そしてお父さんは光の戦士になる 「FF14」の大人気プレイ日記が実写ドラマに 「光のお父さん」ついにスタート:ねとらぼレビュー
FFXIVのプレイ日記ブログ、ドラマ化です。
「どこの家でも、オヤジなんてのは分かりにくい存在なのかもなー」主人公・稲葉光生(千葉雄大)の同僚は、そう言った。分かる。「お父さん」は子どもと接する時間が単純に母親より少ないし、会社で知らない人とつながっているから、分からないことがたくさんある。だから、ゲームの中で話し合おう。
MBS/TBSドラマイズムで放映が始まった「光のお父さん」。オンラインゲーマー・マイディーさんのブログ「一撃確殺SS日記」を元に、現実世界とゲーム内の会話を交互に描く、かなり異色なドラマです(MBSは4月16日深夜、TBSでは18日深夜から放送開始)。
お父さんが光の戦士になるまで
稲葉光生は、幼いころから「ファイナルファンタジー(以下・FF)」が大好きな青年。ファミコン時代には、父親・稲葉博太郎(大杉漣)と、FFの会話で盛り上がっていました。
しかし大人になるにつれ、会話がどんどんなくなっていき、家ではほとんど言葉を交わさなくなる。そんなある日、お父さんは突然、会社を辞めた。
なんで!? 考えてみたら、父親とほとんど会話をしていないのだから、何を考えているか分かるはずもない。
光生は、今PCでプレイしている「ファイナルファンタジーXIV」の中で、プレイヤー友達と相談。お父さんをこの世界・エオルゼアに引き込んで、素性を隠して一緒に冒険をして会話を重ねていこう、という計画を立てます。
お父さんに買って渡したPS4。キャラメイキングをして、お父さんはエオルゼアでの旅を開始しました。
ネットゲームというコミュニケーションツール
っていうかね、MMORPGを題材にドラマができるってこと自体が、衝撃だし、わくわくしてならない。最近だと小説やアニメで「ソードアートオンライン」や「ログ・ホライズン」など、MMORPGを題材にしている有名作品が数多くあります。これを見たときも「そんなにみんなネトゲやったことあるものなの!?」と度肝を抜かれました。
ぼくは「ラグナロクオンライン」の初期ユーザーで、それはもうどっぷりはまっていました。「ファイナルファンタジーXI」が盛り上がっていたころ。もう15年前です。当時は回線やPCスペックなどプレイのための壁が高く、さらに悪い面(廃人化やRMT、暴言、BOT、PKなど)ばかりが目立ってしまい、MMORPGはマニアのもの、みたいな感覚でした。
その一方で、確実に「コミュニケーションツール」として基盤ができていったのも見てきました。今も昔もぶっちゃけ、戦闘している時間より、仲間とチャットしている時間の方が長いよ。MMORPGプレイヤーなら、何かしらの形で「こんな出会いがあったよ」という記憶があると思う。オンラインゲームだからこそ、こんなに感動できるんだよっていうの、あると思う。
だからテレビで、こんなステキな形で表現されるのが、ものすごくうれしい。
「光のお父さん」は「オンライン上のつながり」と「家庭でのつながり」の2つのコミュニケーションを並行して描いているのが最も面白いところ。どちらもコミュニケーションの軸になるのは、言葉。もっともその文字を打ち込むキーボードを最初に準備していなかった光生の手落ちっぷりはちょっとほほえましい(原作にあたるブログでも「うかつだった」「まさか……キーボードがいるなんて……」とやらかしています)。
コミュニケーションに必要なのは「話そうとする意思」と「共通の話題」。
ゲームは共有できる「体験」だ。ファミコン版だったら「右に宝箱あるよ」「このモンスターはこの攻撃がきくよ」という話題が生まれる。
MMORPGはもっとすごい。一緒にパーティーを組んで、広大な世界を旅して周り、難敵と戦ったりギルドを組んだりできる。チャットやエモーションで、たくさん話ができる。感動を共有できる。
光生は、それを知っているから、60歳のお父さんにネトゲをすすめる計画を実行できた。確信があったんだと思う。
最終的には、現実世界での距離感が縮まる、という確信も。
恥ずかしがり屋のお父さん
FFXIVをはじめた日。お父さんが光生の部屋に訪れるシーン。
お父さん「光生、ちょっとええか? あのな、ウロウロしてたら、町から森に出てしもうてな、不安になってしもうて……まだ町から外にでんほうがええか?」
光生「ああ……大丈夫、モンスターは出てくるけど、レベルの低い相手ならすぐ戦えると思うから……安心して」
なんて不器用な会話! 今まで話さなかった2人が、会話できている。まだお父さんが何を考えているかは分からないけれども、部屋にまで来て話してくれた。
お父さんが恥ずかしがり屋なのは、オンラインゲーム初接続の時のセリフからも分かります。ネット上のキャラクターがみな人間なのを知った時の一言。
お父さん「そんなん、なんか恥ずかしい」
コミュニケーションの最初は、いつだって恥ずかしいもの。そして今、息子との会話も久しぶりで、どこか恥ずかしい。息子の光生もしゃべり方がとてもぎこちなくて、やっぱりどこか、恥ずかしい。
恥ずかしさは、うれしさと、とても近い。
ブログでは、テレビドラマ化までの流れも「光のぴぃさん」というドキュメンタリー形式でまとめられています。最初の脚本を拒絶した話や、製作委員会の最後のピースとしてスクウェア・エニックスに参加してもらうまでなど、ドラマの裏側の、普段は語られない部分が見られるのでぜひ。エオルゼアパートでのキャラクターは、もともとのブログに登場する本人たちが動かしているというのも面白い!
(たまごまご)
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