異世界転生したのにチートさせてもらえない、「このすば」主人公・カズマさんに祝福あれねとらぼレビュー

いつもいつも「強くてニューゲーム」できると思ったら大間違いだ!

» 2016年02月20日 18時22分 公開
[多根清史ねとらぼ]

転生したのにチートさせてもらえない

 誰にも邪魔されずアニメを見るという行為。これこそが現代オタクに与えられた癒やしなのだ! ということで、今年1〜3月アニメのうち、「最高の癒やし」になっているのが「この素晴らしい世界に祝福を」(略して「このすば」)。



 原作は、小説投稿サイト「小説家になろう」に連載されていた作品を元にしたライトノベル。「なろう」の中でも「異世界転生もの」ジャンルがランキングを独占していて、「このすば」もその一つ。

 「異世界転生もの」と言えば、こちら側ではぱっとしない人生を送っていてゲームだけが取り柄だった主人公が、あちらでは「強くてニューゲーム」からスタート。時間やら課金やらつぎ込んだスキルや装備、マジックアイテムがそのまま使えて、中堅どころかトップクラスの強者も蹴散らして、たちまち伝説の勇者に。廃人ゲーマーと後ろ指刺されてきた過去は無駄じゃなかった、人生やり直しできなかったらリセットや……と、ままならぬ格差社会にあえぐ人たちを代表して「持てるもの」やリア充にやり返す。頑張れ、俺たちも順番が回ってきたらそっちに行くからな! ――というのがフツーの異世界転生もの。

 そんな夢を観ていた一人が、主人公のカズマ(佐藤和真)。車に轢かれそうになった少女を助けようとして……とは思い込みにすぎず、真相はトラクターに轢(ひ)かれかけてショック死。その女の子はカズマがよけいなことをしなければ、かすり傷どころか無傷だったと知らされる。きっつー。


画像 主人公のカズマさん。転生して異世界へ飛ばされるものの……(公式サイトより

 そんなカズマに向かって、ズバズバと上から見た非情な現実をつきつけるのは、性格悪すぎる女神アクア。「異世界に望むものを何か1つ持って行ける」と言われたカズマは、腹いせにアクアを“もの”と指名。願いは聞き届けられ、女神アクアを持ち物として異世界への道連れに……えっ持ち物?

 ルックスは美少女のアクアとバラ色のライフが始まる! こともなく、見知らぬ世界に無一文で投げ出され、現世よりも悲惨な生活にようこそ。RPGでお約束の装備をそろえるためのマネーも持たされず、家賃も払えないからタダで泊まれる馬小屋(「ウィザードリィ」ですな)が我が家。転生したのにチートさせてもらえない……



駄女神を養うために額に汗を流す

 連れてきたアクアは非の打ち所がない美しさに加え、全ての能力値が上限を人間をはるかに凌ぐハイスペック。ただし知力を除く


画像 カズマの道連れで異世界へ飛ばれさてしまう女神・アクア(公式サイトより

 最初っからMAXレベルに達してるので残念な知力は頭打ち、脳天気でがさつな性格のせいでトラブル量産メーカー。バイトで稼いだカネは飲み代につぎ込んで宵越しの金は持たねえ、酔っぱらいどもを喜ばしてる宴会芸スキルって冒険には役立ちませんよね。なにこの駄女神。

 異世界に転生したのに底を抜けてドン底に墜ちたカズマ。横に美少女が寝てるのに、こいつを食わせるために額に汗して労働を……と込み上げてきてまた寝なおす。ラブとかハニーとかおいしいところを通り越した古女房感。

 いいぞー、頑張れカズマさん! いつの間にかさん付けしているこの人徳。異世界転生フォーマットを大筋では守ってるのに、主人公がいるのは「こちら側」だ。



美少女がポンコツ過ぎてハーレムにならない

 ラノベ法にのっとって、タイプの違う美少女が次々と仲間になるハーレムものでもある。形式上は。

 莫大な魔力とそれをコントロールする技術を持っているアークウィザードのめぐみん(ロリキャラ)。ただし重度の中二病の上に爆裂魔法しか愛せず、1日1回ぶっ放したらぶっ倒れてカズマさんに運ばれる。


画像 スペックは高いのにやっぱりいろいろ残念なめぐみん(公式サイトより

 脳筋の駄女神アクアと使い捨てライターみたいなめぐみんが巨大カエルに粘液まみれにされ(ありがとうございました)仲間を募ったカズマのもとに近づいてきた、豊満な美女クルセイダーのダクネス。うん、RPGのパーティには攻撃を引き受ける盾になるタンク役は必須だ。

 え、スキルポイントを防御系に全振りですか。剣には振ってないので攻撃は敵に当たりませんか。物理と言葉攻めを問わず、責められるのが好きなドMには天職ですかそうですか。


画像 「防御全振り」なクルセイダーのダクネス(公式サイトより

 美形ばかりで上級職ばかりのパーティを引き連れ、世間の見る目が冷たいカズマさん。ダクネスの友人の盗賊(もちろん美少女)に窃盗のスキルを教えてもらい、持ち金を賭けて勝負してみれば圧勝。ただし手にしていたのはパンツ。カズマさんからクズマさんにレベルアップや!


