最高のピンボールゲームを作りたい → よし、まずは実機からだ!(20年前) 壮大すぎる開発経緯を持つピンボールゲームがSteamで配信開始

出発点がまずおかしい(褒め言葉)。

» 2016年12月29日 10時30分 公開
[池谷勇人ねとらぼ]

 クオリティーにこだわりすぎるあまり、研究・開発になんと20年を費やしたという、ものすごいピンボールゲームがSteamに登場しています。タイトルは「Pinball Parlor(ピンボールパーラー)」。そもそも何をどうしたらピンボールゲームの開発に20年もかかるのか、開発者に聞きました。


ピンボールパーラー

 「Pinball Parlor」の開発元は、超ワイド画面(3200×800)シューティングゲーム「Super Chain Crusher Horizon」などで知られるマインドウェア。ゲーム内容はシンプルかつクラシックなごく普通のピンボールゲームですが、温かみのあるグラフィックやサウンド、そして80年代以前のピンボール台が持っていた、ピンボール本来の戦略性をひたすら追求している点などが特徴。また著名ピンボールデザイナーのスティーブ・コーデック氏、ジョン・ポパデューク氏もアドバイザーとして開発に関わっています。


ピンボールパーラーピンボールパーラー

ピンボールパーラーピンボールパーラー

 マインドウェアの市川幹人さんに開発の経緯を聞いたところ、そもそもまず市川さん自身が熱烈なピンボール好きで、当時発売されていたピンボールゲームにまったく満足しておらず、「それなら自分で作ろう!」と考えたのが開発の動機だそう。これが大体1995年ごろのこと。

 問題はここからで、ピンボールゲーム開発を決意した市川さんはまず、「良いピンボールゲームを作るためには実機への理解が必要だ」と、ゲームセンターに掛け合い、実機のメンテナンスをさせてもらうようになります。この時点で既におかしい……。ちなみにマインドウェアではピンボール台のリースや買い取りも行っていますが、これはメンテナンスを請け負っているうちにレアな台が手元に次々と集まるようになり、ピンボール好きから「お金を出すから打たせてほしい」という声が多く寄せられるようになったからなのだとか。


ピンボールパーラー マインドウェア運営するサイト「pinball.co.jp」

 そして2002年にようやくオリジナルのピンボールを開発開始……するのですが、ここで市川さんはいきなり「ピンボールゲーム」を作るのではなく、そのオリジナルとなる「実機」から作り始めるという暴挙に出ます。日本では80年代以降新たなピンボール台は開発されておらず、これだけでも市川さんの破天荒ぶりがうかがえます。この台は1年後の2003年に完成しますが、当時行ったロケテストの反応は「考えられないくらい良かった」とのこと。ただ、結局量産はされなかったため、この台が正式に日の目を見ることはありませんでした。


ピンボールパーラー 開発中の実機写真

ピンボールパーラー なぜここから始めようと思ったのか……

 そして2003年、とうとう当初の目的だった「ピンボールゲーム」の開発がスタート。と言っても、先ほどの実機をデジタルに落とし込むだけなのですが、なにせ目指すハードルが高すぎるため、ここからがまた長い。そもそも当時のハードでは物理演算やライティングを行うにも圧倒的にスペックが足りず、何度もプロトタイプを作っては捨てる日々が続きました。加えて、途中で市川さん自身が体調を崩したり、またアドバイザーのスティーブ・コーデック氏が亡くなってしまったりと不幸も続き、開発は難航を極めます。しかしようやく今回、納得できるクオリティーに仕上がり、正式リリースにこぎつけたそうです。実機の研究開始から数えると、既に20年以上がたっていました。


ピンボールパーラーピンボールパーラー 完成した実機(左)とゲーム版(右)の比較

 市川さんによると、現在リリースされているピンボールゲームのほとんどは、90年代に流行したピンボール台がベースで、そもそもまずルールが複雑で分かりにくい、狙う場所が常に同じで展開の変化に乏しいなど、昔からのファンにとっては物足りないものばかりなのだといいます。そういった「現在のピンボールゲーム」へのカウンターとして、「Pinball Parlor」ではあえて80年代以前のギミックだけで台を構成。シンプルながらも個性的、なおかつクラシックな魅力を持つフィールドに仕上げたそうです。

 Pinball ParlorはSteamで12月24日より配信中、価格は1280円となっています。


ピンボールパーラー 故・スティーブ・コーデックさんと市川幹人さん。ピンボール開発会社・ウィリアムスの本社エントランスにて撮影

"Chicago Flipper" created by Micky Albert + John Popadiuk.
(C) Mindware

関連キーワード

ピンボール | ゲーム | Steam | 開発者 | ゲーム開発


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2404/25/news016.jpg 「電車の中で見ちゃダメ」「笑ったww」 実家からLINE「子ヤギがすばしっこくて捕まらない」→送られてきた衝撃姿が320万表示!
  2. /nl/articles/2404/23/news090.jpg 誰も教えてくれなかった“裁縫の裏ワザ”が目からウロコ 200万再生のライフハックに「画期的」と称賛【海外】
  3. /nl/articles/2404/21/news011.jpg 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  4. /nl/articles/2404/25/news043.jpg 娘の給食の献立表を見たら…… 正体不明の“謎の料理名”が「これはわからんw」と話題に その意外な正体に納得!
  5. /nl/articles/2404/25/news129.jpg プロ野球チップスでまた“不良品”流出 伊藤大海「176m」表記に続き…… カルビー謝罪「深くお詫び」
  6. /nl/articles/2404/24/news018.jpg 1年半ケージに引きこもっていたシャーシャー猫が、ある夜布団に入ってきて…… 感涙の行動に「まるで別猫」「こんな日が来るなんて」
  7. /nl/articles/2404/24/news017.jpg メルカリで300円の紙モノセットを買ってみたら…… 出品者のあたたかな心遣いに「利益は考えていないんでしょうね」「見ててわくわくします」
  8. /nl/articles/2404/23/news185.jpg 子どもに高級キーボードのパーツを捨てられた → 公式の“先読みしすぎた対応”が話題「そういうこともあろうかと」
  9. /nl/articles/2401/18/news015.jpg 巨大深海魚のぶっとい毒針に刺され5時間後、体がとんでもないことに…… 衝撃の経過報告に「死なないで」
  10. /nl/articles/2404/22/news124.jpg ダイソー「マルチ万能ほうき」が家事ラクの救世主 名前負け知らずの便利さに「これやばっ!!」「220円に驚き」の声
先週の総合アクセスTOP10
  1. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  2. 富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
  3. 2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに少々強引な寝かしつけをされると…… コントのようなオチに「爆笑!」「可愛すぎて無事昇天」
  4. 異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
  5. 【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
  6. 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  7. 1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
  8. 業務スーパーで買ったアサリに豆乳を与えて育てたら…… 数日後の摩訶不思議な変化に「面白い」「ちゃんと豆乳を食べてた?」
  9. 祖母から継いだ築80年の古家で「謎の箱」を発見→開けてみると…… 驚きの中身に「うわー!スゴッ」「かなり高価だと思いますよ!」
  10. 「ゆるキャン△」のイメージビジュアルそのまま? 工事の看板イラストが登場キャラにしか見えない 工事担当者「狙いました」
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」