都内各地の駅で増殖中? 謎のポスターをまとめた「#片側通行ポスター ハンドブック」司書メイドの同人誌レビューノート

最初に発見されたのは2013年8月27日の西国分寺駅でした。

» 2017年06月11日 12時00分 公開
[シャッツキステねとらぼ]
シャッツキステ

 街を見回すと、いろんな掲示物が目につきます。看板、ポップ、そしてポスター。今回の同人誌は、駅で見掛けたとあるポスターにスポットを当てた本です。しかも特徴的なデザインのそのポスターは増殖中……? という、謎のポスターを観察されたハンドブックです。

今回紹介する同人誌

「#片側通行ポスター ハンドブック[2017春]」 A5判変形 20ページ 表紙・本文カラー

著者:kssk(ちかく)


同人誌「#片側通行ポスター ハンドブック[2017春]」同人誌「#片側通行ポスター ハンドブック[2017春]」 片側通行ポスターが実はひっそり増殖中?

1枚のポスターから増殖?「片側通行ポスター」を追う

 2013年、そのポスターは発見されました。「左側通行」と書かれたポスターは、矢印を配置したデザインが目を引く、はっきりとした赤系と黒のカラーリングも印象的な一枚です。どうやら駅員さんがオリジナルで作ってらっしゃる……? と思われるこのポスター。西国分寺駅で最初に発見されたのは2013年8月27日のこと。

同人誌「#片側通行ポスター ハンドブック[2017春]」 ここが全ての始まりの地……!

 そしてそれからわずか2週間後、今度は錦糸町駅で「左側通行」のポスター発見の報が入るのですが、なんとそのポスターは黄色! あれ、色が違う! しかもデザインにもちょっと違いが……? と、そこではじめて「特徴的なのに、微妙に違うポスターが、違う駅に存在している」ことが明らかになります。西国分寺駅と錦糸町駅、同じ東京都ですが、電車の路線では乗り換えが必要なちょっと遠い位置関係です。それなのになぜ?

 さらに驚きなのは、その後、原宿駅、新宿駅、高田馬場駅などで「片側通行」ポスターが発見され続けてしまったこと。そしてやっぱり、どれもデザインや色が微妙にちがう……なんなのでしょう、このむずむずするポスターたちは!

同人誌「#片側通行ポスター ハンドブック[2017春]」 作者さんはこのような駅係員さんや工事関係者の方が独自に作成されたと思われる貼り紙などを「野良サイン」と呼んで撮り集めてらっしゃいます

色違い、デザイン違い、もはや原型を留めていないものも!? バリエーションありすぎ!

 この本はそんな「片側通行ポスター」の姿や発見の報を追い続け、その進化(?)をつぶさに収めたハンドブックです。

 発見された駅ごとに、初観測日、設置場所を記載し、デザインの解説をされた本は縦長サイズで、ハンドブックという名前そのままに、手にして駅を巡りたくなる作りです。

 本を眺めていると、多彩過ぎでは!? とツッコミを入れたくなってしまうほど増殖ポスターたちのバリエーションが豊富です。見よ! 原宿駅の紫、赤、黒、緑という強烈なカラーリングを! 公共の駅に貼るには、なかなかのチャレンジ精神あふれる色使いではないでしょうか。そして、アルファベットのフォントだけは辛うじて共通しているものの、あとは原型をとどめないアレンジに至っているのもすごいです。

 それぞれの駅で付け足されたり、そぎ落とされたり。こんなにも印象的なのに、変幻自在な「片側通行ポスター」。ちょっとした違和感は、デザインのどこに変更点があるからなのか、このバージョンが公開された時期は……と、作者さんが丁寧に観察し、解説をしてくださっているので、本を読むと「なんとなくむずむずする感じ」が、「なるほど!」とスッキリします。

同人誌「#片側通行ポスター ハンドブック[2017春]」 紫、赤、黒、緑の大胆な色使いは、まさにファッションの街・原宿に向いているかも!

