ビットコインはなぜ「安全」と言えるのか? 仕組みをやさしく解説する
京大生がやさしく解説。
こんにちは。QuizKnockライター、京都大学のコジマです。
さてみなさんは、少し前から世間を騒がせている仮想通貨「ビットコイン」をご存じだろうか。「もちろん知ってる」という場合でも、詳しく聞かれると答えられない、という方が多いのでは?
つい先日、ビックカメラの一部店舗での決済に使用できるようになったり、取引サイトのCMが地上波でも流れ出したり……と、実際のところ私たちの生活の中に徐々に入り込んできているのは確かだ。
もしかすると初耳という方もいるかもしれないので、ここで簡単に説明すると、ビットコインは、
- 実際の通貨のように使える、データ上にのみ存在する通貨
- 通貨として実際に使えるような画期的な仕組みを持ち、次世代の通貨となる可能性を秘めている
という新技術である。
ビットコインは、2008年にサトシ・ナカモトが発表した論文で明らかになったアイデアだ。サトシ・ナカモトは、日本人風の名前をしているものの真の国籍は不明。当初は個人なのか集団なのかさえ判明せず、過去には本人だと名乗り出た人物もいるが、いまだ疑問も残るとされている。
2009年1月にサトシ・ナカモトの理論を実現したソフトウェアが開発され、初めての取引が行われた。初めて実際の商品(ピザ)の購入に使われたのは2010年の5月。それから7年が経ち、ビットコインの交換所は充実してきている。しかしながら、EdyやSuicaなどの電子マネーに比べビットコインは使える場面が少なく、まだまだ普及しているとは言いがたい。
まずはビットコインの使い方を確認してから、ビットコインがなぜ通貨として使えるのか、その仕組みを見ていこう。
ビットコインの使い方
まず、ビットコインを管理する「ウォレット」というアプリやソフトを手に入れる。自分のスマートフォンやPCに合ったものをダウンロードするだけだ。
入れ物が手に入ったら、次はビットコインそのものを手に入れる。知り合いがビットコインを持っていれば直接もらうこともできるし、インターネットで取引所を探し、円などの他の通貨で買うこともできる。
ちなみに、bitFlyer(代表的なビットコインの取引所)で見た直近(2017年7月10日)のレートは、1BTC(ビットコインの単位)=29万5000円程である。3月頭には15万円程度だったので、かなり値上がりしている。めちゃくちゃ高いが、最小で0.00000001BTC(1Satoshiと呼ばれる)単位で受け渡しできるので大丈夫。
ビットコインにはアドレスが設定されていて、支払うときにはウォレットに相手のビットコインアドレスと金額を入力すればOK。クレジットカードのような暗証番号などは必要なく、簡単に取引ができる。
ビットコインの取引にかかる手数料は銀行振込などと比べてもごく少額。しかもビットコインには国境がないので国際決済も簡単だ。
ここまでをまとめると、ビットコインの魅力は
- 決済が簡単
- 手数料がほとんどゼロ
- 国境関係ナシ
といったところである。取りあえず形だけ知っておきたいという方はここまででもOK。
でも、なんだか納得できないな〜という人はぜひ、次の項を読んでいただきたい。
なんか信用できないんだけど……?
簡単なのはいいが、それでは「そんなんで本当にお金として使えるの? 信用できない!」となってしまうのが自然な思考である。
通貨が通貨として使えるには信用が要る。例えば1万円札なら、日本政府が「1万円の価値があるよ!」とお墨付きを与えて発行しているし、透かしが入っているかどうかで“本物の”お金であることが分かる。Edyなどの電子マネーなら、安全な暗号化のもとで、管理会社が取引の記録を全て管理することで信用を与えている。
では、「新しいお金」ビットコインでは?
実はビットコインの場合、今までの通貨や電子マネーとは全く違う革新的な方法で信用性を高めているのだ。
信用のモトその1:ユーザーのネットワーク
まず、ビットコインには中央で通貨を管理する機構のようなものが存在しない。
ビットコインのユーザーは全員、他のいくつかのユーザーと直接つながっている。ユーザーの間でネットワークが構築されているのだ。そして、各ユーザーは今までの取引記録全てが記録された台帳を共有している。
ビットコインで取引をしたとき、ウォレットは「□□から△△へ○○BTC支払いました」という取引内容を、つながったユーザー(のウォレット)に送信する。それを受け取ったユーザーは、その内容を他のつながっているユーザーに転送する。
これを繰り返していくと、ネットワークを構成するユーザー全員が同じ取引内容を共有することになる。つまり、不正を行ってもその内容は全員に共有されてしまうのだ。
ただしこれだけでは、「共有されるだけ」ともいえる。膨大なデータに埋もれて終わるかもしれない。そこで、誰かが内容を確かめ、不正な取引は弾かなければいけない。でも管理者はいない。どうすればいいんだ……?
