「人工培養肉」を作って食べてみた 理系大学院生が体を張った同人誌にドキドキが止まらない:司書メイドの同人誌レビューノート
味付けはクレイジーソルトがおすすめだそうです。
年初め、メイドのみんなでお習字をしたようです。新年に館内へ行くと、それぞれのカ作が貼ってありました。「本を50冊読む」と目標を掲げるものもいれば、「祝!!SAO映画化」と心意気をストレートに記すものもおり……と、そんな中、ひときわ力強く書かれた1枚がありました。そこに書かれていた文字は「肉」。おいしいお肉を食べるのが大好きなメイドの手によるものでした。お肉は確かにおいしいです。ローストビーフ、ハンバーグ、生姜焼き、つくねなどなど、おいしいレシピもいろいろ頭をよぎります。
けれどもしかしたら、これからはお肉を手にする方法も調理法もまったく変わってくる可能性もあるのかもしれません。今回はそんな風に考えさせられた同人誌を紹介します。
今回紹介する同人誌
「『純肉』(人工培養肉)作って食べてみた!」 A5 42ページ 表紙カラー 本文モノクロ
著者:Keita
「純肉」って何ですか?
今回の本のタイトルは『「純肉」(人工培養肉)作って食べてみた!』。純肉って何なのでしょうか。表紙には「試験管で作ったお肉」とあります。人工的に食肉を作り出すことができるの? と、まずはそこからが謎です。学生時代から文系に特化して過ごしてきた身としては、全てが「えっ、どういうこと?」という疑問の連続ですが、本では、培養して食肉が作られるようになった経緯や、方法、現在の流れまでを丁寧に説明してくれます。それをなんとか読み込み、ものすごくざっくりまとめると、
今のままだとお肉が足りなくなるかもしれない
↓
でもこれからもお肉食べたい
↓
自分たちで作れるかな
↓
家畜などから、ちょっぴり細胞をもらって、それをタネにして増やしたらいいんじゃない?
↓
できた!
という流れが世界的に注目され、研究されているようです。しかもかなり研究は進んでいて、2013年には「培養肉ハンバーガー」を食べるという段階まで来ていたのでした。もっとも、ハンバーガーに挟むサイズのお肉を作るには、なんと約3000万円がかかったそう。グラム単価はいくらになってしまうのかしら……うーん、コストの削減できないといまのままでは、せっかく技術が開発されても、どんな霜降り牛よりも高級なお肉になってしまって現実感はないですねえ。
いざ実食! 食べてみた感想は……
そんな高級な人口のお肉ですが、この本には「純肉」を作成された方のレポートが掲載されています。先行の研究を参考にするなどして、よりリーズナブルに「純肉」を作成。なんとなんと実食にこぎつけます。自分で作れるんですねえ! 「ちょっぴり細胞をもらっ」たのはマウスから。おおお、この時点でかなりびくっとしたので、調べてみたのですが、南米あたりではマウスを食べる郷土料理もあるんですね。そして、そのちょっぴりのタネを大切に大切に培養して、できたお肉をフライバンで炒めて、完成。
ふむふむ、味付けはクレイジーソルトがおすすめですか……って、ものすごくちょっぴりのお肉ですよー。もはや本文掲載のモノクロ写真では、なにがなんだか判別できないくらい少量。大きなハンバーグを頬張るのにはもう少し時間がかかりそうです。それでもお味は「塩の味がきいていた」とのこと。しかし文中でも「純肉食べた!などと他言して良いのは、引かれる覚悟のある者だけです」と書かれている通り、まだまだ研究途中の段階のものを口にするなんて、読んでいるだけで相当のハラハラ感があります。真剣に取り組んでいるのに、「おいしそう!」より「大丈夫かしら」と心配が勝る食レポにはなかなか巡り会えません。
おいしいお肉を求めて、いま世界は……
