なぜクイズプレイヤーは2015年から誤答するようになったのか? またはクイズとテクノロジーのいとも奇妙なる蜜月(1/3 ページ)
コンマ1秒の世界で起きていること。
こんにちは、QuizKnock編集長、自称東大生クイズ王の伊沢です。
今回のテーマは「誤答」です。テレビなどではよく「お手付き」といわれるやつです。早押しクイズで先にボタンを押したにもかかわらず、間違った答えを言ってしまうことですね。
実はね、増えてるんです、いま。何って、誤答が。
それも、数年前から。誤答、増えてるんです。どこで? クイズのガチな大会で。ガチすぎて、以降「ですます調」が「である調」になるほどガチな話なのです。
具体的には2014年の冬ごろから兆候があらわれ、2015年に明らかにクイズの潮流が変わったように僕は感じた。テレビでは映らないが日本最高峰が集うような、「クイズ界」におけるめぼしいクイズ大会で、プレイを通じての誤答が増えたように感じたのだ。しかも、偶然ではなく、戦略思想的な議論の進歩が招いた結果として、誤答が増えたように思うのだ。
2015年10月に上梓した拙著でも、まえがきでそのことに触れている。僕はこのとき、誤答の増加と早押しの劇的な進歩・スピードアップについて、勝負の単調化へと行き着く「何もない理想郷」として危機感とともに描写した。
2017年現在そのような事態は訪れていないし、2年以上たっても僕はクイズを楽しめている。ほぼ杞憂だったといえよう。
しかし、僕がその際に記述したタイミングで、クイズ界において支配的であった戦略観が変化したこともまた事実であるように、いまだに思う。
なぜ、そのような変化が起こったのか? そもそもそのような変化はどの程度目に見えるものであるのか?
今回はガチンコクイズコラムとして、真正面からその謎に挑むことにする。
「誤答」総論
そもそも、「誤答」について語る必要があるだろう。
ふつう、テレビのクイズ番組ではカルタのように「お手付き」といわれ、その問題で答えられなかったり、ノーペナルティで押しまくれたりする。ボケが必要で、なおかつ番組を進めるために正解を出さなければならないことを考えると極めて合理的なルールだろう。ガチンコ番組である「パネルクイズアタック25」ですら2問お休みという軽い罰則である。
それに対し、現在のクイズ大会における誤答の罰則は厳しめが潮流だ。オーソドックスな罰は、試合終了までに既定の問題数誤答すると失格となる「n×」(バツ)ルール。7月からアニメ化されるクイズ漫画『ナナマルサンバツ』も、7問正解で勝利、3問誤答で失格というルールにちなんで名付けられている。
なぜクイズ大会の誤答罰が厳しめかというと、それはひとえに「早押しの技術」にある。多くのクイズプレイヤーは、問題文の構造を熟知し、どこで押すのが最適かを、たとえ新作問題に対してもすぐ把握してボタンを押すことができる。つまり、「このあたりで押せば分かるだろうな……」というポイントでボタンを押せば、けっこうな確率で正解できてしまうのだ。
このような人間が複数集まり野放図にボタンを押すと、もはやクイズではなく反射神経と確率のゲームになってしまう。そのため、このような賭けが頻発しないように、クイズプレイヤーには厳しい誤答の制約が課されている、というわけである。
しかし、このような厳しい制約を課した上でなお誤答が増えているというのだ。にわかには信じがたい。
そこで、近々のデータで検証してみることにした。
データ分析
分析の対象としたのは、現在日本最大級のクイズ大会にして学生短文クイズのNo.1決定戦である「abc」シリーズ、そして社会人まで含めた大会では日本有数の規模を誇る「勝抜杯」の2つ。いずれも15回以上開催という歴史ある大会である。そして、前者は5◯2×連答付き(連続で正解するとボーナスが入る)、後者は7◯3×という毎年行われる定番ラウンドがあり、年を経ての分析に適しているといえよう。これらのコースにおいて、過去10年分の誤答総数や誤答率を調べてみた。
まずは「abc」から。2015年以降の3大会はいずれも誤答数が多く、10年の間で比較したときの誤答数は1位、3位、5位と上に集中した。誤答の数は確かに増えている。しかし、誤答率で見るとそこまで高い結果にはならなかった。2014年以前とさしたる違いがなかったのである。ルールは10年間でまったく変化していないのだから、ここ3年はより激戦になった、といえるであろう。
「勝抜杯」についてはより意外な結果を得た。こちらは2017年大会のデータが手元になかったため直近2年分を過去と比較する形で調べたが、誤答数はごく平均的。誤答率も平均的だった。
誤答数はまだしも、誤答率に関しては僕の感覚とは異なる結果だ。なぜだろう?
