関東だけ「ICカードのチャージ残高不足」で入場できないのはなぜか? 駅改札に見る“東西差”の理由

関西は入れるのに!

» 2017年08月06日 11時00分 公開
[QuizKnockねとらぼ]

 「ピッ」とタッチするだけで駅の改札を通過できる交通系ICカード。SuicaやPASMO、ICOCAにSUGOCAなどさまざまな種類があり、日常的に電車に乗る人にとっては今や必需品です。

 少し前の話になりますが、この交通系ICカードでの駅への入場について、東京と大阪の違いを描いたマンガがTwitter上で大きな話題となりました。関東圏では、カードのチャージ残額が少ないと改札内に入場できないのに対し、関西圏では問題なく通過できるというのです。

 残額不足でエラーとなり、「ピンポーン!」の音とともに改札の小さな扉(ちなみに「フラップドア」といいます)に止められてしまった経験のある人は多いはず。なぜこのような違いが生まれたのか、調べてみました。

各社の約款はどうなっている?

 まずは、地域による差が本当なのか、鉄道各社の約款(やっかん)をチェックしてみました。すると、JR東日本のWebサイトには次のように書かれていました。

 第24条 3. 次の各号の1に該当する場合には、ICカード乗車券を自動改札機で使用することはできません。

(1)入場時のSF残額が当該駅の最低運賃相当額に満たないとき(Suica定期乗車券の券面表示区間内の駅から入場する場合を除きます。)

「Suicaに関する規約・特約」(JR東日本)から引用

 つまり、ある駅から乗ろうとするとき、最低でも隣の駅までの運賃くらいは残ってないと改札を通せないよ、ということです。これは東京メトロでも似たような文言になっています。

 次に、JR西日本はどうでしょう。

 第10条 3 次の各号の1に該当する場合には、ICOCA乗車券は直接自動改札機で使用することが できません。

 (1) 入場時にSF残額がないとき(ICOCA定期券の券面に表示された有効期間内で券面 表示区間内から入場する場合を除きます。)

「ICカード乗車券取扱約款」(JR西日本)から引用

 これはSF残額(SF=Stored Fare:ストアードフェア=蓄積された料金)がないとき以外は、つまり1円でもチャージ残額が残っていれば改札内に入れるということです。

 ちなみに、JR東海の約款はというと、改札入場時のICカード残額の規定はありません。交通系ICカードをタッチさえすれば、残額が0円でも改札内に入れてしまいます。

 このように、各社はそれぞれ異なる約款に従って、改札機のシステムを設定していると考えられます。

チャージ残額がないときの各社の違い

違いが生まれた理由

 では、これらJR各社の約款がどうして異なるのかが次の問題。異なる理由は諸説あり、大きく次の2つにまとめられます。

1. かつてのプリペイド式磁気カードでも同様の違いがあった

 つまり、「昔のプリペイドカードについても各社で違う仕組みで、それぞれを引き継いだよ」ということ。でも、この説明はあまり疑問の解決にはなっていないように思えます。結局は、なぜ磁気カード時代には違いがあったのか、という話になってしまいますから。

2. 鉄道営業法15条の解釈の違いによる

 こちらは、「鉄道各社が法律を違ったように解釈しているので、会社によって約款が違うよ」ということ。では、肝心の鉄道営業法15条には何が書かれているかというと、

 第十五条

 旅客ハ営業上別段ノ定アル場合ノ外運賃ヲ支払ヒ乗車券ヲ受クルニ非サレハ乗車スルコトヲ得ス

 この文章を忠実に読めば、「客は運賃を先払いしてから乗りましょう」ということで、JR東日本はこの論理に従っているのでしょう。しかし、「別段ノ定」、つまり例外の規定があれば、運賃をまだ払っていない客も乗ることができ、JR西日本や東海はこの解釈を採用しているのでは、ということです。

 なんとなく納得できるかもしれませんが、それでも「なぜ解釈を統一しないんだ!」という思いもわいてきます。

JR東日本に聞いてみた

 ここは直接、JR東日本に聞いてみることに。

筆者:地域ごとに改札から入場できる条件が違うのはなぜですか?

JR東日本:鉄道各社ではそれぞれ独自に仕組みを採用しているからです。

筆者:こちらが調べたところ、「各社で鉄道営業法の解釈に違いがある」という説を見かけましたが、こちらについてはいかがでしょうか?

JR東日本:鉄道営業法との関連は不明ですが、JR東日本の約款で、各駅における最低運賃が残額として残っていないと入場させない、と決められています。


 残念ながら回答はここまで。結局は「約款の違い」に理由を求めるしかないようです。

 最後に、関西から関東に初めて来られる方はチャージ残額にくれぐれもお気を付けください。残額不足時に鳴り響くあの「ピンポーン!」という音と、後ろに並ぶ人たちの視線はかなりのプレッシャーになりますから……。

制作協力

QuizKnock


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2404/27/news009.jpg しぶとい雑草“ドクダミ”を生やさない超簡単な方法が115万再生! 除草剤を使わない画期的な対策に「スゴイ発見」
  2. /nl/articles/2404/27/news020.jpg パパに笑顔を見せる4カ月の赤ちゃん、ママの顔を見ると…… あるあるな反応に「なんで?!」「ママをすごく信頼してる証拠」とさまざまな声集まる
  3. /nl/articles/2401/26/news015.jpg スーパーで買ったレモンの種が1年後…… まさかの結果が635万再生「さっそくやってみます」「すごーい!」「手品みたい」
  4. /nl/articles/2404/27/news003.jpg 顔の半分は童顔メイク、もう半分の仕上がりに驚がく 同一人物と思えない半顔メイクが860万再生「凄いねメイクの力」
  5. /nl/articles/2404/21/news011.jpg 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  6. /nl/articles/2404/27/news010.jpg 巨大ウサギのデカさを伝えるため、2Lペットボトルを横に置いてみたら…… 衝撃の比較結果に「えっ、500mlじゃないんですか」「マジで大きい」
  7. /nl/articles/2404/26/news154.jpg 元「AKB48」メンバー、整形に250万円の近影に驚きの声「整形しすぎてて原型なくなっててびびった」
  8. /nl/articles/2404/26/news187.jpg 実写「シティーハンター」、最後まで見るとあるはずの仕様がない配慮「わかってる」「粋なはからい」「いい判断」
  9. /nl/articles/2404/25/news174.jpg 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
  10. /nl/articles/2404/27/news008.jpg 釣りに行こうとしたら、海岸に子猫が打ち上げられていて…… 保護後、予想だにしない展開に「神様降臨」「涙が止まりません」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  2. 富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
  3. 2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに少々強引な寝かしつけをされると…… コントのようなオチに「爆笑!」「可愛すぎて無事昇天」
  4. 異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
  5. 【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
  6. 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  7. 1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
  8. 業務スーパーで買ったアサリに豆乳を与えて育てたら…… 数日後の摩訶不思議な変化に「面白い」「ちゃんと豆乳を食べてた?」
  9. 祖母から継いだ築80年の古家で「謎の箱」を発見→開けてみると…… 驚きの中身に「うわー!スゴッ」「かなり高価だと思いますよ!」
  10. 「妹が入学式に着るワンピース作ってみた!」 こだわり満載のクラシカルな一着に「すごすぎて意味わからない」「涙が出ました」
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」