作者さんたちは理系の大学院生さんが中心となって、学外で活動されているとのこと。これからの未来を背負って立つ若人の方が、身を挺(てい)して実験に突入するさまを読む、ドキドキハラハラの本です。
いえ、内容は意外(?)にもコツコツとしたまじめな文章です。本文は、純肉の解説やデータがしっかりしたグラフを用いて書かれた、どちらかといえば固い内容ですが、私のように化学にあまり触れないものでも分かるように、とっつきやすく書かれています。
それなのに私がドキっとしたのは、もしかしたら将来お肉が食べられないかもしれないという不安、実験室でお肉を作っちゃっていいの? という懸念、そして自分はそれを食べるのかしら? という未知なるものへのおののき……それらが、本を読み進めるうちに、「純肉を作って実食してみる」ということを、同人誌の向こう側で実際にやっている人がいるというそれだけで、リアルに胸に迫ってきたからでした。
この本は何か特別な意見を推奨しているわけではなく、作者さんいわく「今後の我々の生活を大きく変える可能性を持つ技術として、一人一人が意見を持ち、向き合うことが重要です」とのこと。うーん、私も率直にいまの気持ちでは、「おいしい」よりも驚きのほうが勝ってしまいます。まだ、「純肉」さんの横顔を少しのぞき込んだ段階でしょうか。でも、お肉好きなメイドたちが今日も明日も、「おいしい!」と笑顔を見せてくれたらうれしいなあ……と思いながら本を閉じました。
サークル情報
サークル名:Co-Lab
Twitter:@keitasciencecg
入手先:COMIC ZIN 秋葉原店・新宿店
入手先URL(通販):http://shop.comiczin.jp/products/detail.php?product_id=30873
今週のシャッツキステ
著者紹介
関連記事
- ンまぁ〜い!! 全12種類の手作り「さけるチーズ」にチャレンジした夫婦の食レポ本
イチゴジャムに漬けるのはギリギリアウトだと思います。 - みりんと炭酸水でコーラの味に? 17種のみりんを飲み比べたレビュー本で新たな扉が開けそう
みりん粕は隠れた大人スイーツかも。 - 腹が減っては戦はできぬ! 全国の同人イベントを渡り歩いた作者が贈る珠玉のグルメ同人誌
秋葉原のカルチャーカフェ「シャッツキステ」の司書メイドことミソノが、同人誌のディープな魅力を紹介する連載企画。あなたの知らない同人誌の世界がここにあります。 - 次世代の食材として注目を集める“培養肉”製作動画をニコニコ技術部が公開 気になるお味は?
関係団体の代表者がテレビ出演することも決定しています。 - マンボウ最弱伝説はウソ? 「着水の衝撃で死ぬ」「朝日が強すぎて死ぬ」などの真偽を研究者が判定
今回はマンボウ研究家が調査結果などをまとめた「マンボウの都市伝説-噂の根源と真偽- ver.3」をご紹介。 - 「取ってしまえばどうということはない」 魚屋さんがまとめた寄生虫データが食卓に安心を届けてくれそう
「魚屋が出会う身近な魚の寄生虫」をご紹介。フルカラーで寄生虫の画像が載っているので、苦手な人は注意。 - 鉄道×鶏そばの最強コンビ 鉄道好きが贈る駅そばグルメ本「鶏と鉄道」にそそられる
撮り鉄ならぬ「鶏鉄」活動。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
【追記あり】夫に「油買ってきて」と頼んだのに、手ぶらで帰宅した理由はまさかの…… とんでもないオチに「やめてww」「久しぶりに大爆笑」
-
1歳息子の“はじめての寝落ち”が140万再生 10歳兄のやさしい行動に「なにこの平和でかわいい世界」「最高に癒やされる」と絶賛の声
-
「予言者いた」「先見の明」 大谷翔平選手&真美子さんの結婚を2021年時点で予言(?)している投稿が発掘され話題に
-
