宮司さん自作の獅子舞ロボット「からくりおみくじ」が舞う 京都・錦天満宮を直撃!

宮司さん設計のロボットが引いてくれるおみくじが京都の錦天満宮にある。その製作秘話を聞き、宮司さんの設計者魂に触れてきた。

» 2015年07月15日 14時38分 公開
[谷町邦子ねとらぼ]

 人が近づくとうねうねと踊り出し、お金を入れるとおみくじをくわえて運んでくれるロボットの獅子。そんな不思議なおみくじが、京都の錦天満宮にあるという。しかも、設計したのは宮司さん。「からくりおみくじ」の製作秘話を聞いてきた。

画像 からくりおみくじ1号

 錦天満宮があるのは、京都市中京区の新京極商店街。商店街の一角に「知恵・学問・厄除け・招福の神様 錦天満宮」という看板が掛けられ、多くの提灯が吊られている先にある。学業の神様「天神さん」こと菅原道真公を祭る平安時代に建てられた神社だ。

画像 朝からにぎわう新京極通り
画像 提灯がずらり

 境内に入ると天神の使いである「撫で牛(なでうし)」こと「臥牛(がぎゅう)」がてかてかと輝いていた。手水舎からは「京の名水 錦の水」が湧きでており、ペットボトルやポリタンクを持った人たちが水をくんでいる。

画像 穏やかな表情の臥牛
画像 京の名水 錦の水

 境内の奥へと足を進めると、拝殿のすぐ近くと、拝殿から向かって左に、ガラスケースに入った獅子舞のロボットが。「からくりおみくじ」と記されている。

画像 拝殿の近くにある「からくりおみくじ」1号
画像 拝殿の左にある「からくりおみくじ」2号。1号より小ぶり

 「からくりおみくじ」の獅子たちは雅楽に合わせて体を曲げたり、伸ばしたり、口を開け閉めしている。お金を入れると箱からおみくじをくわえて取り出し、受け取り口に入れてくれた。

 おみくじの周りには修学旅行らしき学生や、若い女性、カップルなどさまざまな人が集まっていた。ロボットの動きに驚き、声を上げる海外からの観光客も。

「からくりおみくじ」1号

 おみくじを引いた女性に聞いてみると、近くの錦市場に漬物を買いに来て、ふらりとこの神社に立ち寄ったという。「初めて見たから、あら、面白いな、と思いました」と笑顔で答えてくれた。

「からくりおみくじ」1号でおみくじを引く

元祖「からくりおみくじ」1号ができるまで

 「からくりおみくじ」の開発者は錦天満宮の宮司・大和正夫さん。宮司を継ぐ前は横浜の設計事務所にいて、荷物を積み揚げるロボットや、部品を組み立てるロボットなどを設計していた。「からくりおみくじ」は、設計事務所で働いていた15年以上前に作ったとのこと。

 「(設計の技術を生かして)神社の境内で何ができるかを考えた時、おみくじがいいのではないかと考えて作りました」(大和さん)

画像 からくりおみくじ図面

 製作には半年かかり、製作費も高かったという(実際の金額は秘密)。しかし、大変だと感じることがあったか尋ねると、「それはないです。面白かったです」と答えてくれた。 

 「からくりおみくじ」は人気で、完成当時は新聞が取材に来たそうだ。そして全国へと広がっていったという。「業者の人が私の作った『からくりおみくじ』を見ましてね。商売の展開をさせてくれないかと」

 その後、メーカーとの共同で「からくりおみくじ1号機」をもとにしたロボットが10台作られた。現在、他の神社でも活躍している。

画像 2号を横から見ると……

さらなるチャレンジ

 しかし大和さんの設計者魂はこれだけでは満足しなかった。

 「1号はあまりに金がかかるんで、正直なところよほど売れないとペイしないんですよ。だからもう一つ作ったんですよ、2号を」(大和さん)

 「からくりおみくじ」の動きの面白さは失わずに半分の値段で作れないかと、大和さんは2号の設計に取り掛かった。しかし、商業目的ではなかったという。

 「値段というのも大きな技術なんですよ。(製作費は下がっても)もともとの機能は失われてないよ、というのを目指したんですね」

からくりおみくじ2号

紙芝居もロボットで

 10年前、宮司であったお兄さんが亡くなり、急きょ神社を継ぐことになった大和さんは、40年働いた横浜を離れ京都に帰る。覚悟はあったものの抱えていた仕事を終えられないまま、辞めなければならなかったのは辛かったという。

 しかし宮司となった大和さんは錦天満宮の歴史に関心を持ち、調べていくうちに面白いと思うようになったそうだ。「神社の歴史を発信したい、それには紙芝居が面白いんじゃないか。そう思って紙芝居を作ったんです」

