40歳の私が楽しんだ「ファイナルファイト」を11歳の息子が楽しめなかったわけ

「かつての思い出を息子に求めることは、老害というそしりを受けてもおかしくはない」

» 2017年04月04日 17時32分 公開
[Yuzuru SonoharaAUTOMATON]
AUTOMATON


前回: 私(40歳)が楽しんだ『ファイナルファイト』を息子(11歳)は楽しめるのか?

 中学生までゲームに熱中し続け、成長し、いつしか気づいたら仕事にいそしみ、女性との出会いもあり、そして子供も授かった私。今の私は離婚し、元妻とも別居し、彼女と息子とは月に1回ほど会う関係にある。息子と元妻とは良好な関係だ。かつては一緒に暮らし、別居した4年前まで一緒に遊んだ日々を、思い返さないことはない。

 息子は幼少の頃、仮面ライダーが大好きだった。私が仮面ライダーカブトのフィギュアを、息子が仮面ライダーWを手に持って遊び、「お父さんの攻撃はなにも効かないよ」という息子に、私は「ふざけンな、それじゃ決闘にならないだろ!ルール緩和しろ!」と、ムキになって怒ってみたり。当時私が夢中になって遊んでいた『ドラゴンクエスト モンスターズジョーカー2』を、仕事に行っているあいだに息子は勝手に遊んでしまい、帰宅すると育て上げた自慢のモンスター軍団がスライムに差し替わっていた。「このタマネギみたいなの、かわいい」。きゃっきゃっと喜んでいる息子になにも言えなかっったり。そんな息子の趣味は、仮面ライダーからレゴブロック、そしてミニ四駆などを経て、親に似たのか数年前からはすっかりゲームになっていった。


ミニ四駆 親子で買ったミニ四駆。息子のライキリ(右)は、ご要望通りに塗装してみた

 息子はもう今では小学生高学年。夏はキャンプに行ったり、マルチプレイヤーFPSをオンラインで一緒に遊んだりはするものの、私の心のなかには少しずつ“昔の通りではない”という違和感がつのっていく。息子との楽しかった日々は、少しずつ「思い出」という寂しいものに変わっていく。はたしてこうなったのは、息子の成長によるなのか、「別居」という環境によるものなのか、私はわからなくなってきている。この連載では、「世代が離れることでのゲーム体験、感性のかい離」を追求することが本来のテーマであるが、私の中のテーマとして、「あの時のように、一緒に遊ぶ日々をもう一度」という儚い想いもある。若しくは多感な時期に一緒に過ごせてあげられないことに対する、贖罪のような気持ちもあるのかもしれない。とはいえ老いた私が、かつての思い出を息子に求めることは、老害というそしりを受けてもおかしくはない。

 『ファイナルファイト』を息子とプレイした前回――多くの読者が指摘したように――私が当時熱中していた環境の再現性は乏しく、あらゆる体験が控除されてしまった。無限コンティニューによる、100円投与の決断で消費するエネルギーの控除。経験者の事前アドバイスによる、初見の新鮮さ・驚愕の控除。自身の部屋でプレイすることでの、ゲーセン独特のパブリックな場に溢れていた緊張感の控除。結果、ダイジェストのように各ステージをコンティニューのごり押しでクリアしていき、1時間未満でプレイは終わってしまった。

 プレイ中は「あ、死んだー」「はーいこれでまた100円追加になりまーす」といった雰囲気でワイワイと遊んではいたものの、中学生当時に遊んでいたときの興奮には遠く及ばず、結果として息子の体験の質・量が私の期待値を大幅に下回ってしまったのは正直なところだ。なぜこうなったのかを自分に問い詰めてみると、前述の月に一度だけ遊べるという制限や、息子に在りし日の思い出を求めようとした結果、一種の焦りがあったことは否めない。

 だが第一回の収録ではポジティブな収穫もあった。「カプコン クラシックスコレクション」に収録された『魔界村』をプレイしてみたところ、息子にとって8bitタイトルが一周回って新鮮だった、という意外な発見があったのだ。当初の予定では『ファイナルファイト』ありきで、プレイするのが一番手軽なのは何かという逆算しての「カプコン クラシックスコレクション」のチョイスではあったが、このお陰で息子の琴線は違うところにあることを知った。

 『ファイナルファイト』を終えた息子は、さっさとPCデスクに戻って『Minecraft』を始めるものかと思いきや、「ほかのも遊んでみたい」と、引き続きPS2のコントローラを握りながら『魔界村』や『1942』などのクラシックなタイトルを一通り楽しんでいた。『魔界村』よりも難易度が低く、ゲームデザインもシンプルでわかりやすかったのか、『1942』は一番長く遊んでいた。続編である『1943』もプレイしていたが、やはりここでもより(我々世代にとっては)クラシックなグラフィックの『1942』の方が息子にとっては新鮮だったようだ。

 『ファイナルファイト』での失敗。『魔界村』『1942』での発見。この2つの学びから、次回の試みは「8bitマシン」「アーケードではなくコンシューマ」「協力プレイ向けデザイン」、この3点を押さえたタイトルのチョイスでの改善を考えている。『ファイナルファイト』『1942』のようなシンプルな遊び方を息子が楽しめたことは確かだ。あとは“より新鮮な”8bitマシンで、家庭内でプレイする前提のデザインであれば、感動を共有しつつ、息子世代のゲームの遊び方といった部分への追求ができそうだと考えている。また大事なポイントとして、前回は『ファイナルファイト』決め打ちだったことも踏まえ、次回は初代ファミコンと複数のタイトルを用意し、我々2人で「これは楽しい」とツボにハマるものを見つけ、例えば何面までクリアすることを目指すなど、一定ラインまでプレイしてみたい。

