ゴルスタ個人情報流出問題 被害者には当初謝罪メール1通だけ 炎上招いた「暴圧」運営の高すぎる代償

ゴルスタに個人情報を晒(さら)された“あると”さんや、複数のゴルスタユーザーから話を聞きました。

» 2016年09月10日 16時10分 公開
[ねとらぼ]

 Twitterにユーザーの個人情報を故意に書き込んだことがきっかけで炎上し、サービス終了が発表された(関連記事)中高生向けSNSアプリ「ゴルスタ」ですが、個人情報を晒された“あると”さん本人に対しては当初、謝罪のメールが1通届いたのみで、対面での謝罪や、保護者への報告なども行われていなかったことが分かりました。あるとさんは編集部の取材に対し、「親には電話やメールすらなかったです」「(ゴルスタ側の対応には)満足していないです」と語りました。


ゴルスタ運営の実態 当初ゴルスタ運営からあるとさんに送られていたという謝罪メール(あるとさん提供)

 ゴルスタの問題行為が話題になったのは8月24日の深夜。公式Twitterアカウントの1つ「@micoochan(現在はアカウント削除済み)」が、Twitterで突然「ゴルスタの元ユーザーの『×××(あるとさんの本名と都道府県)』が業務妨害の電話を配信してるためこれより警察に通報します」と、あるとさんの個人情報を暴露。ツイートはすぐに消されましたが、公式アカウントとは思えない軽率な行動に、Twitterでは批判が集中し、大炎上に発展していました。


ゴルスタ運営の実態 問題となった書き込み(画像はあるとさん提供、名前と都道府県部分は加工済み)

 ゴルスタを運営するスプリックスはその後、炎上からちょうど1週間後の8月31日に公式サイトで謝罪文を発表(関連記事)。その中で、あるとさんに対しては「既に当該1名のユーザーさまに対する謝罪(略)は実施いたしました」「当該1名のユーザーさまとは関係を保ち、お気持ちのケアなどできる限りの対応を誠意をもって行って参る所存です」などと説明していました。

 しかし、あるとさんによると、この時点でスプリックスからは謝罪メールが1通届いていたのみで、保護者への報告・連絡などもなかったとのこと。その後あるとさんがTwitterに「大人の世界では、個人情報暴露してもメールで謝罪したら許されるのか」など不満を投稿すると、書き込みを見たスプリックス社員が翌日(9月1日)、ようやく慌てて自宅へ謝罪に訪れたそうです。

 ただ、あるとさんの保護者によると「アポ無しでしかも夜いきなりの訪問だったため、こちらとしては大変困るものでした」「謝罪に来たのも、書き込んだ担当者でもなければ、上司でもないただの1社員で、今後の対応を聞いても何も答えられず、とても納得のいく内容ではなかったため帰っていただきました」とのこと。




 そもそもなぜ今回ゴルスタはここまでの大炎上に発展してしまったのか。ネット上では「運営を批判しただけでBAN(アカウント停止)される」「復帰を望むユーザーに反省文を書かせる」「些細(ささい)なことで通報をちらつかせる」など、以前から“運営方針が厳し過ぎる”といった指摘が多数あがっていましたが、あるとさんや他のユーザーから情報を提供いただく中で、炎上に至った経緯が少しずつ浮かび上がってきました。



暴圧運営が産んだ「BAN連鎖」

 まず、運営とユーザーの対立がなぜここまで深まってしまったのか。これについてあるとさんは「潰し屋」が1つの原因だったのではないかと推測しています。

 「潰し屋」というのは、別のユーザーを根拠なく運営に通報し、BANさせていた一部の迷惑ユーザー集団のこと。これにより、何も規約に違反していないにもかかわらずBANされるユーザーが続出し、やがてBANされた人の周辺で「運営側も証拠なしにBANするのはおかしい」といった運営不信が芽生えていきます。

