堀井雄二の地元で体感するドラクエ30年と原点 「ドラクエミュージアム」&「堀井雄二展」、洲本会場レポート
2016年の東京から回ってきたドラクエ30周年企画展。最後の淡路島・洲本会場は、古き赤レンガ倉庫がファンタジー世界を演出するマダンテ級のイベントだった。
ドラクエファンなら思わず割りたくなるようなツボ、勇者たちの旅路に登場しそうな重厚なレンガ造りの建物。「ドラゴンクエスト」シリーズの生みの親、堀井雄二さんの出身地である兵庫県洲本市(淡路島)で、企画展「ドラゴンクエストミュージアムセレクションズ」と「堀井雄二展」が開催中だ(7月16日〜8月7日)。
シリーズ30周年を記念して2016年から東京、大阪、名古屋と回ってきた、ドラクエの歴史を振り返る企画展の最終地。ただ堀井さんの故郷というだけでなく、まさにドラクエワールドから飛び出したかのようなロケーションがドラクエファンの心をくすぐる、ディティール満載のイベントだった。「堀井雄二展」も本会場のみの開催……冒険のもようをお伝えしよう。
赤レンガを背景に勇者たちのジオラマが躍動
本イベントは、洲本バスセンターから徒歩1分の「洲本市民広場横 赤レンガ倉庫」で行われている。この倉庫群は、今から100年以上前、鐘淵紡績(現・カネボウ)によって建てられた。ヨーロッパ風の歴史あるたたずまいは、まるでドラクエのお城のよう。
まずは「ドラゴンクエストミュージアムセレクションズ」。中に入った瞬間、荘厳な雰囲気に圧倒された。「ロトシリーズ(ドラクエI〜III)の名シーンの絵画」「鍛冶職人謹製のロトの装備」「堀井雄二さんが記した開発資料集」が、広い空間に一挙に展示されている。
特に、レンガ造りの背景をバックにしたロトの装備は、とても神々しく、いつまでも見ていたいくらいだった。今回のイベントは、既に東京、大阪、名古屋で行われている。洲本市の方によると、その全てを訪れたファンの中には、「洲本の展示が一番よかった」と話していた人もいるそうだ。確かにそう思わせられるだけの雰囲気がある。
ドラクエ全シリーズのパッケージと、歴代主人公たちのパネルがあるフロアを抜けると、天空城のジオラマがお出迎え。ここから先には、「天空シリーズ(ドラクエIV〜VI)のジオラマ」が展示されている。
筆者は展示物のほとんどを、東京で開催された「ドラゴンクエストミュージアム」で観ていたのだが、あのときとは違った趣を感じた。レンガ造りの歴史ある壁をバックにするだけで、非日常感が生まれ、展示物の雰囲気は変化する。さらに「堀井さんのふるさとで観ている」という事実が、特別感を生み出し、より一層の感動を呼び起こすのだ。
ドラクエVII〜Xに関しては、キャラクターと名場面のパネルが展示され、プロモーションビデオが流されていた。一つ一つ見ていると、プレイ中のさまざまな思い出がよみがえるようだった。
ドラクエ生みの親の出発点を知る「堀井雄二展」
同時開催の「堀井雄二展」は、洲本だけの特別企画。堀井さんの冒険の歴史、すなわちドラクエが世に送り出されるまでの道のりが、ファミコン風のドット絵で表現されている。
ここでは、石ノ森章太郎先生監修の『マンガ ドラゴンクエストへの道』を自由に読むことができる。堀井さんをはじめとした、ドラクエ製作陣たちの奮闘記だ。実はこのマンガには「オリジナル版」と、一部の内容が削除された「再編集版」が存在する。今回用意されているのは貴重な「オリジナル版」。「面白いゲームを子どもたちに届けたい!」という製作スタッフの熱い思いを存分に感じ取ることができた。
そしてなんと、堀井さんが手がけた初期の三作品「ラブマッチテニス」「ポートピア連続殺人事件」「軽井沢誘拐案内」も、当時のPCで試遊することも可能! パッケージ、取扱説明書なども手に取って見ることができる。
「ラブマッチテニス」は、その名の通りテニスゲーム。堀井さんが、エニックス(現スクウェア・エニックス)の「第1回 ゲーム ホビープログラムコンテスト」に応募し、入賞した作品。プログラミングも堀井さんが手掛けている。コントローラーでキャラクターを動かして、テニスボールを打ち合う。シンプルながら奥が深いゲームだ。
「ポートピア連続殺人事件」は、ファミコンに移植されたことで有名なアドベンチャーゲーム。発売当時は、どんでん返しのあるストーリーが話題を呼んだ。現在でも「犯人はヤス」というフレーズが「ネタバレ」を表すインターネットスラングとして使われるなど、ゲームファンに与えた影響は大きい。「すもと(洲本)」がゲーム内に登場し、実際の洲本港の写真とゲーム画面を比べてみると、なんとなく雰囲気が似ているかも?
「軽井沢誘拐案内」は、ちょっとえっちなミステリーアドベンチャー。ドラクエも「ぱふぱふ」に代表されるように、毎シリーズ、必ずお色気系のキャラ、イベント、装備といったものが登場する。このゲームはその原点ともいえるだろう。
気のすむまでイベントを堪能し、会場の外に出ると、7月15日に除幕したばかりの「スライム&ロト装備の銅像」が目に飛び込んできた。堀井さんいわく「スライムに幸福、盾に厄よけ、剣に悪縁を切る願いを込めたパワースポット」とのこと。
「あの頃、僕らは勇者だった」……、これは最新作「ドラゴンクエストXI」のWebプロモーション映像で使われていたフレーズだ。歴代の主人公たちの歩みは、私たちドラクエファン自身の歩みでもある。歴史ロマンあふれる雰囲気や堀井さんのルーツが感じられる洲本でしか会えないひと夏のドラクエワールド――ここで観た世界は、決して私たちのぼうけんのしょからきえることはないだろう。
(亜木本レイ)
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