外国人の要望から生まれた「チーズそば」(旧名「インターナショナルそば」)を食べてきた
斬新なメニューが続々登場
先日、日本橋を歩いていると、ある一軒の奇妙なそば屋を発見した。その名も「よもだそば」。
ちょうど昼時、店舗の入り口にサラリーマンが吸い込まれては吐き出されている。ちらりと中をのぞくと立ち食いスタイルのようだ。
店の中に入り、券売機にお金を入れ、メニューを確認する。すると、気になるメニューが目に飛び込んできた。
「チーズそば(370円)」。
単品メニューの一番入り口側の目立つ位置に、そして定番メニューの「わかめそば」よりも上に位置している……。名物なのだろうか?
さすがに「そばに、チーズはないわぁ〜」と思ったものの、味がどうしても気になる。「チーズそば」を堂々上位に君臨させている何らかの理由があるに違いないからだ。一般的に不人気メニューのボタン位置を券売機の上位にはもってこないだろう。よし、これも何かの縁だ!
出てきた食券を握りしめ、混み合う店の奥へと入っていく。食券を店員さんに手渡すと、「はいっ、チーズそばっ!」と威勢の良い声がこだまする。一体どんなそばが出てくるのか? ドキドキしながらほんの数分待つと、待望の「チーズそば」が登場した。
……本当にチーズが入っている! しかもたっぷり!
天かすも大量で、ほぼ一面を覆っている。こんなそばは初めてだ。果たして味はどうなのだろうか?
そばを持ち上げてみると、チーズがしっかりと絡んでいる。期待と不安を織り交ぜながら、ゆっくりと口に運ぶ。
……っ! うまい! チーズのコクとそばの味わいが全然ケンカしない。これは意外だ! しかもつゆがマイルドな味わいに変化して良い感じ。また、トロトロになった天かすの食感が、とろけたチーズと調和してうまさがプラスされている! それでも全体的には洋風というより、「そば」としてしっかりと成立した一品といった感じだった。なんとも不思議な感覚だ。
なぜ、この「チーズそば」が誕生したのだろうか。店員さんに聞いてみたところ、特別なことをしているわけではなく、かけそばにとろけるチーズをのせているだけだという。そしてこの斬新なアイデアは、外国人の要望から生まれ、以前は「インターナショナルそば」という名で販売していたようだ。それでも「そばにチーズを入れてほしい」と聞いたときは戸惑いがあったという。しかし実際に作って食べてみると、その絶妙な味わいに箸が止まらなかったそう。さらに“外国人が考え出したそば”という今までにない視点も気に入って、メニューに採用。常識にとらわれない柔軟な考え方があってこその逸品だったのだ。
筆者が話を聞いている最中も、どんどんお客さんが入ってきている。けれども「チーズそば」の注文はない様子。実際のところ、日本人からの評判を訪ねてみると、女性からの支持が熱いと教えてくれた。
さらに話を聞いてみると、「チーズそば」の成功により「スクランブルエッグそば」や「エビチリそば」というメニューが「インターナショナルそば」として販売されていたという。名前を聞いても、味の想像ができないところがそそられるのだが、全てのメニューが日本人にも好まれるわけではなかったようで、現在は「インターナショナルそば」自体がお休み中だ。
今は「週替わりそば」というメニューで、毎週新しいメニューが登場しているそう。そこでは、外国人だけでなく日本人でも良いアイデアがあれば、メニューに採用されるとのこと。
この日は、チーズそばにしか注目できなかったが、後日調べてみると「よもだそば」の魅力はこれだけではなかった。天ぷらなどに使用する具材は、無農薬・無化学肥料栽培で野菜を育てている東北牧場から直送するこだわり。フキノトウやタラの芽、山ウド、よもぎなど、普通の店ではなかなかお目にかかれない季節の食材を楽しむことができるのだ。
また、食材へのこだわりをもちながら価格を値上げしない努力も行っている。だからこそ、一日に700〜800杯という驚異的な数をさばく人気店となっているのだろう。さらに現在、新しい取り組みとして、ラーメンの麺を日本そばのおつゆで楽しむ「ラそば」が始まっているとのこと。これからも、どんなそばが「よもだそば」から飛び出してくるのか、ますます目が離せない。
(伊佐治龍/LOCOMO&COMO)
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ロースト葱の冷たーい油そば。
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