画像 クズマさん誕生の瞬間である(公式サイトより

 伝説の剣を与えられて勇者プレイを満喫してるエリートにケンカを吹っかけられたら、不意打ちで瞬殺したあげく剣をマネーに換金し、“鬼畜”の称号もゲットするクズマさん。世間がなんと言おうが、あんたが幸せになりたいだけというのは俺たちがよく分かってるぜ……と目頭が熱くなる。



同スタッフの「これはゾンビですか?」も面白いよ!

 小説は文字で読者のペースで読めるメディア、対してアニメは映像と音が一方通行で流れていく受け身のメディア。原作の面白さとギャグの呼吸をテンポよくアニメ化しているスタッフは、金崎貴臣監督とシリーズ構成・上江洲誠氏の「これはゾンビですか?」コンビ。



 そう大作という作りでもなく「動かすところは動かす」メリハリをつけたアニメが、Amazon.co.jpのBlu-rayアニメ部門で上位に食い込んでいて、ああアニメファンも見るべきものが分かってるなって。「これはゾンビですか?」や、金崎監督の「東京レイブンズ」も超面白いのでぜひ。そしてクズマさんにも声援の祝福を!


多根清史


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2501/28/news195.jpg 岡田紗佳、一連の騒動を生中継で謝罪 頭を深く下げ「申し訳ございませんでした」
  2. /nl/articles/2501/28/news155.jpg がん闘病の森永卓郎、容態急変後にモルヒネ投与で“結構厳しい状況” スタジオ出られず弱々しい声で「そう長く持たないかもしれない」「本格的に転移が始まったよう」
  3. /nl/articles/2501/29/news045.jpg 新潟のお葬式で香典返しにもらった“謎の白い物体” パッケージにも情報なし「これなんだかわかりますか?」
  4. /nl/articles/2501/26/news053.jpg 「立体的に円柱を描きなさい」→中1の“斜め上の解答”に反響「この発想は天才」「先生の優しさも感じます」 投稿者に話を聞いた
  5. /nl/articles/2501/29/news086.jpg 鮮魚店で売れ残ったタコを水槽に入れたら、数週間後まさかの展開が…… 胸を打つ光景に「目が腫れるくらい泣いてます」
  6. /nl/articles/2501/28/news034.jpg 大人なら5秒で解きたい!「9+0÷2−3」の答えは?【算数クイズ】
  7. /nl/articles/2501/29/news058.jpg 「うちの祖父(81)わけてほしいわこのセンス……」 衝撃的な私服コーデに驚きの声「本物のイケジイ」「目標にします!!」
  8. /nl/articles/2501/29/news023.jpg 買ったばかりの家の風呂場に”ありえない欠陥” 信じられない状況に「そんなことある?」「取り付けた業者……」
  9. /nl/articles/2501/27/news073.jpg 「昔はモテた」と自慢げな父→娘は“絶対ウソやん”と思っていたけど…… 当時の姿に「ハハハ冗談だろ?」【海外】
  10. /nl/articles/2501/29/news122.jpg 正方形のスカーフ1枚→切ってゴムを縫い付けるだけで…… 魅力的な完成品に「デザインがきれい」「簡単に作れました」【海外】
先週の総合アクセスTOP10
  1. 風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
  2. DIYで室温が約10℃変わった「トイレの寒さ対策」が310万再生 コスパ最強のアイデアへ「天才!」「これすごくいい」
  3. 岡田紗佳、生配信での発言を謝罪 「とても不快」「暴言だと思う」「残念すぎ」と物議
  4. スーパーで買った半玉キャベツの芯を植え、5カ月育てたら…… 農家も驚く想像以上の結末が1300万再生「凄い」「感動した」
  5. 東京藝大卒業生が油性マジックでサンタを描いたら? 10分で完成したとんでもない力作に「脱帽です」「本当にすごい人」
  6. 定年退職の日、妻に感謝のライン → 返ってきた“言葉”が約200万表示 大反響から7カ月たった“現在の生活”を聞いた
  7. 【ヤフオク】“3万円”で購入した100枚の着物帯 →現役着付師が開封すると…… “まさかの中身”に驚き
  8. 「立体的に円柱を描きなさい」→中1の“斜め上の解答”に反響「この発想は天才」「先生の優しさも感じます」 投稿者に話を聞いた
  9. 「すんごい笑った」 “干支を覚えにくい原因”を視覚化したイラストが勢いありすぎで1700万表示の人気 「確かにリズム全然違う!」
  10. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. パパに抱っこされている娘→11年後…… 同じ場所&ポーズで撮影した“現在の姿”が「泣ける」「すてき」と反響
  3. 東京美容外科、“不適切投稿”した院長の「解任」を発表 「組織体制の強化に努めてまいる所存」
  4. ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
  5. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  6. イモトアヤコ、購入した“圧倒的人気車”が思わぬ勘違いを招く スーパーで「後ろから警備員さんが」
  7. 「何があった」 絵師が“大学4年間の成長過程”公開→たどり着いた“まさかの境地”に「ぶっ飛ばしてて草」
  8. フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
  9. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  10. 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」