「助けを求めて走る月」「夏は戦争シーズン」ってどゆこと!?  古代ギリシャの暦を現代風にアレンジしたカレンダーに妄想が止まらない司書メイドの同人誌レビューノート

今回は藤村シシンさんの「2016年古代ギリシャ暦カレンダー」をご紹介。

» 2015年11月29日 11時00分 公開
[シャッツキステねとらぼ]
シャッツキステ

 皆さまごきげんよう、秋葉原カルチャーカフェ「シャッツキステ」で司書メイドをしておりますミソノと申します。本連載は、オリジナル創作や評論ジャンルの同人誌を中心に、奥深い同人誌の世界をよりすぐってご紹介する場となっております。

 一般にはあまり出会う機会のない同人誌。アニメ・マンガのパロディーや、コスプレ写真集などさまざまなジャンルがありますが、中でも作者さんの気持ちがぎゅっと詰まったオリジナル作品の同人誌は、濃縮された魅力にあふれていると感じます。連載を通して、皆さまそれぞれがお気に入りの同人誌を見つけることができましたら幸いです。

司書メイド ミソノ 司書メイド ミソノ:秋葉原カルチャーカフェ「シャッツキステ」でメイドとしてお給仕する傍ら、とある大きな図書館で司書としても働く“司書メイド”。その一方で、こよなく同人誌を愛し、シャッツキステでも「はじめての同人誌づくり」「こだわりの特殊装丁」の展示イベントを開く。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えた辺りで数えるのをやめました」と語る

今回紹介する同人誌

「2016年古代ギリシャ暦カレンダー 第698オリンピア紀 第3年〜第4年」A5 32ページ 表紙・本文カラー

著者:藤村シシン、黒川巧



2016年古代ギリシャ暦カレンダー 第698オリンピア紀 第3年〜第4年 2016年古代ギリシャ暦カレンダー 第698オリンピア紀 第3年〜第4年

2016年古代ギリシャ暦カレンダー それぞれの月のデザイン

 そろそろ来年のカレンダーをどうしようかな、と考える時期ではありませんか? 「どこかに買いに行こうかな」とか、「冬コミですてきなカレンダーと出会えるかも……」などと考えている時、古代ギリシャの暦を現代日本の暦と重ね合わせた、この「古代ギリシャ暦カレンダー2016」に巡り会いました。

古代ギリシャの祭りの多様さに戦慄!

 ページを開くと、まず目に飛び込んでくるのは古代ギリシャ暦2016年カレンダーとは……という解説。なになに、古代ギリシャ神話にはたくさんの祭日があって、神話にまつわる行事とともに日々を過ごしていた……と。「このカレンダーは古代ギリシャの祭暦を当時の碑文、文献から書き起こし、現代暦の上に重ねたものです」とも書かれてあります。ふむふむ、なるほどと読み進めると、その後に驚きの一文が。

 

一年の三分の一は祭日です

 

 えーっ! 古代ギリシャの方々お祭り好き過ぎじゃないですかー!? どんなお祭りがあるのかしら、とページをめくってみると、1月の最初のお祭りは「脱穀祭」と書かれています(2016年の暦では1月4日〜6日に当たります)。添えられたコメントによると、「女性のみが集まって、卑猥な言葉を叫んだり、卑猥な形のケーキを焼くお祭り」なのだとか。……年の初めからテンション全開じゃないですか! こちらではまだ松も開けずに、おこたでほのぼのとお餅を食べているころだというのに……!

2016年古代ギリシャ暦カレンダー お祭りたくさん! さすが1年の3分の1は祭日というだけありますね(こちらは10月のカレンダーです)

 いやいや、落ち着きましょう。カレンダーによると、ギリシャ暦の新年はこちらで言うところの8月に当たるとのこと。冬の寒くて鬱屈とした季節を過ごすためにはこれくらいの高揚感でないとだめなのかもしませんね(いや、それにしても……)。

 気を取り直して、「ギリシャ暦で言うところの新年8月最初の行事は何かしら」とたどってみると、「カルネア祭」というお祭りが目にとまりました。「かつてアポロンの恋人・美少年カルネオスがスパルタ軍によってスパイの嫌疑をかけられ殺された。アポロンは激怒し、7日7晩軍に疫病をまき散らした。以来、アポロンの怒りをなだめるためこの1週間はあらゆる軍事行動(戦闘、遠征)を慎む。何人も軍を動かすことは許されない」とのこと。「ほほう……アポロンさんの怒りっぷりはともかく、争いごとなく平和に過ごすって、新年にふさわしい、いいお祭りではないですか!」と感心した私の目に、続きの一文が飛び込んできました。

