「しんにょう」の点が1つの字と2つの字があるのはなぜ?

迷ったら「点1つ」でOK。

» 2017年07月08日 11時00分 公開
[QuizKnockねとらぼ]

 PCなどで「しんにょう」が付く漢字を表示すると、文字によってしんにょうの形が変わる場合があります。

 区別するために、点の数から「一点しんにょう」「二点しんにょう」と呼ばれます。では、これらは具体的にどう違うのでしょうか? 漢字検定1級にこれまで20回以上合格している、漢字大好きな筆者が解説します。

しんにょうの字体差に隠れた歴史を追う

 まず前提として知っておいてもらいたいのは、中国の長い歴史の中で、「正しい漢字の形」も変わってきたということです。

 書道の作品などで見られる流れるような草書体や、学校教育で用いられる字体の基となった楷書体は、全て中国の異なる時代に起源を持っています。

 明治時代の日本では学校教育制度の近代化が進み、子どもたちに教える漢字の形を法律で制定しようという動きが生まれました。このときに模範とされたのが、中国・清の時代(西暦1700年ころ)に編纂(へんさん)された『康煕字典(こうきじてん)』でした。つまり、1700年ころの中国で正しいとされていた漢字の形が「二点しんにょう」だったため、明治政府はそれを取り入れたのです。

 時は流れて第二次世界大戦の終結後。日本の政府はより分かりやすい教育を目指して、それまで学校で教えていた漢字の一部を簡略化するという計画を実行しました。このとき、「二点しんにょう」がまとめて「一点しんにょう」に変更されたのです。

 ところで、この「しんにょうの点を1つ減らす」というアイデアはどこから生まれたのでしょうか? 実は、「一点しんにょう」が正式な形とされていた時代があったのです。中国・唐の初期(西暦650年ころ)にあたります。

 書道の世界では、楷書の手本は唐の初期にあり、というのが原則でした。そのため、二点しんにょうが制定される以前も以後も、書道界では一点しんにょうで書くことが普通だったのです。また、書道に関わりのない一般人でも、手書きでは一点しんにょうの方が主流でした。

書道家たちは一点しんにょうの伝統を固く守り続けた

 こうして、人々になじみ深い形へ統一されたように思えたしんにょうの字体問題。しかし、ここでツメの甘さが悪い結果を招いてしまいます。「常用漢字は一点しんにょうを正しい形とする」と定めたものの、常用漢字以外の漢字については特に決めず、二点しんにょうのまま放置してしまったのです。

新たに追加された常用漢字。扱いはどうするの?

 2010年、新たに196字が追加された「新常用漢字表」が作成されました。このとき、問題が発生しました。先に述べたように、もともと常用漢字の範囲外だった「二点しんにょう」の漢字を追加するとき、一点に統一するのか、二点のままにするのかで意見が分かれたのです。

 結果として、問題のしんにょうが含まれていた「謎(なぞ)」「遜(へりくだ-る)」「遡(さかのぼ-る)」の3文字は、「二点しんにょう」のまま新常用漢字表に追加されることになりました。つまり、「常用漢字は一点しんにょうが正しい」という原則に例外が生まれてしまったのです。

 その主な理由は、PCなどの情報面にあるといわれています。つまり、これらの漢字が常用漢字に追加される前に作られた文字のフォントが広く普及しているため、今から「一点しんにょう」を正式な字体にすると対応が面倒だと考えられたのです。

 ただし、原則は「常用漢字は一点しんにょうが正しい」なので、現在これらの3文字については特例として「二点しんにょうと一点しんにょうのどちらも正しい」として教えられることが多いようです。

 「一点しんにょうと二点しんにょう、この漢字はどっちだったっけ?」と迷って使い分けが分からなくなった人は、取りあえず一点しんにょうで書いておけば問題ありません。なにせ、書道の世界では“全て”一点しんにょうなのですから。

制作協力

QuizKnock


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2404/18/news134.jpg 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  2. /nl/articles/2404/18/news025.jpg 生後5日の赤ちゃん、7歳のお姉ちゃんから初めてミルクをもらうと…… 姉も驚きの反応がかわいい
  3. /nl/articles/2404/18/news057.jpg 9カ月の赤ちゃん、バスで外国人の女の子赤ちゃんと隣り合い…… 人生初のガールズトークに「これは通じあってますね!」「ベビ同士の会話、とろけます」
  4. /nl/articles/2404/17/news037.jpg 【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
  5. /nl/articles/2404/17/news034.jpg 「妹が入学式に着るワンピース作ってみた!」 こだわり満載のクラシカルな一着に「すごすぎて意味わからない」「涙が出ました」
  6. /nl/articles/2404/18/news155.jpg 大谷翔平選手、ハワイに約26億円の別荘を購入 真美子夫人とデコピンとで過ごすかもしれないオフシーズンの拠点に「もうすぐ我が家となる場所」
  7. /nl/articles/2404/17/news179.jpg 「ケンタッキー」新アプリに不満殺到 「酷すぎる」「改悪」の声…… 運営元「大変ご迷惑をおかけした」と謝罪
  8. /nl/articles/2404/16/news192.jpg 「ゆるキャン△」のイメージビジュアルそのまま? 工事の看板イラストが登場キャラにしか見えない 工事担当者「狙いました」
  9. /nl/articles/2404/17/news129.jpg 「ハーゲンダッツ硬すぎ!」と力を入れたら……! “目を疑う事態”になった1枚がパワー過ぎて約8万いいね
  10. /nl/articles/2404/16/news175.jpg 「そうはならんやろ」をそのまま再現!? 「ガンダムSEED FREEDOM」のズゴックを完全再現したガンプラがすごすぎる
先週の総合アクセスTOP10
  1. 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
  2. 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  3. 安達祐実、成人した娘とのレアな2ショット披露 「ママには見えない!」「とても似ててびっくり」と驚きの声
  4. 兄が10歳下の妹に無償の愛を注ぎ続けて2年後…… ママも驚きの光景に「尊すぎてコメントが浮かばねぇ」「最高のにいに」
  5. “これが普通だと思っていた柴犬のお風呂の入れ方が特殊すぎた” 予想外の体勢に「今まで観てきた入浴法で1番かわいい」
  6. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  7. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評
  8. お花見でも大活躍する「2杯のドリンクを片手で持つ方法」 目からウロコの裏技に「えぇーーすごーーい」「やってみます!」
  9. 弟から出産祝いをもらったら…… 爆笑の悲劇に「めっちゃおもろ可愛いんだけどw」「笑いこらえるの無理でした」
  10. 3カ月の赤ちゃん、パパに“しーっ”とされた反応が「可愛いぁぁぁぁ」と200万再生 無邪気なお返事としぐさから幸せがあふれ出す
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」