セガールは水戸黄門? 放送時間が拡大した「午後のロードショー」、その番組構成の工夫を聞いてみた
熱狂的なファンも多い番組です。
今年4月でめでたく20年目突入となり、「木曜日は“巨大生物”!!」「今月のセガール!!!」といった独自の特集で、話題と人気を集めるテレビ東京系「午後のロードショー」(午後ロー)。20年目となったのを記念し(?)、4月からは毎週月〜木曜に加え金曜日の放送も開始となり、現在、平日は毎日「午後ロー」の世界へ浸れることになっている。奇想天外なパニックムービーから時に良質なドラマ作品まで、その世界はいかに作られているのか。番組を手掛けるテレビ東京「午後のロードショー」プロデューサー・夏目健太郎さんに聞いた。
夏目さんが「午後ロー」担当になったのは2009年7月、間もなく就任6年となるが、最初は苦戦が続いたと振り返る。
「以前は海外ドラマをやっていて、BSジャパンの中国ドラマだったり韓流ドラマの購入と放送を担当していました。『午後のロードショー』では担当になった当初から色を出して、月・火・水あるいは月から木での特集っていうのを毎週作ってそれを2年近く続けたんです。そういうくくりを作れば、視聴者にイメージしてもらって映画自体に入りやすいかなと思って。それまで特集は月に1、2回だったのを毎週特集を組んでやったんですけど、ちょっと組み過ぎたのか(苦笑)、スペシャル感が出なくなったり、アピールや差別化という意味では機能しなかったみたいで。そこで方向を切り替え直して、今やってる曜日での特集(「木曜日は○○」など)を2012年の4月から始めました」(夏目)
14年10月以降の6カ月間を振り返っても、「10月の木曜日は“筋肉”!!」「11月の木曜日は“ランボー”!!」「12月の木曜日は“バッド・クリスマス!!”」「1月の木曜日は“オオカミ”!?」「2月の木曜日は“S・キング”!!」「3月の木曜日は“ワニ”!!」と、思わず食指が動く(チャンネルを合わせたくなる)魅惑の特集が並んでいる。はたしてこれらの特集はどのように考えられているのだろう。
「サメ特集だったりワニ特集っていうのは意図して集めましたけど、あとは購入できる作品のリストをジッと見て、何ができるか、どんなくくりができるかなって考えて作るのが半分ぐらいです。例えば『激突』(スピルバーグの初監督作)を使いたい、放送で盛り上げたいっていう形で、『激突』は追いかけ回される映画なので同じように追いかけ回される映画ってどれがあるだろうってリストをにらんで、その中から『“逃げろ”!!』(14年5月)っていう特集を発想したり。そうやって組んでいく特集が半数以上です」(夏目)
こうした特集の好評・好調さが、春から始まった金曜日の放送にも繋がった訳だが、過去には、「コマンドー」(13年8月)の放送がネットで盛り上がりを見せるなど、編成する側が意図していなかった現象も起きている。これに関し夏目さんは次のように言う。
「なんかスゴいですよね。よく分かっていない部分はあるんですけど、『(天空の城)ラピュタ』の言葉みたいな感じで、熱狂的なファンを中心にインターネットで同時進行で中継されて楽しまれてるよっていう話を聞いて、やっぱりそうやって映画の中でもカリスマを持った作品があるんだよなって思いました。今度6月にやる『マッド・マックス』もそうですし。でも、ファンから愛されて、映画として考えたらすごく幸せなことだし、担当としても胸が温かくなるような気持ちになりました」(夏目)
放送時間が会社や学校のある平日午後の1時35分からということもあり、最もターゲットとしているのは「男性の高齢者」。毎週の特集から曜日での特集へと切り替え、試行錯誤を繰り返す中でパニックものや巨大生物ものが好まれ、反対にコメディやドラマ系の作品は反響が少ないといった傾向も見えてきたという。そして気になっていた「今月のセガール!!!」として定期的に放送され、「午後ロー」イチオシであるスティーブン・セガールについても聞いてみた。
「セガール作品は前から結構やっていて、こちらもカリスマ性があるというか、強いし絶対負けない、ある意味『水戸黄門』なのかもしれないです。そういうところで人気はあったんですけど、多用し過ぎて数字が下降気味になった時がありまして。それでセガールを放送するのをちょっと様子を見た時期がありました。でも、その後で放送を再開したら、また視聴者が観てくれるようになって、これはあんまり特集でやるものじゃなく(笑)、月に1本ずつでいいんじゃないか、そうすれば嫌いな人でも何となく観てくれるし、ファンの人も毎月の楽しみにしてくれてエアチェックもしやすいかなって考えて、14年の1月から『今月のセガール!!!』を始めたんです」(夏目)
やたら作品名に「沈黙〜」が付いたり、何かとツッコミどころの多いセガールだが、そんなセガールを夏目さんは「ある意味“愛されキャラ”なんだと思います」と言う。完全無比ではないけれど、それがゆえに愛される。これは何だか、「午後ロー」にも通じて思われる。
「最近はテレビも規制が強まったり、世の中にも大らかさが無くなってきている気がしますが、映画は映画として、娯楽なのでリラックスして大らかに楽しんでほしいと担当としては思います」(夏目)
地上波映画放送の守り神である「午後ロー」に敬意を表しつつ、平日昼下がりはテレビ東京にチャンネルを合わせるべし!
(チナスキー)
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