそうです。

 アクバルさんを秋葉原に案内している時にも「メイド喫茶いいよね、『会長はメイド様』に出てきたようなところにも行ったよ」とか、「STEINS;GATE」のラボとなった場所を案内すると「おお、あれは本当にあった場所なんだ! 帰ったらもう一回全部見る」などと感激しており、その濃さがうかがえました。

 海外から受け入れている労働者のモラルは高いとはいえず、アクバルさんが秋葉原で買ったオタクグッズも「クウェートの空港でいくつか盗まれると思うけど大丈夫、空港長の父に電話すれば全部戻ってくる」とのこと。石油王じゃないけど、やっぱりすごいよアクバルさん。

 アクバルさん、初の日本をとても気に入っていただけたようです。ホテルに戻るタクシーを見送った時のお言葉は……。

 「来年の冬、またコミケに来ます。石油王として」

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2411/19/news150.jpg 「情報を漏らされ振り回され……」とモデラー“限界声明” Vtuberのモデル使用権を剥奪 「もう支えられない」「全サポート終了」
  2. /nl/articles/2411/20/news028.jpg 「うどん屋としてあるまじきミス」→臨時休業 まさかの“残念すぎる理由”に19万いいね 「今日だけパン屋さんになりませんか」
  3. /nl/articles/2411/20/news224.jpg “ドームでライブ中”に「76万円の指輪紛失」→2日後まさかの展開に “持ち主”三代目JSBメンバー「誰なのか探しています」
  4. /nl/articles/2411/19/news169.jpg 高畑充希と結婚の岡田将生、インスタ投稿めぐり“思わぬ議論”に 「わたしも思ってた」「普通に考えて……」
  5. /nl/articles/2411/20/news031.jpg 「本当に同じ人!?」 幼少期からイボをいじられていた男性→美容師の“お任せカット”が衝撃 「めちゃくちゃ大変身」
  6. /nl/articles/2411/19/news022.jpg 「おててだったのかぁああああ」「同じ解釈の人いた笑笑」 ピカチュウの顔が“こう見えた”再現イラストに共感続々、464万表示
  7. /nl/articles/2411/20/news042.jpg 「腹筋崩壊」 ハスキーをシャンプー&パックしたら…… “予想外のハプニング”に「こ〜れは大変だわ」「沼にでも落ちたのかとwww」
  8. /nl/articles/2411/20/news216.jpg “歌姫”ののちゃん、6歳現在の姿に驚きの声「あれっ!?」「ビックリしてます!」 2歳で「童謡こどもの歌コンクール」銀賞受賞
  9. /nl/articles/2411/20/news041.jpg 黄ばみのある68年前のウエディングドレスを修復すると…… 生まれ変わった姿に「泣いた」「受け継ぐ価値のあるドレス」
  10. /nl/articles/2411/18/news107.jpg 走行中の車から同じ速さで後方へ飛び降りると? 体を張った実験に反響「問題文が現実世界で実行」【海外】
先週の総合アクセスTOP10
  1. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  2. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  4. まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
  5. 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  6. 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
  9. ユニクロが教える“これからの季節に持っておきたい”1枚に「これ、3枚色違いで買いました!」「今年も色違い買い足します!」と反響
  10. 中央道から「宇宙戦艦ヤマト」が見える! 驚きの写真がSNSで注目集める 「結構でかい」「どう見てもヤマト」 撮影者の心境を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. 50年前に撮った祖母の写真を、孫の写真と並べてみたら…… 面影が重なる美ぼうが「やばい」と640万再生 大バズリした投稿者に話を聞いた
  2. 「食中毒出すつもりか」 人気ラーメン店の代表が“スシローコラボ”に激怒 “チャーシュー生焼け疑惑”で苦言 運営元に話を聞いた
  3. フォロワー20万人超の32歳インフルエンサー、逝去数日前に配信番組“急きょ終了” 共演者は「今何も話せないという状態」「苦しい」
  4. 「顔が違う??」 伊藤英明、見た目が激変した近影に「どうした眉毛」「誰かとおもた…眉毛って大事」とネット仰天
  5. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. 星型に切った冷えピタを水に漬けたら…… 思ったのと違う“なにこれな物体”に「最初っから最後まで思い通りにならない満足感」「全部グダグダ」
  7. 「泣いても泣いても涙が」 北斗晶、“家族の死”を報告 「別れの日がこんなに急に来るなんて」
  8. ジャングルと化した廃墟を、14日間ひたすら草刈りした結果…… 現した“本当の姿”に「すごすぎてビックリ」「素晴らしい」
  9. 母親は俳優で「朝ドラのヒロイン」 “24歳の息子”がアイドルとして活躍中 「強い遺伝子を受け継いだ……」と注目集める
  10. 「幻の個体」と言われ、1匹1万円で購入した観賞魚が半年後…… 笑っちゃうほどの変化に反響→現在どうなったか飼い主に聞いた