もしも戦前の鉄道敷設計画がすべて実現していたら? 緻密に再現した地図の制作者に話を聞いた

もし計画通りになっていたら、日本全国どこでも鉄道で行けたのか……。

» 2017年01月11日 20時00分 公開
[沓澤真二ねとらぼ]

 もしも戦前に制定された鉄道敷設法通りに鉄道が建設されていたら、日本の鉄道網はどのような形になっていたのか? そんな想像を、資料をもとにJR時刻表の巻頭地図風に再現した画像がTwitterで注目を集めています。鉄道が日本全国を縦横に走る地図から、制作したTamonさん(@Tamon0703)の努力や、当時の政府の壮大な構想が忍ばれます。

 1892年に制定された同法は、国が建設すべき鉄道路線を定めたもの。主要路線がほぼ完成したのち、1922年には同名の改正法が制定され、150(のちに52追加され、1つは入れ替えで事実上削除)の地方路線が計画されました。しかし第2次世界大戦や戦後の自動車普及の影響もあり、結果的に建設・開業されたのは予定数の4分の1程度。そして1987年の国鉄分割民営化に際し、同法は廃止されました。

 改正法で計画されていた、未完の路線(未成線)がもし実現していたら? そう考えたのはTamonさんだけでなく、先人としてPixivユーザーのrigstさんがいました。rigstさんは153の未成線を、地形や市街、集落の位置などから想像して地図に示す試みを2010年から開始。今日に至るまで、未成線の再現や仮想路線のシミュレートに取り組んでいます。

 もともと路線図や地図が好きだったというTamonさんは、想定路線図をきちんとPC上で仕上げたらきれいだろうなと、実行を開始。rigstさんの許可のもとに件の地図をベースにし、新潮社の日本鉄道旅行地図帳を加味して制作を進めました。

 Twitterでの公開は2015年に始まり、9月に九州編、同年10月には中国・四国編を披露。2016年2月には近畿・中部編(同時に以前作成していた北海道編を公開)、同年7月に関東甲信越編を公開しました。その後各パートの修正を経て、2017年1月8日に最後の東北編を公開。ついに日本全国の想定路線図が完成しました。

 1年越しの取り組みを成就させたTamonさんに、編集部は取材を行いました。まず作業期間についてうかがうと、作業は特定の期間に集中して行っていたそうで、1枚あたりにかかった時間は1カ月以内とのこと。狭い地域に多数の路線や駅が集中しているケースが難しく、正確性をなるべく損なわずきれいに並べることに苦心したそうです。

 掲載路線の基準は、鉄道敷設法予定線および新幹線の基本計画線で、未成線をすべて反映。また新幹線においては、基本計画に含まれていない常磐新幹線や、中央リニアの名古屋まで含め、バランスをとって記載しているとのことです。

 加えて、廃止路線および廃止予定線も、可能な限り再現。ただし、同じ区間に国鉄線が開通した影響で廃止された私鉄などは、個別の判断で記していないそうです。

 鉄道の技術や歴史、旅行が好きという情熱で仕上がった仮想路線図。Tamonさんは全地図をPDF形式で統合し適宜修正を加えた全国版も、Twitterで公開しています。

鉄道敷設法全線完成JR時刻表巻頭地図全国版


北海道

東北

関東甲信越

近畿・中部

中国・四国

九州

画像提供:Tamonさん(@Tamon0703

(沓澤真二)


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