小林製薬「アンメルツ」の語源は「あんまを詰める」? うわさを検証したら深い歴史背景があった

そう、私たちはまだ「アンメルツ」を知らなかったのだ……!

» 2015年09月18日 12時10分 公開
[黒木 貴啓ねとらぼ]
画像

 CMでもおなじみの、肩こりや筋肉痛に効用がある小林製薬の塗り薬「アンメルツ」。この製品名の由来が、「あんま(按摩)」をパッケージに「詰める」製品、「あんまつめる」から「アンメルツ」になった、とTwitterでうわさになっています。

 きっかけは、「『アンメルツ』ってそういう意味だったの」という一文を添えてTwitterに投稿された、1926年の広告イラスト。神戸精研堂医局の薬品「アンメルツ」を宣伝したもので、キャッチコピーに「あんまの瓶詰」の字が大きく掲げられています。効能はリウマチ・神経痛・肩こり・疲労痛と、現在の我々が知る小林製薬の「アンメルツ」に似ています。

 「あんま」とは当時国内で主流だった、身体をもんで血液の循環を良くする手技療法のこと。これを生業とする人も略して「あんま」「あんまさん」と呼ばれていました。その「あんま」をビンに「つめる」イメージで名付けられた「アンメルツ」という薬品が、小林製薬に渡って今の「アンメルツ」になったのでは――という見方がネットで広がっています。

画像

 さて、実際に「アンメルツ」は「あんま詰める」が由来なのでしょうか。

 小林製薬の広報部に聞いてみたところ、同社では戦前に「あんまの瓶詰」というキャッチコピーが付いた薬品「アンメルツ」を他社から譲り受け販売していたことがあるそう。薬品は、瓶に入った液体を付属の小さなハケで患部に塗るタイプ。資料がほぼ残っていないため、いつどこから受け継いだのかは不明です。

 Twitterで話題の広告を確認してもらったところ、小林製薬へ譲る前に元の会社が作った可能性があるとのこと。おおお、では、「アンメルツ」の由来は本当に「あんま詰める」だったのか!?

「その可能性は否定も肯定もできません。そもそも小林製薬が今現在販売している『アンメルツ』は、昔譲り受けた『アンメルツ』とは関係なく、弊社がゼロから新しく作った用法も成分もまったく異なる別物なんです」と広報担当者。

 なんと小林製薬には、昔に譲り受けてすでに終売した“旧アンメルツ”と、今CMなどでも見かける1967年に発売された“新アンメルツ”、2つのアンメルツが存在しているのだそうです。うわー、なんかややこしくなってきた!

 新「アンメルツ」誕生のきっかけは1960年前半。社員の男性が外用薬を貼ったまま女性とデートしたところ、年寄り臭いとフラレてしまう悲劇が起こってしまいます。そこで外から見ても使っているのがわからない、液体の外用消炎鎮痛剤を開発することに。当時の液体の外用薬は、ビンに入ったものを小さな筆を使って患部に塗るのが主流だったのですが、塗りながらビンを倒してこぼしやすいのが欠点でした。試行錯誤を重ねた結果、患部へ直接塗れる上に倒れても中身がこぼれないフタ「ラバーキャップ」を完成させ、今私たちが知る「アンメルツ」の形で発売したそうです。

画像 あのラバーキャップは試行錯誤の末に生まれたのだった

 このように塗り方がまったく違う上に、新「アンメルツ」は主成分にもサリメント、メントール、マレイン酸クロルフェルラミンを使うなど薬品の成分も完全に異なるのだそう。

 新薬にどうして「アンメルツ」と名付けたのかは、資料が残っていないため小林製薬でもわからないそう。ただし社内には、英語の「アンチ」(反対)とドイツ語の「メルツ」(痛み)を組み合わせて「アンメルツ」になったという説があり、これが一番有力だとされています。うーん、こちらも説得力がある。ただ、旧「アンメルツ」との関わりも完全に否定することはできないそうです。

 まとめるとこう。

  • 販売されている小林製薬「アンメルツ」の名前の真の由来はわからない。
  • 社内で一番有力な説は、英語「アンチ」とドイツ語「メルツ」を組み合わせたというもの。
  • ただし小林製薬では別の薬品「あんまの瓶詰 アンメルツ」を販売していた過去があり、現在の「アンメルツ」の名前がまったく関係ないとは断言できない。

 CMで聞き慣れすぎた商品名に、まさかここまで複雑な歴史背景が詰まっていたとは……これも50年近いロングセラー商品ゆえなのかもしれません。「あんま詰める」なのか「アンチ+メルツ」なのか。いずれにせよ「なんか効きそうなネーミング」ということで患部にぬりぬりしていきましょう。

黒木貴啓


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

先週の総合アクセスTOP10
  1. 釣りに行こうとしたら、海岸に子猫が打ち上げられていて…… 保護後、予想だにしない展開に「神様降臨」「涙が止まりません」
  2. 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
  3. しぶとい雑草“ドクダミ”を生やさない超簡単な方法が115万再生! 除草剤を使わない画期的な対策に「スゴイ発見」
  4. 天井裏から変な音がする→スマホを突っ込んで撮影したら…… 映った“とんでもねぇ”モノに「恐ろしい」「何これ」と騒然の196万表示!
  5. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  6. 誰も教えてくれなかった“裁縫の裏ワザ”が目からウロコ 200万再生のライフハックに「画期的」と称賛【海外】
  7. 「電車の中で見ちゃダメ」「笑ったww」 実家からLINE「子ヤギがすばしっこくて捕まらない」→送られてきた衝撃姿が320万表示!
  8. 顔の半分は童顔メイク、もう半分の仕上がりに驚がく 同一人物と思えない半顔メイクが860万再生「凄いねメイクの力」
  9. 元「AKB48」メンバー、整形に250万円の近影に驚きの声「整形しすぎてて原型なくなっててびびった」
  10. スーパーで買ったレモンの種が1年後…… まさかの結果が635万再生「さっそくやってみます」「すごーい!」「手品みたい」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 庭に植えて大後悔した“悪魔の木”を自称ポンコツ主婦が伐採したら…… 恐怖のラストに「ゾッとした」「驚愕すぎて笑っちゃいましたw」
  2. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  3. 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
  4. 「歩行も困難…言動もままならず」黒沢年雄、妻・街田リーヌの病状明かす 介護施設入所も「急激に壊れていく…」
  5. 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  6. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  7. 釣りに行こうとしたら、海岸に子猫が打ち上げられていて…… 保護後、予想だにしない展開に「神様降臨」「涙が止まりません」
  8. 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
  9. 築152年の古民家にある、ジャングル化した水路を掃除したら…… 現れた驚きの光景に「腰が抜けました」「ビックリ!」「先代の方々が」
  10. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評