約8年の年月が費やされ完成した“ロムハックゲーム”「Pokemon Prism」が任天堂の要請により公開中止に

リリース直前にまさかの公開中止。

» 2016年12月26日 11時20分 公開
[Minoru UmiseAUTOMATON]
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ポケモンプリズム

 ファンメイド作品「Pokemon Prism」を制作するAdam氏は、同作の公開を中止したことをFacebookとTwitterにて発表した。自身の公式サイトでも告知している。「Pokemon Prism」は約8年間もの時間をかけて開発されていたファンメイドゲーム。2010年の夏にベータ版がリリースされたが、それからAdam氏は本業が多忙のため開発が進んでいなかった。そして2016年の12月25日のクリスマスにいよいよ正式版が公開される予定であったが、そのリリースを聞きつけたニンテンドー・オブ・オーストラリアの法務部に「知的財産の侵害」で差し止められた形だ。

リリース直前の公開中止

 Adam氏は今回の公開中止にあたって、Twitterにて「みんなごめん。Pokemon Prismはキャンセルになった。今までありがとう」と投稿している。Adam氏の動揺はおさまらないようで、Twitterでは「こんなことになるべきじゃなかった。忠告してくれた人はいたんだ。だが僕は聞かなかった」といった後悔の念や、「誰かにトレイラーを作ってくれと頼んだつもりはない。あれが注目を集めてしまったんだ」「大騒ぎしてほしくなかった。静かにしてほしかった。だけどこれがインターネットなんだね」といった予期せぬ注目を集めてしまったことへの不満を述べている。

 Adam氏は静かに開発していきたかったことを示唆する一方で、過去には開発の状況を小まめに公表しTwitchでも精力的な宣伝活動をおこなってきた一面もある。こうした発言はこれまでとってきた行動とやや矛盾しているように思えるが、それほど氏はショックを受けているのかもしれない。ちなみにAdam氏は、これからも変わらず任天堂の製品をサポートしていくことを宣言しており、今回の件で任天堂を攻撃してほしくないとファンに呼びかけている。

ポケモンプリズム Image Credit: wikia

 ちなみにAdam氏にとって「Pokemon Prism」は2作目であり、前作の「Pokemon Brown」もまた『ポケットモンスター レッド』の改造作品だ。こちらも「Pokemon Prism」とともに公開が取り下げられている。

 またAdam氏は、ニンテンドー・オブ・オーストラリアから送られてきた差し止めを要請する文書を公開している。そのなかで任天堂は、ファンコミュニティーに敬意を示しながらも、知的財産を守らなければいけない姿勢を固辞していくことを明かしている。

 “任天堂は、あなたがポケモンフランチャイズのファンであることは理解しています。そのことに感謝している一方で、許可や監督権なく知的財産を侵害する行為から守るという決断は変更できません。任天堂としては、利益を得ることを意図していなかったとしても、ロムハッキングによって知的財産を侵害する行為に対しては同様に対処します。ファンコミュニティーの情熱や献身には感謝していますが、任天堂はフランチャイズを守り、発展させていく必要があるのです。”

ゲームの原点は『クリスタル』の改造

 任天堂の要請によってファンメイド作品が中止になった事例は、これまで幾度もお伝えしてきた。そういった作品の多くは、少なからずオリジナルのゲームデータの流用があったのも確かだ。Adam氏の「Pokemon Prism」は『ポケットモンスター クリスタル』の改造から開発がスタートしており、「ロムハック作品である」と公言していた。ゲームデータの流用どころか、ゲーム本体をそのまま改造していたのである。

 確かに「Pokemon Prism」はファンにとって魅力的に映る心境は理解できる。主人公は『ポケットモンスター』シリーズでは屈指の人気を誇るドラゴン使い「ワタル」の息子/娘という設定であり、既存のポケモンの多くに新たな進化形が用意され、木やガスなど新たに5つのタイプが導入されるなど野心的な構想があった。しかしながら、改造されたゲームの公開を許すことは任天堂でなくとも困難だろう。


ポケモンプリズム 「Pokemon Prism」は、Twitchを中心にファンコミュニティーを構築してきた。

 こうした事実がある一方で、「Pokemon Prism」の公開を待ちわびていたファンは嘆きを見せている。特にredditのr/pokemonprismには悲しみの声が届けられている。Adam氏は後日、あらためて今回の騒動についての発表をおこなうとのこと。ゲームの公開を中止した一方で「僕ができるのはゲームを作り続けることだけ」と公言したAdam氏は、どのような決断を下すのだろうか。

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