 息子には飲み物とお菓子を、私にはビールとツマミを。あの楽しかったころの思い出のような感覚がどこかでふと顔を出すのか、それとも別の形で決着をみるのかはわからないが、きっとこれからも迷いつつ進む私と息子のゲームの旅路にもう少々お付き合いいただきたい。

関連記事

Copyright (C) AUTOMATON. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2403/26/news158.jpg 元横綱・貴乃花、再婚後の激変ぶりに驚きの声 ヒゲ生やした近影に「ショーケンみたい」「ワイルドー」
  2. /nl/articles/2403/27/news130.jpg 中山美穂、金髪&ミニ丈の大胆イメチェンに視聴者びっくり! “格付け”出演の最新ビジュアルに「誰だか分からなかった」
  3. /nl/articles/2403/26/news169.jpg 「『ちゅ〜る』の紅麹色素は大丈夫?」 小林製薬の「紅麹」報道で飼い主に不安広がる
  4. /nl/articles/2403/27/news126.jpg ミス筑波大モデル、25キロ減量したビフォーアフターに「ホント凄い」 整形疑う声も「元々は埋もれてたようですね」
  5. /nl/articles/2403/26/news161.jpg 【まとめ】小林製薬「紅麹」問題 味噌や酒など紅麹原料メーカーの自主回収相次ぐ 20社以上が発表
  6. /nl/articles/2403/27/news127.jpg 日本エレキテル連合・中野、ネタで酷使し容姿に異変→手術を決断 「ダメよ〜、ダメダメ」でブレイク、2022年にがん公表
  7. /nl/articles/2403/20/news067.jpg 「紫のトトロ買った」 “ジブリを1ミリも知らない”友だちから連絡→まさかの正体に爆笑 友だちはその後ジブリを見た?
  8. /nl/articles/2403/26/news016.jpg ドイツ人家族が日本のバウムクーヘンを実食、一番おいしいと絶賛したのは…… 満場一致の結果に「参考になります」「他の食べ比べもお願い」
  9. /nl/articles/2312/30/news041.jpg 「紫のトトロ買った」 “ジブリを1ミリも知らない”友人から連絡→まさかの正体に爆笑「それトトロやない」
  10. /nl/articles/2403/26/news145.jpg 「ご安心ください」 “紅麹ショック”でDHCとファンケルが声明…… サプリ販売は継続中 小林製薬では死亡患者がサプリ摂取
先週の総合アクセスTOP10
  1. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  2. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  3. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  4. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  5. 田代まさしの息子・タツヤ、母の逝去を報告 「あんなに悲しむ父親の姿を見たのは初めて」
  6. 「遺体の写真晒すのはさすがに」「不愉快」 坂間叶夢さんの葬儀に際して“不適切”写真を投稿で物議
  7. 大友康平、伊集院静さんの“お別れ会”で「“平服でお越しください”とあったので……」 服装が浮きまくる事態に
  8. 妊娠中に捨てられていた大型犬を保護 救われた尊い命に安堵と憤りの声「絶対に許せません」「親子ともに助かって良かった」
  9. 極寒トイレが100均アイテムで“裸足で歩ける暖かさ”に 今すぐマネできるDIYに「これは盲点」「簡単に掃除が出来る」
  10. 「奥さん目をしっかり見て挨拶してる」「品を感じる」 大谷翔平&真美子さんのオフ写真集、球団関係者が公開
先月の総合アクセスTOP10
  1. 釣れたキジハタを1年飼ってみると…… 飼い主も驚きの姿に「もはや、魚じゃない」「もう家族やね」と反響
  2. パーカーをガバッとまくり上げて…… 女性インフルエンサー、台湾でボディーライン晒す 上半身露出で物議 「羞恥心どこに置いてきたん?」
  3. “TikTokはエロの宝庫だ” 女性インフルエンサー、水着姿晒した雑誌表紙に苦言 「なんですか? これ?」
  4. 1歳妹を溺愛する18歳兄、しかし妹のひと言に表情が一変「ちがうなぁ!?」 ママも笑っちゃうオチに「かわいいし天才笑」「何度も見ちゃう」
  5. 8歳兄が0歳赤ちゃんを寝かしつけ→2年後の現在は…… 尊く涙が出そうな光景に「可愛すぎる兄妹」「本当に優しい」
  6. 1人遊びに夢中な0歳赤ちゃん、ママの視線に気付いた瞬間…… 100点満点のリアクションにキュン「かわいすぎて鼻血出そう!」
  7. 67歳マダムの「ユニクロ・緑のヒートテック重ね着術」に「色の合わせ方が神すぎる」と称賛 センス抜群の着こなしが参考になる
  8. “双子モデル”りんか&あんな、成長した姿に驚きの声 近影に「こんなにおっきくなって」「ちょっと見ないうちに」
  9. 犬が同じ場所で2年間、トイレをし続けた結果…… 笑っちゃうほど様変わりした光景が379万表示「そこだけボッ!ってw」
  10. 新幹線で「高級ウイスキー」を注文→“予想外のサイズ”に仰天 「むしろすげえ」「家に飾りたい」