気になったので他の値も出してみた所、興味深い結果が出た。
「abc」の5◯2×は4セット、「勝抜杯」の7◯3×は8セット行われ、それぞれ別々の参加者がプレイする。そこで、セットごとにどれだけ誤答数にブレがあるかを、誤答数の標準偏差(セット間での誤答数の幅広さを表す数値)を求めて調べてみた。すると、「abc」も「勝抜杯」も、直近2年のデータが10年間でのワースト1・2という結果が出たのである。
これは各セットでの誤答総数の変化がほとんど見られないということ、つまり、近年の試合運びが極めて均質的なものになったことを示している。
かつては「誤答が多い試合と少ない試合の差が激し」かったのが、現在は「どの試合も同じぐらい誤答が出る」のだ。これがおそらく「誤答が多くなった」印象を与えているのだろう。実際に数だけで見れば誤答数が増えている面もあるが、それ以上にこのデータが裏付けている「印象の効果」が、僕に誤答増加感を植え付けたものと思われる。
では、なぜこのような「どの試合でも一定以上誤答が出る」ようになったのだろうか。
これを今回は「クイズ戦略の変化」の視点から読み解いていこう。
誤答戦略の変化
そもそも、なぜ「戦略の違い」が「誤答の違い」につながるのか。そこから説明しよう。
誤答が増える前、2013年ごろまでの時期にクイズ界のトップ層に受け入れられていた戦略的思想は、「無駄な誤答をしないことが勝負どころでの優位につながる」というものであった。ある程度誤答にゆるいルールだとしても、危ない問題に早めに飛び込んだりはせず、答えが確定した段階でボタンを点ける。相手と競ってきて、あと数問で勝負が決まってしまうような状況に追い込まれた、あるいは一気に決着をつけてしまうべき、というシチュエーションで初めて、誤答の余裕を生かして一気に攻める。これが主流の戦術であった。
この戦術は極めて合理的である。序盤で誤答をしてペナルティを負うと、その後長い間そのペナルティによる制約とお付き合いしないといけない。ターボをかけるなら後半の追い詰められた状態で、というのは極めて理想的であり、この戦術はもう戦術よりは「常識」といえるほど、トッププレイヤーに染み渡っていた考え方である。クイズ王・古川洋平さんはこの戦術を「早く押して間違えない」という言葉で表した。一見矛盾するこの言葉は、「正確さを前提として理想値の押しをたたき出す」ことを表した名言である。
この考え方に変化が生じたのが2014年ごろである。そして新たに出現した思想は「誤答罰は最大限有効活用すべき」というものであった。例えば前述の7○3×なら「2回は間違うことができるので、最低2度はリスクを冒すべき」と考えてクイズを始めるのである。
2014年以前の思想においても、この考え方の片鱗(へんりん)はあった。序盤は誤答しないようにしても、負けそうになったら誤答覚悟で押す。そのために誤答の猶予を残しておく、というのが当時のイデオロギーである。しかし、それ以後の潮流においては「2つ誤答することを事前に許容してスタートを切る」のである。
より深く説明しよう。前者の考え方は、試合中に頭のなかで「誤答しないスイッチ」から「誤答覚悟で攻めるスイッチ」への切り替えを行う。誤答しないスイッチのうちになるべく多くの正解を稼ぎ、勝ち切るチャンスor負けそうなピンチになった終盤で後者のスイッチに切り替えるのだ。
これに対して、後者の考え方では始めから「2回分の誤答猶予を使って7問を正解するスイッチ」一本で行くのである。厳密には、終盤のピンチで「誤答覚悟で攻めるスイッチ」で攻めるのだが、この戦略では前者にくらべてより前がかりな早押しが行われるのである。
スイッチ1つだけ、というと簡単そうだが、実はこれがかなり難しい。実際の所、正解もしくは誤答をするたびに押すスピードを微調整することと同義だからである。正解をしたならゴールが近づくから少しペースを早め、誤答したなら猶予が減ったから少し遅める。このあたりは当人の肌感覚によるところが大きく、ここでは「でもそういうことが練習の末にできるんすよマジで」としか言いようがない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの行動”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」【大谷翔平激動の2024年 「家族愛」にも集まった注目】