事情を知りたいような、そのままでにしておきたいような……あくまで観察目線を貫く

 当初の発見から時は過ぎたものの、実は今年に入ってからも、三鷹駅でもこのポスターが発見されたとのことです。どこまで増殖するつもりなんでしょうか、この片側通行ポスターさんは……。

 こんなにも増殖してしまった理由について、作者さんは「原稿データを駅員さんがやりとりしている?」などと推察されていますが、それはあくまで想像の域を出ません。

 気付けばひっそりと、各駅に増え続けるポスター。ちょっとしたミステリーのようです。もしかしたら、駅の人に一言「なぜですか?」と聞いたら、謎はすっぱり解けるかもしれません。でも、こちらの本ではそこには言及されていません。あくまで、そっと観察されるのみ。あるがまま、見守るまま……そんな眼差しがあったからこそ、片側通行ポスターはこんなにも表情豊かに育ったのかも? と思いました。

 たくさんの人が通り過ぎる駅、その一画にそっと貼られたポスター……いつかあなたのご利用の駅にも増殖してしまうかも?

同人誌「#片側通行ポスター ハンドブック[2017春]」 各地でさまざまな変化を見せる片側通行ポスターの様子が、一目でわかる年表に

サークル情報

サークル名:Eidantoei

Twitter:@ooooooooo

Instagram:@kssk

tumblr:kssknonikki

Webサイト:https://eidantoei.org/

入手先:BOOTH


今週のシャッツキステ

シャッツキステ 2016年に、「けものフレンズ」さんのフレンズさんたちと触れ合ってから、1年。2017年もシャッツキステにフレンズをお迎えできました。かわいいイラストを閉館後にまじまじ見詰めるメイドの特権をフル活用の図

著者紹介

司書メイド ミソノ 司書メイド ミソノ:秋葉原カルチャーカフェ「シャッツキステ」でメイドとしてお給仕する傍ら、とある大きな図書館で司書としても働く“司書メイド”。その一方で、こよなく同人誌を愛し、シャッツキステでも「はじめての同人誌づくり」「こだわりの特殊装丁」の展示イベントを開く。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えた辺りで数えるのをやめました」と語る

関連キーワード

ポスター | 同人誌 | デザイン | フォント


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2404/27/news009.jpg しぶとい雑草“ドクダミ”を生やさない超簡単な方法が115万再生! 除草剤を使わない画期的な対策に「スゴイ発見」
  2. /nl/articles/2404/27/news020.jpg パパに笑顔を見せる4カ月の赤ちゃん、ママの顔を見ると…… あるあるな反応に「なんで?!」「ママをすごく信頼してる証拠」とさまざまな声集まる
  3. /nl/articles/2401/26/news015.jpg スーパーで買ったレモンの種が1年後…… まさかの結果が635万再生「さっそくやってみます」「すごーい!」「手品みたい」
  4. /nl/articles/2404/27/news003.jpg 顔の半分は童顔メイク、もう半分の仕上がりに驚がく 同一人物と思えない半顔メイクが860万再生「凄いねメイクの力」
  5. /nl/articles/2404/21/news011.jpg 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  6. /nl/articles/2404/27/news008.jpg 釣りに行こうとしたら、海岸に子猫が打ち上げられていて…… 保護後、予想だにしない展開に「神様降臨」「涙が止まりません」
  7. /nl/articles/2404/27/news010.jpg 巨大ウサギのデカさを伝えるため、2Lペットボトルを横に置いてみたら…… 衝撃の比較結果に「えっ、500mlじゃないんですか」「マジで大きい」
  8. /nl/articles/2404/26/news154.jpg 元「AKB48」メンバー、整形に250万円の近影に驚きの声「整形しすぎてて原型なくなっててびびった」
  9. /nl/articles/2404/26/news187.jpg 実写「シティーハンター」、最後まで見るとあるはずの仕様がない配慮「わかってる」「粋なはからい」「いい判断」
  10. /nl/articles/2404/25/news174.jpg 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
先週の総合アクセスTOP10
  1. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  2. 富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
  3. 2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに少々強引な寝かしつけをされると…… コントのようなオチに「爆笑!」「可愛すぎて無事昇天」
  4. 異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
  5. 【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
  6. 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  7. 1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
  8. 業務スーパーで買ったアサリに豆乳を与えて育てたら…… 数日後の摩訶不思議な変化に「面白い」「ちゃんと豆乳を食べてた?」
  9. 祖母から継いだ築80年の古家で「謎の箱」を発見→開けてみると…… 驚きの中身に「うわー!スゴッ」「かなり高価だと思いますよ!」
  10. 「妹が入学式に着るワンピース作ってみた!」 こだわり満載のクラシカルな一着に「すごすぎて意味わからない」「涙が出ました」
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」