 すると、今度はそうした運営への不信を口にしたユーザーが次々とBANされはじめます。疑問に思ったユーザーが問い合わせても、運営側の返答は「あなたはいったい何を言ってるんですか?」「なぜ第三者に証拠を見せる必要がありますか?」などけんもほろろな状態。こうして「不満を口にしたユーザーがBANされる」→「それはおかしい、と周囲のユーザーが運営を批判」→「批判したユーザーもBANされる」という“BANスパイラル”がどんどん大きくなっていき、最終的に今のような運営とユーザーの対立が生まれたのではないか、とあるとさんは推測しています。実際、あるとさんがBANされたのも、周囲のユーザーがBANされたのを受け、運営を批判するツイートをTwitterに書き込んだのがきっかけでした。


ゴルスタ運営の実態ゴルスタ運営の実態 チャットから次々退出させられている画像(画像は読者提供、モザイク加工は編集部によるもの)

ゴルスタ運営の実態 BANの理由について問い合わせるも「あなたはいったい何を言ってるんですか?」「なぜ第三者に証拠を見せる必要がありますか?」と一切取り合わず(「みこちゃん」と名乗っているのが運営アカウント)(画像は読者提供)



 また、他にも「ゴールスターズ(ゴルスタ発のアイドルグループ)のメンバー脱退がきっかけだった」など複数の情報提供があり、実際はいくつかの要因が絡み合って運営批判に結びついていったとも考えられます。しかしいずれにしても、問答無用でユーザーをBANし、さらにそれに対する不満や疑問を口にしただけでもBANする――という運営側の安易な行動が、必要以上に問題を大きくしてしまったことは間違いなさそうです。



Twitterやツイキャスまで徹底的に監視

 あるとさんがTwitterの書き込みをきっかけにBANされたことからも分かる通り、ゴルスタ運営は、マークした一部のユーザーに対しては、ゴルスタ内だけでなく、Twitterやツイキャスなど、アプリ外での行動も厳しく監視していました。ひどいケースになると、あるとさんのツイキャス配信にあいさつのコメントを書き込んだだけでもBANされる人が続出したとのこと。ゴルスタ側は謝罪文の中で、こうした厳し過ぎる運営姿勢について「ユーザーである『中高生の安心安全が最優先』であるとの運営方針ゆえのもの」と説明していますが、果たしてアプリ外での言動まで監視するのが、本当に妥当だったのかどうかはかなり疑問です。

 結局、この「ツイキャスにあいさつを書き込んだだけでBANされる人が続出した」という出来事がきっかけとなり、あるとさんは運営側に電話で問い合わせ、その様子をツイキャスで配信しようとします(実際に電話したのは、グループで配信していたもう1人のユーザー)。これが運営側の逆鱗に触れ、あるとさんの個人情報をTwitterで晒した――というのが今回の経緯です。



 ちなみにこのときのツイキャスは今も録画が残っており、あるとさんたちがスプリックスに電話をかける様子や、個人情報を書き込まれたのに気付き「いや、待って、やば」「おれ個人情報晒されたんやけど」と驚く様子などが確認できます。運営側は当初Twitterであるとさんの行為について「業務妨害の電話を配信しているため警察に通報する」と書いていましたが、録画を見るかぎり、あるとさんたちはあくまで「なぜ自分のツイキャスにあいさつを書き込んだだけでBANされるのか」という点に対し真面目に質問しようとしただけで、ふざけて運営に電話しようとしているような様子は見受けられませんでした。


ゴルスタ運営の実態 コメント欄でも「あるとやばい」「フルネームで晒されとる」など混乱が広がりました


担当者個人ではなく、スプリックス自体に問題か

 結局スプリックスはその後、ゴルスタのサービスを終了することを発表。一連の炎上については、担当者1人を再教育すれば済む問題ではなく「ゴルスタ運営部門、ひいては弊社全体の問題であると重く受け止めております」とコメントしました。

 実際、スプリックスが経営する「森塾」で働いていたという元社員に取材したところ(関連記事)、スプリックス社内では以前から、不祥事を起こした元社員の名前をさらす「みせしめ」行為をはじめ、従業員に対する監視や言論統制も恒常的に行われていたことが分かっています。元社員は「ゴルスタの運営で問題になっていることは、社内でやっていることを一般ユーザーに向けてやってしまっただけ」と今回の炎上を分析します。