-
60代女性「15年通った美容師に文句を言われ……」 悩める依頼者をプロが大変身させた結末に驚きと称賛「めっちゃ若返って見える!」
-
「庶民的すぎる」「明日買おう」 大谷翔平の妻・真美子さんが客席で食べていた? 「のど飴」が話題に
-
皇后さま、「菊のティアラ」に注目集まる 天皇陛下のネクタイと合わせたコーデも……【宮内庁インスタ振り返り】
-
真っ黒な“極太毛糸”をダイナミックに編み続けたら…… 予想外の完成品に驚きの声【スコットランド】
-
71歳母「若いころは沢山の男性の誘いを断った」 信じられない娘だったけど…… 当時の姿に仰天「マジで美しい」【フィリピン】
-
新1000円札を300枚両替→よく見たら…… 激レアな“不良品”に驚がく 「初めて見た」「こんなのあるんだ」
-
家の壁に“ポケモン”を描きはじめて、半年後…… ついに完成した“愛あふれる作品”に「最高」と反響
-
ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
-
「ほぼ全員、父親が大物芸能人」 奇跡的な“若手俳優の集合写真”が「すごいメンツ」と再び話題 「今や全員主役級」
- ザリガニが約3000匹いた池の水を、全部抜いてみたら…… 思わず腰が抜ける興味深い結果に「本当にすごい」「見ていて爽快」
- ズカズカ家に入ってきたぼっちの子猫→妙になれなれしいので、風呂に入れてみると…… 思わず腰を抜かす事態に「たまらんw」「この子は賢い」
- フォークに“毛糸”を巻き付けていくと…… 冬にピッタリなアイテムが完成 「とってもかわいい!」と200万再生【海外】
- 鮮魚スーパーで特価品になっていたイセエビを連れ帰り、水槽に入れたら…… 想定外の結果と2日後の光景に「泣けます」「おもしろすぎ」
- 「申し訳なく思っております」 ミスド「個体差ディグダ」が空前の大ヒットも…… 運営が“謝罪”した理由
- 「タダでもいいレベル」 ハードオフで1100円で売られていた“まさかのジャンク品”→修理すると…… 執念の復活劇に「すごすぎる」
- 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
- ある日、猫一家が「あの〜」とわが家にやって来て…… 人生が大きく変わる衝撃の出会い→心あたたまる急展開に「声出た笑」「こりゃたまんない」
- 友人のため、職人が本気を出すと…… 廃材で作ったとは思えない“見事な完成品”に「本当に美しい」「言葉が出ません」【英】
- セレーナ・ゴメス、婚約発表 左手薬指に大きなダイヤの指輪 恋人との2ショットで「2人ともおめでとう!」「泣いている」
- 「何言ったんだ」 大谷翔平が妻から受けた“まさかの仕打ち”に「世界中で真美子さんだけ」「可愛すぎて草」
- 「絶句」 ユニクロ新作バッグに“色移り”の報告続出…… 運営が謝罪、即販売停止に 「とてもショック」
- 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
- アレン様、バラエティー番組「相席食堂」制作サイドからのメールに苦言 「偉そうな口調で外して等と連絡してきて、」「二度とオファーしてこないで下さぃませ」
- 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
- 「やはり……」 MVP受賞の大谷翔平、会見中の“仕草”に心配の声も 「真美子さんの視線」「動かしてない」
- ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
- 「母はパリコレモデルで妹は……」 “日本一のイケメン高校生”グランプリ獲得者の「家族がすごすぎる」と驚がくの声
- 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
- 「真美子さんさすが」 大谷翔平夫妻がバスケ挑戦→元選手妻の“華麗な腕前”が話題 「尊すぎて鼻血」