「放射能」は誰にもうつらない 「放射線」「放射性物質」について正しく理解するために
誤解をなくすために。
福島原発事故から6年。あらためて、「放射能ってうつるの?」「放射線と放射能の違いって何?」などの疑問に、きちんと答えられる人はどれくらいいるでしょうか。
ということで、こどもにも分かる言葉で分かりやすく解説します。
放射能ってうつるの?
まずはこちらをごらんください。
A君は太陽の光を浴びました。とてもとてもまぶしかったそうです。さて、翌日A君を見たB君は「A君、お前まぶしいな!」なんて感じるでしょうか。「日光がうつる!」なんてことがあるでしょうか。そんなことはありませんよね。太陽を見るとまぶしいですが、A君を見てもまぶしくありません。
実はこれと同じことが放射線でも言えます。
A君は放射線を浴びました。放射線を浴びることを被ばくと言います。翌日B君はA君に会っただけで被ばくするのでしょうか。そんなことはありません。
太陽は光を出しますが、人間は光を出しませんよね。放射性物質は放射線を出しますが、人間は放射線を出さないのです。
被ばくした人に会うだけでうつることはありません。
「被ばくした人が近づく」だけで「うつる」というのは、「昨日、日光を浴びていた人が近づく」だけで「まぶしい」というくらいおかしなことなのです。
「放射線」「放射能」「放射性物質」の違い
「放射線」「放射能」「放射性物質」。これら3つの言葉は混同しがちなので整理しましょう。
先ほどの例えで、光が放射線、太陽が放射性物質です。つまり、飛んでくるのが「放射線」で、「放射線を出すもの」が「放射性物質」です。そして「太陽が光を出す能力」に当たるものを「放射能」といいます。「放射能が高い放射性物質」は「とてもまぶしい太陽」というイメージです。
言いかえるとこうなります。
- 透明で見えないけど知らない間に体を貫通していくのが放射線
- それを出している親分が放射性物質
- 親分のスゴさを表す言葉が放射能
つまり「放射能を浴びる」のが怖いというのはおかしな表現で、正確には「放射線を浴びる」のが怖い、ということになります。
同じく、「放射能に近づきたくない!」ではなく「放射性物質に近づきたくない!」が正しい言い方です。ただし、人間は放射性物質ではないですからね。放射性物質といえばセシウムなどのことです。
放射線は光?
さきほどのイラストを見て「その例えあってるの?」「本当に太陽の話と放射性物質の話は同じなの?」という方もいらっしゃるでしょう。そのための解説をします。
「うつる」ものといえば、インフルエンザのようにウイルスで感染するものですよね。インフルエンザが「うつる」のは患者さんの体内からウイルスが出てくるためです。
しかし、放射線は一度入ると二度と出てこないという性質があります。放射線は体内に吸収されます。吸収した放射線をまた発射するというのは不可能です。
この性質は光を浴びることと同じです。どんなに光を浴びまくってたとえ真っ黒に日焼けしても、人間の体がいきなり光るなんてありえないですよね。
体に吸収された放射線を発射することはできないということさえ理解できれば、うつるわけがないということは分かってもらえると思います。
あらためて、「放射能」「放射線」「放射性物質」といった言葉の意味について見てきました。この記事が正しい知識を身に着け、理解を深める一助になれば幸いです。
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