有料スケブやイラストカードが普及 ドイツの絵師事情をベルリンのアニメファンイベントで探ってきた(1/2 ページ)
カカオ・カルテ? 有料スケブ? 日本とはちょっと違うドイツのイラストレーターの活動とは?
日本のコミケなどのファンイベントでは、同人誌が描き手同士またはファンとの主たる交流手段になっていると思います。ドイツにも同人誌は存在しますが、日本では見かけないカルチャーも存在するようです。今回はイラストレーターの交流の模様にフォーカスするべく、ドイツ・ベルリンで10月末に開催されたアニメファンイベント「AniMaCo(アニマコ)」のイラストレーターコーナーを中心にリポートします。
アニマコはアニメ・漫画ファン向けのイベントで、会場となる文化施設全体を貸し切り、ステージパフォーマンスを催し、会議室を使ってのワークショップやイラストレーターブース、グッズの販売業者のエリアなどを設けます。12年前にスタートし、隔年で開催。来場者は年々増え続け今では1万人を超え、日本が主導する「国際オタクイベント協会(IOEA)」にも加盟しています。
有料スケブ「コンホン」
さっそくイラストレーターのエリアへ。アニマコのイラストレーターのブースはおよそ30。販売されているものは、同人誌やポストカードやキーホルダーなどさまざま。しかし、各ブースをじっくり見ていくと、日本では見慣れない表記を何度も目にすることに気づきます。それは「ConHon(コンホン)」と「Kakao(カカオ)」です。
これらが何なのか、会場のイラストレーターの皆さんに聞いてみました。
まずは、コンホンから。コンホンはいわゆるスケブ(スケッチブック)です。ブースのイラストレーターが来場者の持参したノートにイラストを描くというものですが、面白いのはそのネーミング。コンホンはコンベンションの「コン」と日本語の本(ホン)とを組み合わせた造語だそうです。サイズはスケッチブックというよりはB5やA6サイズのノートが主流だとのこと。コンホンへのイラストの提供はどこも有料になっていました(日本だとスケブは無料ですよね)。
1件あたりの料金は5ユーロ(約600円)から20ユーロ(約2400円)程度。価格はイラストがカラーか白黒か、鉛筆書きのみなのか、または上半身だけなのか全体かといった条件によって異なっています。
次に気になったカカオについても聞いて回りました。これは「カカオ・カルテ」(カルテはドイツ語でカードのことです)と呼ばれるもので、大きさがトレーディングカードサイズ(縦8.9センチ、横6.4センチ)に決められた自作のイラスト作品です。基本的にオリジナルの一点ものまたは枚数を限定して印刷したものとなります。集めたり交換したりすることができ、市販のトレカ用ファイルに保管することができます。
もう少し詳しく聞いてみたいと思い、会場内で最も経験豊富だと紹介してもらったマリカ・ヘアツォークさんにインタビューしてみました。マリカ・ヘアツォークさんはドイツで活動するプロの漫画家で、最新作「Demon King Camio」はドイツの大手漫画出版社Egmontから発売されています。
彼女によるとコンホンやカカオ・カルテはドイツ全体に広く普及しているそうです。日本ではスケブは無料だと話したところ、「アートに対して適切な対価を支払うことは当たり前なのではないですか? アメリカではそうですよ」とのこと。どうやら有料制はアメリカ由来なのかも。
カカオ・カルテについては、「少額で作品を提供できることも普及した理由のひとつかも、詳しくはカカオ・カルテについてのポータルサイトを読むといいわよ」と教えてもらいました。カカオ・カルテの販売や交換ができるポータルサイトkakao-karten.deによると、カカオとは、「カードアート(Karten Kunst)、印刷(Auflagen)、オリジナル(Originale)のドイツ語表記の頭文字「KaKAO」からなる言葉。スイスのアーティスト、ヴェンチ・シュティアネマンが1996年の展覧会で1200枚のカードを制作し、最終日に同様にカードを来場者と交換したのが始まりなのだそうです。アーティスト・トレーディング・カード(ATC)という呼び方もあるのだとか。
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