北海道内の移動距離を本州と比較したら…… 感覚がバグるマップ画像に「これが北海道」「大きすぎる」
-
生後1カ月の赤ちゃん「ぼく泣かないもんねっ」 うるうるおめめとへの字口が「はぁ〜たまらん!」「ぐぁぁああああっっ」取り乱すほどかわいい
-
「一番イチャイチャしているように見える」 大谷選手が公開した写真でドジャース山本由伸選手の“手つなぎ”?が話題に 「そっちに目が行く」
-
「妻の服を勝手に着て脱げなくなったムキムキ夫とデカワンコ」に爆笑の嵐 シュールすぎる状況が500万表示突破
-
“おしりが5日で変わる”トレーニング! 「明日からやるか」「1日1回だけなら続けられる」と累計3000万再生突破
-
大好きなボールを100個プレゼントされたときのワンコの表情に「放心ww」「引いてない?」 直視できない姿がSNSで話題
-
赤ちゃんが妙に静かだと思ったら…… 思わぬものへの“真剣モード”に笑顔になる人続出「たれたもちもちほっぺたまらん!」
- 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
- 昭和時代に“無かった物”が写っている……? 細かすぎて伝わらない「未来から来たことがバレた写真」に6万いいね
- 「マジで汚い」「こんなもんです」 辻希美、“大散乱”のリビングと“新”キッチンの差を公開し共感の声集まる
- 双子の赤ちゃん、姉が全力でくしゃみして…… 被害にあった妹の反応に「生後3ヶ月でドリフのコントw」「めちゃどっちもカワイイ」と絶賛の声
- 「よくも病院に連れてきたな……」とにらむ猫、先生が来た瞬間 驚きの変貌に爆笑の声「これがほんとの猫かぶり」
- 急に片耳がたれたワンコ、慌てて病院にいった結果…… 「こんな可愛い診断結果初めて見たよw」「笑っちゃった」と反響
- 「何羽いる?」一見普通の“草むら”、よく見ると……? 思わず絶叫まちがいなしの1枚に「どっさりいるw」「まさに迷彩!」
- 店員に「この子は懐きませんよ」と言われたチンチラ、家に来て3日後…… 人を信じる姿に「愛が伝わったんですね」
- 元SDN48光上せあら、目を離した隙に……子どもが商品を触り“全買取” 「子連れママに厳しすぎないか?」
- 柴犬を子どものように育てた結果、人間みたいな行動をするようになった 何気ない幸せな日常に「完全に家族の一員」「全部が愛くるしい」
- 釣れたキジハタを1年飼ってみると…… 飼い主も驚きの姿に「もはや、魚じゃない」「もう家族やね」と反響
- パーカーをガバッとまくり上げて…… 女性インフルエンサー、台湾でボディーライン晒す 上半身露出で物議 「羞恥心どこに置いてきたん?」
- “TikTokはエロの宝庫だ” 女性インフルエンサー、水着姿晒した雑誌表紙に苦言 「なんですか? これ?」
- 1歳妹を溺愛する18歳兄、しかし妹のひと言に表情が一変「ちがうなぁ!?」 ママも笑っちゃうオチに「かわいいし天才笑」「何度も見ちゃう」
- 8歳兄が0歳赤ちゃんを寝かしつけ→2年後の現在は…… 尊く涙が出そうな光景に「可愛すぎる兄妹」「本当に優しい」
- 1人遊びに夢中な0歳赤ちゃん、ママの視線に気付いた瞬間…… 100点満点のリアクションにキュン「かわいすぎて鼻血出そう!」
- 67歳マダムの「ユニクロ・緑のヒートテック重ね着術」に「色の合わせ方が神すぎる」と称賛 センス抜群の着こなしが参考になる
- “双子モデル”りんか&あんな、成長した姿に驚きの声 近影に「こんなにおっきくなって」「ちょっと見ないうちに」
- 犬が同じ場所で2年間、トイレをし続けた結果…… 笑っちゃうほど様変わりした光景が379万表示「そこだけボッ!ってw」
- 新幹線で「高級ウイスキー」を注文→“予想外のサイズ”に仰天 「むしろすげえ」「家に飾りたい」