iPhoneの「総務省指定」はなぜAndroid端末に刻印されないのか arrowsとXperia担当者に聞いてみた

先に話題になった、iPhone 7に刻印されている「総務省指定 MIC/KS」の文字――どうして他社のFeliCa対応機種にはないのか調べてみた。

» 2016年09月30日 22時03分 公開
[黒木 貴啓ねとらぼ]

 先日「iPhone 7/7 Plus」が発売されるや、製品の背面に「総務省指定」の文字が刻印されていることが賛否両論を呼びました(関連記事)。これは同端末が国内向けの非接触ICカード技術「FeliCa」に対応したため、電波法に従い表記が必要になったと見られています。しかし一方で、なぜAndroidのFeliCa対応端末には「総務省指定」の文字がないのか疑問の声もあがっていました。

 「arrows」シリーズを開発販売する富士通、「Xperia」シリーズのソニーモバイルコミュニケーションズへ取材したところ、両シリーズのFeliCa対応機種はいずれも、電界強度が電波法の基準値以下になるよう設計しているため、総務大臣からの指定がいらなくなっているそうです。以下、詳しく見ていきます。

Android総務省指定Android総務省指定 「iPhone 7 Plus」ゴールドに刻印された「総務省指定 MIC/KS」の文字

なぜiPhone 7には「総務省指定」の文字が?

 総務大臣は先日の記者会見で、iPhone 7に「総務省指定」が刻印されているのは、SuicaなどのICカードの情報を読み書きする機能をもつため、電波法に従って表記する必要があったと説明しました(関連記事)。

 Appleは10月から日本で「Apple Pay」をスタートするのにあわせ、Suicaをはじめ国内のあらゆる電子決済に利用できるFeliCaを、iPhone 7に採用しています。そのためFelicaのリーダ・ライタも端末に搭載したと考えられるのですが、こちらは電波法において「誘導式読み書き通信設備」に該当します。

 誘導式読み書き通信設備は、設備から3mの距離における電界強度が500μv/m以上だと、総務大臣から個別に許可を取る、または「型式指定」を受けなければ使えないよう、電波法と電波法施行規則で定められています。iPhone 7は後者の「型式指定」を受けたため、製品に「総務省指定 MIC/KS」を表記しているようです。

Felica対応端末でも「電界強度」次第

 しかしAndroid端末――例えば「arrows」シリーズや「Xperia」シリーズのFelica対応機種は、FelicaのICチップとリーダ・ライタを内蔵しながらも、総務大臣からの指定を受けていません。

Android総務省指定Android総務省指定 富士通「arrows」シリーズとソニーモバイルコミュニケーションズ「Xperia」シリーズ

 富士通はしかるべき機関が実施している微弱証明試験を受け、電界強度が基準値以下の「微弱無線設備」になるよう設計しているそう。ソニーモバイルコミュニケーションズもXperiaのFeliCa対応機種について、「高周波利用設備の電界強度は個別の許可を不要とされる範囲に収まっている」と回答しました。

 2社とも誘導式読み書き通信設備を搭載しながらも、電界強度が基準を下回る範囲で――つまり設備が発する電波が弱くなるよう設計しているため、表記どころか総務大臣の許可すらいらないのです。

 ではiPhoneも同様に電界強度を基準値以下に収めることはできなかったのでしょうか? Apple PayでSuicaを使うには、SuicaをiPhoneにかざしてチップの情報を読み込ませなければならないという、おサイフケータイにはないシステムがあります。これが強い電波を要するのではという推測がネットにはあがっていました。これらを含めApple Japan社に質問しましたが、「弊社から回答申し上げておりません」と回答をすべて控えられました。無念。

Android総務省指定 Apple Payの仕組み(Apple Pay公式ページより

 ちなみに「総務省指定」の表記は、iPhoneでも次世代あたりで背面から消えるかもしれません。もともとiPhone6までさまざまな認証表示が刻印されていましたが、iPhone 7ではすっかり消え、端末内の電子表示に切り替えられています。じゃあ「総務省指定」もと行きたいところですが、現行法でこちらは電子表示できない制度になっているのです。

Android総務省指定 iPhone 6sとiPhone 7 Plus

Android総務省指定 さまざまな認証表示が消えた

Android総務省指定 代わりに電子表示されるように(iPhone 7内の「認証」画面)。「総務省指定 MIC/KS」もあります

 しかし今年7月に行われた電波政策2020懇談会で有識者から提言があり、現在総務省が「総務省指定」の電子表示の導入を検討しています。もし成立するとiPhoneの刻印は電子表示に切り替えられるでしょう。

 「ダサい」と否定の声もあがる一方、「逆にかっこいいと思うんだけどなぁ」など一部にはウケていた、「総務省指定」入りiPhone。発売から2週間が経って気にしている人はほとんどいないでしょうが、ひょっとすると数年後には希少価値が上がっている、かも?