信用のモトその2:マイニング
その「内容を確かめる」ために、ビットコインでは「マイニング」という仕組みが用意されている。簡単にいえば、マイニングとは取引台帳のチェック作業である。
ビットコインの流れを記録した取引台帳は、約10分間ごとに取引内容をまとめた「ブロック」が連なって(これが「ブロックチェーン」)作られている。ビットコインの世界では、ユーザーのうちの誰かがブロックに取引内容をまとめ、今のブロックチェーンにつなげていくことで取引の台帳をつくる。
この台帳がないと、取引の不正を見逃すことになるのだ。よって、マイニングは「信用創造のための裏付け作業」といえる。
ユーザーであれば誰でもブロックを作ることができるが、ブロックチェーンにつながるブロックは1つだけで、ユーザーはそのわずか1席を競うこととなる。
それでは、誰が作ったブロックがつながるのか?
その答えは、「難しい問題」を解いた人のブロック。「難しい問題」というのは「コンピュータを駆使しても解くのに時間がかかる」ということ。
この「難しい問題」を説明するのもまた難しいのだが、ざっくり言うと「前後のブロックのデータと値(nonce)を合わせて変換したとき、条件に合った値になるようなnonceを求める問題」……より正確に知りたい方は下記リンクを参照のこと。
- 参考:ビットコインとは何か? 第4回:ビットコインの仕組み(取引承認と採掘)(ビットコイン日本語情報サイト)
誤解を恐れずかみ砕くならば、「いくつかのブロックのデータを使って生成される問題」に回答することを目指すのだ。トランプをめくっていって、出た数字を順に足していくみたいな感じだ。この問題は、超高性能のコンピュータをフル活用すると10分くらいで解ける難易度に調整されている。
取引のデータを集めてブロックにし、問題を解くことができれば、そのブロックがビットコインネットワークの「正しいブロック」と認められ、ネットワーク全体で共有される。そして、そのブロックを作ったユーザーには報酬のビットコインが支払われる。問題を解いて報酬という金脈を掘り当てることを目指すので「マイニング(採掘)」と呼ばれている。
1つのブロックをマイニングしたときの報酬は、そのブロックに含まれた取引で生じた手数料+12.5BTC(2017年7月現在)。1BTC=約29万5000円で計算すると……約370万円!これだけの報酬が10分ごとに発生している。
ビットコインのユーザーの中には、マイニングを行う「マイナー」がたくさんいて、報酬を獲得すべくブロック作りの速さを競うのだ。「おっしゃ! マイニングで一発もうけたろ!」とお考えのそこのあなた。マイニングで利益を出すには、十分に勉強した上で、超ハイスペックなコンピュータとそれを動かす電気代が必要だ。日本の電気代を考えると、素人じゃムリ。おとなしく株とかFXとかで頑張ろう。
この「前後のブロックにより解が変わる問題」は、マイニングを活発にするだけでなく、改ざんを難しくする効果も担っている。もし悪意を持った誰かがブロックチェーンの何段目かのブロックをいじったとすると、そのブロックの問題の答えが変わるので、もう一度解き直して設定しなければいけない。
さらに、それよりも新しいブロックは全て問題の答えが変わっているので、それらを全て更新する必要がある。問題を解いている間にも新しいブロックは増えるし、そもそもブロックチェーンは全員に共有されているしで、台帳を都合よく変更するのはまず不可能だ。
これがもし、台帳を一箇所で管理しているとすればどうだろう? 悪者がサーバに侵入して台帳を変えられてしまえばOUTなので、とにかくセキュリティを強くするしかない。内部からパスワードが漏れる可能性もある。1点集中は脆いのだ。
まとめ
- ビットコインは手軽に使えて安全
- 巧妙なシステムに支えられた信用性を持つ
- 基本的には「買う」ことで入手可能だが、マイニングでも増やせる
ビットコインは利用できる場面がまだまだ少なく、現実の通貨に置き換わるのはまだ先だろう。また、(仕組みが安全とはいえ)ウォレットの管理がずさんだと資産を失う危険があるし、税をどうするかなどといった法律面や、相場の変動が激しいなどの経済面での問題も残る。
有史以来、石・貝・金属・紙とその素材を変えてきた貨幣が物理的な形を失い、取引がデータのやりとりのみで成立する日は来るのか。ビットコインの登場により、その実現可能性は開かれ始めている。
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