 最終的には「サービス終了」という最悪の形で終わりを迎えたゴルスタの炎上ですが、少なくともユーザー側の意見を真摯に聞き入れ、正面からきちんと対応できていればここまで大きな問題に発展することはなかったはずです。批判を浴びた「暴圧」運営でしたが、その代償はあまりにも大きなものでした。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2412/29/news100.jpg 大谷翔平、妻・真美子さん妊娠公表→エコー写真に“まさかの勘違い” 「デコピン妊娠?」「どう見てもデコピンで草」
  2. /nl/articles/2412/29/news101.jpg チェジュ航空社長、日本語で謝罪 犠牲者は170人以上との報道 公式サイトは通常のオレンジからブラックに
  3. /nl/articles/2412/30/news070.jpg 大谷翔平の妻・真美子さん妊娠→現役時代に語っていた「将来の夢」に感動の声 「なんか泣けてくる」
  4. /nl/articles/2412/29/news005.jpg 母「昔は数十人もの男性の誘いを断った」→娘は信じられなかったが…… 当時の“想像を超える姿”が2800万再生「これは驚いた」【海外】
  5. /nl/articles/2412/29/news075.jpg 「スマホ入荷しました」 ハードオフ店舗がお知らせ→まさかの正体に大横転 「草しか生えない」
  6. /nl/articles/2412/30/news071.jpg 子どもがお店で“高額おもちゃ”を欲しがる→通りすがりの“五輪選手がまさかの理由”でプレゼント 「すごすぎる話」「今年一番感動」
  7. /nl/articles/2412/29/news098.jpg 大谷翔平と妻・真美子さん“家族ショット”に210万いいね 「素敵な1枚」「幸せな家族写真!」【“大谷家”の新たな一歩】
  8. /nl/articles/2412/29/news013.jpg 毛糸で“お花をぷくぷく”編んでいくと…… 思わず笑顔になるアイテム完成に「なんて美しい」「母に編んであげよう」
  9. /nl/articles/1611/04/news117.jpg 「ヒルナンデス!」で道を教えてくれた男性が「丁(てい)字路」と発言 出演者が笑う一幕にネットで批判続出
  10. /nl/articles/2412/30/news039.jpg ヤクルトが“投げ売り状態”かと思ったら…… 「大勘違い」引き起こしかねない光景に「さすがに飲めない」
先週の総合アクセスTOP10
  1. ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
  2. 新1000円札を300枚両替→よく見たら…… 激レアな“不良品”に驚がく 「初めて見た」「こんなのあるんだ」
  3. 家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
  4. 「庶民的すぎる」「明日買おう」 大谷翔平の妻・真美子さんが客席で食べていた? 「のど飴」が話題に【大谷翔平激動の2024年 「お菓子」にも注目集まる】
  5. 100均のファスナーに直接毛糸を編み入れたら…… 完成した“かわいすぎる便利アイテム”に「初心者でもできました!」「娘のために作ってみます」
  6. “プラスチックのスプーン”を切ってどんどんつなげていくと…… 完成した“まさかのもの”が「傑作」と200万再生【海外】
  7. 「バグってる」 シャトレーゼの“864円で買える”「1人用クリスマスケーキ」に大絶賛の声 「企業努力すごい」
  8. 「昔モテた」と言い張るパパ→信じていない娘だったが…… 当時の“驚きの姿”が2900万再生「おおっ!」「マジかよ」【海外】
  9. トイレットペーパーの芯を毛糸でぐるっと埋めていくと…… 冬に大活躍しそうなアイテムが完成「編んでるのかと思いきや」【海外】
  10. “月収4桁万円の社長夫人”ママモデル、月々の住宅ローン支払額が「収入えぐ」と驚異的! “2億円豪邸”のルームツアーに驚きの声も「凄いしか言えない」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
  2. 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
  3. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  4. アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
  7. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  8. 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」