「江戸川橋駅」はなぜ江戸川区にないのか? 地図から読み解く地理ミステリー「ジグソークーソー」の面白さ
「虚構新聞・社主UKのウソだと思って読んでみろ!」第72回は、ちょっと変わった“地図”ミステリー「ジグソークーソー 空想地図研究会」を紹介します。
ねとらぼ読者のみなさん、こんにちは。虚構新聞の社主UKです。
さていきなりですが、ここでクイズ。
「江戸川駅があるのは東京都江戸川区。では、江戸川橋駅があるのは何区?」
答えは文京区です。江戸川が流れる江戸川区に江戸川駅があるのはよいとして、どうして江戸川が流れていない文京区に江戸川橋駅があるのか?
さて、今回紹介するマンガは、そんな地理にまつわるミステリーを地図を読み解きながら解明していく、高舛(たかます)ナヲキ先生の「ジグソークーソー 空想地図研究会」(〜1巻、以下続刊)。幻冬舎コミックスのWebサイト「デンシバーズ」にて連載中です。
地図を見れば昔の海岸線が分かる
本作の主役は、頭脳明晰だけど怒りっぽい高校1年生・杜子(とし)ダイチと、同じく1年で地図が大好き、元気のかたまりのような巨乳女子・塔元チリエ。
首席で入学し、サークル新設の権限を持つ1年生筆頭になったダイチですが、完璧主義の性格といつも眉間にしわを寄せる怒りっぽさから、持ち込まれた新設申請書に片っ端から不許可、不許可、不許可、不許可……。結局1件も許可を出さなかったその日、締め切り時刻を遅れて申請にやってきたのがチリエでした。
彼女が抱える大きな筒の中に入っていたのは、江戸川区の都市地図。
「今時紙の地図なんか何に…」
そう言って、ポスターよりずっと大きな地図をしげしげと眺めるダイチに目ざとく気付いたチリエは、江戸川区最南端の埋め立て地・葛西臨海公園を指しながら、ダイチに尋ねます。
「埋め立て前の旧海岸線がどこだったか分かりますか?」
即座にググろうとして、「いきなりネットに頼っちゃうんですか〜?」と煽られるダイチ。「検索かけてもなかなか出てきませんよ〜?」「それに調べなきゃ分からないことは質問しませんよ〜?」となかなか煽りスキルの高いチリエの言葉に、負けず嫌いの彼は地図を眺め、こんな答えを出しました。
結論から言うと、これは正解。けれど、なぜ紙の地図を見ただけで、昔の海岸線が分かってしまうのか? 地図をじっくり眺めた末にダイチが挙げた「3つの根拠」は、実際に作品で確かめてもらうとして(収録の第1話は試し読みもできます)、そのどれもが「なるほど! 地図ってそうやって読んじゃうのか!」と、膝を16連打せずにはいられませんでした。確かにこの分かる快感は、ミステリーが解けたときと同じだ。
地図を「読む」のではなく「読み解く」。今までグーグル殿がお示しになった経路以外は、ただの模様でしかなかったあの道この道、あの川この川、あの線路もこの線路も、全てちゃんとそこにあるだけの理由と歴史があるのです。これって当たり前と言えば当たり前かもしれないけれど、どうやって読み解くかを知るだけで目の前の地図が全く別のものに変わって映る。学校でも地図記号や縮尺みたいな地図の読み方だけでなく、こういう読み解き方も教えるべきじゃないかと思わずにいられませんでした。
地図を読み解く「地理ミステリー」の面白さ
さて、葛西臨海公園のお話は、あくまで本作のチュートリアルみたいなもので、ここからが本題。チリエが申請したサークル「空想地図研究会」の活動許可と引き換えに、ダイチが出した条件は、彼が幼い頃に見た記憶の場所を探し当てること。その記憶に残っているのはこの4つ。
- 江戸川区
- 神社の境内
- お年寄りの多い病院
- 近くに橋
これだけ手掛かりがあれば割とサクサク見つけられそうな気もしますが、江戸川区内に橋は29本、その上埋め立てや道路工事、新築改築が日々繰り返される東京において、なかなかその場所をピンポイントで探し当てるのは至難の業。果たしてダイチとチリエは地図から、記憶の場所を探し当てることができるのか……!?
というわけで、地図を読み解く「地理ミステリー」としての本作「ジグソークーソー」。地図上の謎解きだけでなく、そもそもチリエが作ろうとしている「空想地図研究会」とは何か、そして普段は明るく活発な彼女の素性にもどうやら秘密がある様子。犯人と犯罪のトリックを暴き出すミステリーとはまたひと味違う謎解きの快感が味わえるのでぜひ読んでみてください。
最後に冒頭のクイズ、江戸川のない文京区に江戸川橋駅がある驚くべき理由ですが、残念なことに、その答えをここに記すには余白が狭すぎるので、これまたどうぞ作品でお確かめくださいませ。
今回も最後までお読みくださりありがとうございました。
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