黒木貴啓


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2501/31/news019.jpg “部屋が汚すぎて”彼氏に振られた女性→1人孤独に片付けを続け、600日後…… まさかの光景に「感動しました」
  2. /nl/articles/2501/29/news009.jpg 高校生のときに出会った“同級生カップル”→「親に頼らん!」と必死に貯金して…… 19年後、現在の姿に反響
  3. /nl/articles/2502/01/news088.jpg 「痩せた」 大谷翔平、“最新ショット”に驚きの声 “寝ぐせ”にツッコミも……「うわ凄い絞ってる」
  4. /nl/articles/2501/28/news188.jpg 「やられたな」 ベトナムで「FUJITSU」だと思って購入した家電→“衝撃の正体”に思わず戦慄
  5. /nl/articles/2502/01/news039.jpg 生え際後退で老けて見える25歳男性、プロが大胆カットしたら…… 「不可能を可能にした」「35歳から15歳に」大変身が740万再生【海外】
  6. /nl/articles/2501/30/news026.jpg 普通の折り紙1枚を、パタパタ折っていくと…… プレゼントにぴったりな美しいアイテム完成に「すげぇつくりたい」「かわいい」
  7. /nl/articles/2501/31/news041.jpg 水道検針員から直筆の手紙、確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生→大反響から1年たった“現在の様子”を聞いた
  8. /nl/articles/2502/01/news008.jpg 【ハギレ活用】「もう最高……」 着物のハギレをリメイク→わずか30分で“すてきなアイテム”が完成! 「私にもできそう」
  9. /nl/articles/2502/01/news047.jpg 【編み物】彼氏のために、緑と黄緑の毛糸を正方形に編んでつなげると…… 圧巻のおしゃれな大作完成に「息をのむほどすばらしいよ」
  10. /nl/articles/2501/31/news215.jpg 「こういうの大好き」 ユニクロ“3990円パジャマ”が発売前から話題騒然 「最高」「シンプルで良い」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
  2. DIYで室温が約10℃変わった「トイレの寒さ対策」が310万再生 コスパ最強のアイデアへ「天才!」「これすごくいい」
  3. 岡田紗佳、生配信での発言を謝罪 「とても不快」「暴言だと思う」「残念すぎ」と物議
  4. スーパーで買った半玉キャベツの芯を植え、5カ月育てたら…… 農家も驚く想像以上の結末が1300万再生「凄い」「感動した」
  5. 東京藝大卒業生が油性マジックでサンタを描いたら? 10分で完成したとんでもない力作に「脱帽です」「本当にすごい人」
  6. 定年退職の日、妻に感謝のライン → 返ってきた“言葉”が約200万表示 大反響から7カ月たった“現在の生活”を聞いた
  7. 【ヤフオク】“3万円”で購入した100枚の着物帯 →現役着付師が開封すると…… “まさかの中身”に驚き
  8. 「立体的に円柱を描きなさい」→中1の“斜め上の解答”に反響「この発想は天才」「先生の優しさも感じます」 投稿者に話を聞いた
  9. 「すんごい笑った」 “干支を覚えにくい原因”を視覚化したイラストが勢いありすぎで1700万表示の人気 「確かにリズム全然違う!」
  10. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
先月の総合アクセスTOP10
  1. ドブで捕獲したザリガニを“清らかな天然水”で2週間育てたら…… 「こりゃすごい」興味深い結末が195万再生「初めて見た」
  2. 「配慮が足りない」 映画の入場特典で「おみくじ」配布→“大凶”も…… 指摘受け配給元謝罪「深くお詫び」
  3. 母「昔は何十人もの男性の誘いを断った」→娘は疑っていたが…… 当時の“モテ必至の姿”が1170万再生「なんてこった!」【海外】
  4. 風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
  5. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  6. 市役所で手続き中、急に笑い出した職員→何かと思って横を見たら…… 衝撃の光景が340万表示 飼い主にその後を聞いた
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. DIYで室温が約10℃変わった「トイレの寒さ対策」が310万再生 コスパ最強のアイデアへ「天才!」「これすごくいい」
  9. 「こんなおばあちゃん憧れ」 80代女性が1週間分の晩ご飯を作り置き “まねしたくなるレシピ”に感嘆「同じものを繰り返していたので助かる」
  10. 岡田紗佳、生配信での発言を謝罪 「とても不快」「暴言だと思う」「残念すぎ」と物議