画像 紙芝居ロボット

 そこで4〜5年前に「紙芝居ロボット」を製作。ナレーションに合わせて、イラストをロボットが自動で切り替えていく。菅原道真の生涯や京都の歴史などを神社の由来を語り、上演時間は16分。しかし、「5分ほどで紙芝居の前から人がいなくなるんですよ」と大和さんは苦笑していた。

画像 横から見た紙芝居ロボット

「からくりおみくじ」以外にも見どころが

 錦天満宮では「からくりおみくじ」のほかにも見どころがある神社。鳥居の上部が両脇のビルに食い込んでるおもしろスポットでもある。どうしてこのような形になったのだろうか。

画像 ビルに食い込む鳥居

 一般的に鳥居は柱の部分から、上部の「笠木(かさぎ)」など地面と平行する部分が横に張り出している。錦天満宮の鳥居の柱は道の端と端に立っていて、上部が道幅よりも大きくなっている。一方、鳥居の両脇の建物も道ぎりぎりに建っている。建物が平屋だったころは何も問題がなかったのだが、戦後2階以上のビルになり現在のような状態になったという。しかし、そのせいで特に困ったことはないそうだ。

画像 柱も建物も道ギリギリ

不思議が集まり、人も集まる

 「からくりおみくじ」でおみくじを引く人、「錦の水」をくむ人、「撫で牛」をなでる人、末社に静かにお参りする人など境内にはさまざまな人がいた。お守りを買いに来る女性も多いという。そして、ビルに埋まった鳥居を写真に収める人も。

 それぞれの願望を持つ人々で、錦天満宮は朝からにぎわっていた。

画像 末社:光源氏のモデルとされる源融(みなもととおる)を祭る塩竈(しおがま)神社
画像 末社:商売繁盛の日之出稲荷(ひのでいなり)神社
画像 末社:子授けの白太夫(しらだゆう)神社
画像 末社:7柱の神様を祭る七社之宮(ななしゃのみや)
画像

谷町邦子

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2405/08/news009.jpg スーパーで買ったリンゴの種に“粉”を振りかけ育てると…… まさかの結果に「どうして!?」「すごーい!」「やってみます」
  2. /nl/articles/2405/07/news109.jpg 「ロッチ」中岡、顔にたっぷり肉を蓄えた激変ショットに驚きの声 「これ…ヤバいって」「すごい変身っぷり」
  3. /nl/articles/2405/08/news006.jpg 娘が抱える小型犬の目を疑うデカさに「サモエドかと思った…」「固定資産税かかりそう」 意外な正体がSNSで話題
  4. /nl/articles/2405/03/news025.jpg 「今までなんで使わなかったのか」 ワークマンの「アルミ帽子」が暑さ対策に最強だった 「めっちゃ涼しー」
  5. /nl/articles/2208/06/news075.jpg 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  6. /nl/articles/2405/08/news014.jpg 1歳弟の歩行練習に付き合う柴犬、アンパンマンカーに乗って…… 「待ってましたー!!」「もうプロ級ですね」“師匠”なたたずまいに爆笑の620万再生
  7. /nl/articles/2403/13/news017.jpg 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」
  8. /nl/articles/2405/07/news153.jpg 注意書きや警告に添えると……? 天才的発想の“一発逆転キーホルダー”が10万いいねの大反響 「やめーやww」「好きすぎる」
  9. /nl/articles/2405/08/news018.jpg 2歳兄、4カ月の妹の周りをおもちゃで埋め尽くしたあと…… 妹をとことん楽しませる行動に「優しいおにいちゃん」「癒されてほっこり」
  10. /nl/articles/2405/08/news107.jpg 「悲しくなった」「リスペクトがない」「嫌悪感」――楽器や画材を潰すiPadの紹介映像が物議
先週の総合アクセスTOP10
先月の総合アクセスTOP10
  1. 庭に植えて大後悔した“悪魔の木”を自称ポンコツ主婦が伐採したら…… 恐怖のラストに「ゾッとした」「驚愕すぎて笑っちゃいましたw」
  2. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  3. 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
  4. 「歩行も困難…言動もままならず」黒沢年雄、妻・街田リーヌの病状明かす 介護施設入所も「急激に壊れていく…」
  5. 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  6. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  7. 釣りに行こうとしたら、海岸に子猫が打ち上げられていて…… 保護後、予想だにしない展開に「神様降臨」「涙が止まりません」
  8. 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
  9. 築152年の古民家にある、ジャングル化した水路を掃除したら…… 現れた驚きの光景に「腰が抜けました」「ビックリ!」「先代の方々が」
  10. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評