「年齢は関係ない」――アニメファンを「卒業」しないドイツの大人たちに会ってきた
ドイツ最古のアニメファンクラブが主催するイベント「アニメマラソン」。そこは30代や40代の「大人」なアニメファンが集まる落ち着いたイベントだった。
海外のアニメファンといえば、高校生や大学生がコスプレで盛り上がっている光景を思い描く方も多いのではないだろうか。就職などをきっかけにアニメファンを止めてしまう人も多いというが、一方で、アニメファンを「卒業」しない人たちもいる。今回は、そんな「卒業しない」アニメファンたちに会うために、5月1〜3日に開催されたアニメコンベンション「アニメマラソン」を訪れた。
今年で17回目の開催を迎える「アニメマラソン」は、ドイツ北部ニーダーザクセン州ブラウンシュヴァイク近郊のケーニヒスルッターという小さな町のホテルが会場となる。イベント名が示すように、プログラムは金曜日の夕方から日曜日の夕方まで48時間ノンストップで実施され、参加者の多くはホテルに宿泊する。今年は1800人が参加した(3日間のべ、日帰り参加者含む)。
「アニメマラソン」を主催する運営母体は1997年に設立されたというドイツ最古のアニメファンクラブ「アニメの友達」。200人ほどが会員登録しており、主な年齢層は30代だという。会員同士の交流を目的とした宿泊型イベント「アニメマラソン」の実施のほか会報誌「FUNime」を発行している。
「アニメマラソン」はアットホームな雰囲気が売りという。会場のホテルに入ると、他のアニメ・コンベンションでありがちな若者が走り回っていたり、声高らかに歓談していたりというのはあまりない。目につくのは大人だ。男女を問わず30代や40代で、とても落ち着いた雰囲気だ。アニメファンなのか一瞬疑ってしまいそうになるほど年配の方や子どもと一緒に来ている参加者も見かけた。
イベント・プログラムは、ステージのある大ホールでコスプレコンテストやクイズ大会が開催され、会議室では各種ワークショップが実施される。過去ドイツで発売された漫画をほぼ網羅したという「漫画図書館」やアニメソングが歌えるカラオケ部屋もにぎわっていた。会場はいわゆるリゾートホテルで、温水プールや地下にはボーリング場を備え、それらもドイツ各地から集まった「同志」の交流の場となっていた。
「アニメマラソン」実行委員長のジェニーさんに聞いたところ、イベント参加者の年齢は年々高くなる傾向にあるという。以前は子どもが親を連れてくるケースが多かったが、最近は親が子どもを連れてくる場合も増えている。親子でアニメファンというパターンだ。小さな子ども連れの参加者に配慮するため、今年初めて「オタク・ミニ・クラブ」を設置した。これは託児室で、ドイツのアニメファンイベントとしては初の試みとなる。
ジェニーさんがアニメファンになったきっかけは「美少女戦士セーラームーン」。ホテル業界で働く彼女は、アニメを入り口に日本を知り、趣味でも仕事でも世界が広がったと話す。出産時は一時アニメを見る時間が減ったが、最近は増えたグッズをアニメ別にコーナーを設けて飾るのが楽しいのだという。
アニメファンに「年齢は関係ない」
アニメファンを「卒業」しようと思ったことはないのだろうか。会場で見かけたさまざまな参加者に話を聞いてみた。
アーニャさん(38歳)とゾーニャさん(45歳)は「アルプスの少女ハイジ」を見て育ち、「セーラームーン」でアニメファンになった。仕事を始めると収入が増え、グッズをたくさん買えるようになった。夫とはアニメファンイベントで出会い、今は子どももいるが、アニメファンを止めようとは一度も思わなかったそうだ。
「ルパン三世」のような大人向けの作品が好きと語ってくれたのはマルクスさん(49歳)。古い作品では「花の子ルンルン」や「きまぐれオレンジロード」が好きだという。
ハンブルクから来ていたパトリックさん(30歳)はガンダムシリーズのファン。ガンダムが作られ続ける限りアニメファンは止めないと熱く語ってくれた。
息子のフィン君(6歳)もアニメファンだというスヴェンさん(38歳)はセーラームーンの画集を持っていると誇らしげに話してくれた。お気に入りはセーラーマーキュリー。親子で「ONE PIECE」のファンだそうだ。一緒にいたジェシカさん(29歳)も、アニメファンをやめることは考えられないという。週末はいつもアニメを見て過ごしているそうだ。
以前はメタル音楽のファンだったというオラーフさん(50歳)は、アニメファンであることは個人の自由で、年齢は関係ないと話してくれた。現実世界では紛争など悲しいニュースが多いが、アニメの世界は平和なのがいいという。
アニメの絵は美的に優れていると話してくれたアンディさん(30歳)は、会場にいたイラストレーターにスケッチブックへのイラストをお願いしていた(1枚20ユーロ)。何年もかけて集めたイラストはスケッチブック8冊にもなるらしい。
会場には、日本の鉄道模型の製作を楽しめるブースも。もともと鉄道模型のファンだったという担当者のカイさん(38歳)は、日本の新幹線を見てからは日本の鉄道模型一筋だという。鉄道模型は初めてというマティアスさん(61歳)もアニメファンだ。
彼らにとって、就職も出産もアニメを「卒業」することにはつながらない。むしろ歳を重ねるごとに深みを増している。ドイツのアニメファンの年齢層はどんどん広がっているようだ。そして「アニメマラソン」は同年代のアニメファンが語らいあえる場所でもあった。皆さんもこの時期にドイツを訪れる機会があったら、彼らとともにホテルに泊まって徹夜でアニメ談義に花を咲かせてみてはいかがだろうか。