 

 「人間あるいは動物を生け贄に捧げてカルネオスを悼む

 

 おおおおっとぉ! 一気に真夏の日差しに血潮が吹き飛ぶ濃い感じになってきましたよ! いや、実際はじりじりとした日差しの中で粛々と進む神事だったりするのかしら……。新年の始まりから、油断のならない感じです。古代ギリシャのお祭りって多様ですねぇ。

見たことのない祭りだからこそ、楽しい!

 このカレンダーは、現代のものがベースになっています。だから、日常の暮らしの中で「明日はギリシャでどんな祭りをする日だっけ?」と気になったときに把握しやすいんです。「いやいや、そんな把握しないし……」と思いました? でもいろいろと妄想がはかどったりするんですよ。

 例えば、新年度が始まってそろそろ1カ月がたちそうな4月後半。「週末が待ち遠しい、早く休みにならないかなぁ……」とカレンダーを見ると、なんと明日は「ムニキア祭」だなんてことも。ムニキア祭とは、海岸の守り手であるアルテミス神を供養し、少女たちがクマの格好をして踊りを捧げる日なんですって。私の脳裏では、可憐(かれん)な少女たちがもふもふしたクマの着ぐるみを着てきゃっきゃと輪になっている姿が浮かんできました。実際の姿はどんな感じか分かりませんが、分からないからこそ自由な妄想ができるのです! 明日は、クマの着ぐるみ少女たちがもふもふと踊る日……そう思うと、おおむねどんなことも耐えられそうな気がします。

研究家による豊富な知識が古代ギリシャへと誘う

 カレンダーはフルカラーで、広げるとA4サイズになります。壁に貼ったりするのにちょうどいいですね。神殿などをかたどったイラストが色遣いでデザインされているのですが、ギリシャっぽく、しかも日常の生活にまったく違和感なく溶け込むかっこよさ! それでいてこちらとは違う月の名前(例えば9月は「助けを求めて走る月」)だったり、夏は戦争シーズン、など、思わず目にした部分を読むだけで、ぐいぐい古代ギリシャの魅力に引き込まれていきます。

2016年古代ギリシャ暦カレンダー 見慣れない月の名前や祭りにも、ちょっとした説明が添えられていて興味をそそります

 作者の藤村シシンさんは、10月に「古代ギリシャのリアル」という書籍を出版された古代ギリシャ研究家。確かな知識に裏付けされたカレンダーで、来年はすてきな1年が過ごせそうです!

2016年古代ギリシャ暦カレンダー 古代ギリシャの入口が日常のお部屋の中に……!

サークル情報

サークル名:「月を奪う。」

Webサイト:http://www.style-21.jp/diary/sisinf/

同人誌入手先:BOOTHにて準備中(11月下旬販売開始予定)

Twitter:@s_i_s_i_n


今週のシャッツキステ

 図書館用品を扱うメーカーさんが開発されたグッズを見せたら、メイドたちの間でも大人気! レトロな図書委員バッジや、図書ラベルをかたどったマグネットなど、デザインもなんだかかわいらしくて楽しいです。読書の秋、ですね!

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

先週の総合アクセスTOP10
  1. 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
  2. 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  3. 安達祐実、成人した娘とのレアな2ショット披露 「ママには見えない!」「とても似ててびっくり」と驚きの声
  4. 兄が10歳下の妹に無償の愛を注ぎ続けて2年後…… ママも驚きの光景に「尊すぎてコメントが浮かばねぇ」「最高のにいに」
  5. “これが普通だと思っていた柴犬のお風呂の入れ方が特殊すぎた” 予想外の体勢に「今まで観てきた入浴法で1番かわいい」
  6. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  7. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評
  8. お花見でも大活躍する「2杯のドリンクを片手で持つ方法」 目からウロコの裏技に「えぇーーすごーーい」「やってみます!」
  9. 弟から出産祝いをもらったら…… 爆笑の悲劇に「めっちゃおもろ可愛いんだけどw」「笑いこらえるの無理でした」
  10. 3カ月の赤ちゃん、パパに“しーっ”とされた反応が「可愛いぁぁぁぁ」と200万再生 無邪気なお返事としぐさから幸せがあふれ出す
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」