「きのこの山」と「たけのこの里」を味覚センサーで分析してみたら、新たな争いの火種を発見した
「きのこ」とか「たけのこ」とかの問題ではない。
1979年にたけのこの里が登場して以来激しい戦いが続いている、おなじみ「きのこの山」と「たけのこの里」。そろそろ研究室かどこかで本格的な味覚分析をしてみたい。
そんなわけで、慶應義塾大学理工学部を訪れた。出迎えてくれたのは、慶應義塾大学研究員であり、AISSY代表取締役社長の鈴木隆一氏。世界に1台しかない「レオ」(特許取得済み)という味覚センサーをお借りし、検証に協力してもらった。
味覚センサー「レオ」
発明の名称:味の測定方法並びにそのための味覚センサー及び味測定装置
特許・特許出願番号:日本国特許第4240003号
ヨーロッパ特許出願 No. 06746686.2
米国特許出願 No. 11/920,924
この味覚センサー「レオ」は、「甘味・塩味・酸味・苦味・うま味」の5つの基本味のもとになる成分を電気的に測定したあと人工知能によって補正し、人間が感じる味の強さを測るというもの。これにより、主観的な「味」を客観的に見ることができるという。
実験開始
まずは、きのこの山とたけのこの里をそれぞれビーカーに入れる。
そこへ、味の物質を取り出すための液(詳細は非公開)をかける。こうすることで、口の中が再現される。
それからスポイトで、きのこの山・たけのこの里が溶けた液を吸い取り、機械で実験するための小さな容器に移す。
続いて、味覚センサーにかける。この小さな容器から1マイクロリットル(=1ミリリットルの1000分の1)を取り出し分析する。
同様に、きのこの山・たけのこの里の「チョコレート部分」と「ビスケット部分」の実験を行う。
実験結果
【前提知識(鈴木氏より)】
- 甘味と苦味はシーソーのような関係。甘味が増加すると苦味が減少し、苦味が増加すると甘味が減少するように感じる。
- 旨味と塩味の関係は、どちらか一方が増加するともう一方も増加、どちらか一方が減少するともう一方も減少する。
- 酸味は他の味覚とのシーソーのような関係。酸味が強くなると他の味覚が減少し、酸味が弱くなると他の味覚が増加する。
「きのこの山」と「たけのこの里」の全体比較
- 甘味:「きのこの山」の方が、0.37レベル高い
- 塩味:「たけのこの里」の方が、1.34レベル高い
- 酸味:差分0
- 苦味:「きのこの山」の方が0.01レベル高いが、誤差の範囲内(95パーセントの人は、全ての味覚に対して0.2レベル違うと味の違いを感じる)
- 旨味:「たけのこの里」の方が、0.24レベル高い
「きのこの山(チョコレート部分)」と「たけのこの里(チョコレート部分)」の比較
- 甘味:「きのこの山」の方が、0.21レベル高い
- 塩味:「たけのこの里」の方が、1.82レベル高い
- 酸味:「たけのこの里」の方が0.02レベル高いが、誤差の範囲内
- 苦味:「きのこの山」の方が0.05レベル高いが、誤差の範囲内
- 旨味:「たけのこの里」の方が0.27レベル高い
「きのこの山(ビスケット部分)」と「たけのこの里(ビスケット部分)」の比較
- 甘味:「たけのこの里」の方が、0.26レベル高い
- 塩味:「たけのこの里」の方が、1.01レベル高い
- 酸味:「たけのこの里」の方が0.01レベル高いが、誤差の範囲内
- 苦味:「きのこの山」の方が0.01レベル高いが、誤差の範囲内
- 旨味:「たけのこの里」の方が0.14レベル高い
結果の分析と考察
以上のことから、全ての実験において「酸味」と「苦味」は誤差の範囲内であることが分かる。よって、それ以外の味覚「甘味」「塩味」から結果の分析と考察を行う(「旨味」は塩味との相互作用があるため、いったん除外する)。
「たけのこの里」のビスケットはクッキーのため、「きのこの山」のクラッカーに比べ剥がれやすく、チョコレート部分に付着しやすいことが、前回の調査(記事)から分かっている。「きのこの山」と「たけのこの里」はそれぞれ同じチョコレートを使っているにもかかわらず、今回「きのこの山」の甘味が「たけのこの里」より0.21レベル高く、塩味が「たけのこの里」の方が1.82レベル高かった。また、ビスケット部分のデータに着目すると、甘味では「たけのこの里」の方が0.26レベル高い。しかし、全体では「きのこの山」の方が0.37レベル甘味が高いとされている。したがって、「きのこの山」全体の甘味が「たけのこの里」より高いのは、チョコレート部分に付着したビスケットが大きく影響していると考察する。
つまり、「たけのこの里」派と「きのこの山」派は、「ビスケット部分の甘味」「ビスケット部分の塩味」「チョコレート部分に付着したビスケットの塩味」の3点の味覚の差による派閥なのではないだろうか。
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