関連記事
- 海外オタク見聞録:庵野秀明監督へのあふれる愛 東京国際映画祭に海外コスプレイヤー集結
東京国際映画祭と世界コスプレサミットがコラボ。特集上映「庵野秀明の世界」の応援に海外のコスプレイヤーが集まりました。 - 巨大なオフ会? ドイツ最大のアニメ・漫画ファンイベント「Connichi」に行ってきた
ライブやグッズの販売、そしてアニメ・漫画ファンの友達に会える場所――2万5000人が集うドイツの「Connichi」を取材してきました。 - ロシアの夫婦レイヤーが「ゼルダ」で勝利 熱戦・熱演の「世界コスプレサミット」フォトリポート
今年も恒例の世界コスプレサミットが開催。懐かしの「リボンの騎士」から最新アニメまで、世界各国から気合の入ったコスプレイヤーによる演技が行われました。 - 萌えフィギュアのロボット骨格に「スイスのエロゲ王」も登場 ワンフェス2014[夏]フォトリポート
人気アニメ・ゲームのフィギュアが多数展示されていたワンフェス2014[夏]。開催前から話題だった動くフィギュアのロボット素体も見てきました。 - ポロリもあるよ!? ニコニコ超会議3超コスプレフォトリポート!!
「艦これ」「進撃の巨人」といった定番の人気作から、ふなっしー擬人化など個性あふれるコスプレまでどーんとご紹介!
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
-
元「AKB48」メンバー、整形に250万円の近影に驚きの声「整形しすぎてて原型なくなっててびびった」
-
小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
-
築年数不明の平屋にある、ボロボロ床板をはがしてみたら…… 発覚したヤバい事実に「ビックリ!」「大丈夫でしたか?」心配と驚きの声
-
ママの足にくっつく生後7カ月の赤ちゃん、甘えてるのかと思いきや…… 計算された行動と「ちいこい後ろ姿がかわいすぎ」て目が離せない
-
「電車の中で見ちゃダメ」「笑ったww」 実家からLINE「子ヤギがすばしっこくて捕まらない」→送られてきた衝撃姿が320万表示!
-
“作画軽減ガンダム”をガンプラで作成 → 使用パーツも最小限の再現ぶりに「完全に一致」「部品軽減ガンダム」
-
誰も教えてくれなかった“裁縫の裏ワザ”が目からウロコ 200万再生のライフハックに「画期的」と称賛【海外】
-
21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
-
0歳赤ちゃん「(ママ来たっ!)」→喜びが抑えきれなくて…… 尊すぎるダンスが300万再生「心が浄化されていく」「朝から癒やされました」
- 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
- 富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
- 2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに少々強引な寝かしつけをされると…… コントのようなオチに「爆笑!」「可愛すぎて無事昇天」
- 異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
- 【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
- 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
- 1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
- 業務スーパーで買ったアサリに豆乳を与えて育てたら…… 数日後の摩訶不思議な変化に「面白い」「ちゃんと豆乳を食べてた?」
- 祖母から継いだ築80年の古家で「謎の箱」を発見→開けてみると…… 驚きの中身に「うわー!スゴッ」「かなり高価だと思いますよ!」
- 「ゆるキャン△」のイメージビジュアルそのまま? 工事の看板イラストが登場キャラにしか見えない 工事担当者「狙いました」
- フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
- 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
- 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
- フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
- スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
- 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
- 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
- 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
- がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
- 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」