プロ棋士もハマった恋愛番組「バチェラー・ジャパン」とはなんだったのか 広瀬八段×久保裕丈、異色の特別対談(1/2 ページ)
「羽生さんに魂を抜かれた人」と「バラおじさん」の対談が読めるのはねとらぼだけ!
Amazonのオリジナル番組「バチェラー・ジャパン」で主演を務めた久保裕丈さん。華麗な経歴と番組内での洗練された立ち振舞により、少なくないネットユーザーをノックアウトさせたことで知られています。将棋の若手トップ棋士・広瀬章人八段もそのうちの1人。何でも昨年結婚した後、夫婦で番組を視聴していたところ久保さんの魅力にハマってしまったのだとか。
今夏、久保さんが初の書籍『その恋はビジネス的にアウト』を出版したのにあわせて、ねとらぼでは特別対談を企画。ビジネス界と将棋界の最前線で活躍する2人に対し、たくさんある選択肢の中から1つを選び決断していくプロ同士として、何をどんな風に考えているのか明かしてもらいました。
久保裕丈
1981年生まれ。東京大学大学院卒業後、外資系コンサルに入社。その後、ファッション通販会社を設立し、2015年に17億円超で同社を売却。億万長者となり、2016年にAmazon初の恋愛リアリティー番組「バチェラー・ジャパン」に出演。25人の女性から結婚を求められる初代バチェラー(独身男性)として脚光を浴びた。
広瀬章人
1987年生まれ。2005年、早稲田大学入学と同時にプロ入り。在籍中に王位を獲得(大学生のタイトル獲得は史上初)。2014年にA級昇格(プロ棋士約150人のうち上位11人)、2017年現在も所属。昨年結婚し、夫婦でバチェラー・ジャパンを視聴したところ久保さんの大ファンに。
久保「圧倒的なバラおじさんになってしまいました(笑)」
――そもそもの発端なのですが、広瀬八段が夫婦でバチェラー・ジャパンを視聴していたと。先日出た『将棋年鑑』には「会ってみたい有名人:久保裕丈」と書いてありました。
普段バラエティー番組は見ないのですが、妻に誘われて見始めました。「1人の男性をめぐって25人の女性が争うなんてすごい番組だな」というのが正直な感想で。
でしょうね(笑)。
ただ、エピソードが進むに連れどんどん目が離せなくなり、気が付いたら毎週金曜日が楽しみになっていました。もともと一度見始めたら続きが気になる性格なのですが、バチェラーではとにかく久保さんの人間性に惹かれました。
ありがとうございます。 最初は「しょーがねーな、奥さんに付き合ってやるか」みたいな感じで?
正直に言うとそうでした。それでも登場メンバーの紹介が終わってから、毎度行われるカクテルパーティーがまた絶妙で……はじめは「久保さん大変そうだなー」と同情じゃないですけど、自分には無理だなと思いながら見ていました。
「俺には無理だな」と何度も言っていました。そりゃそうだと言う感じなんですけど(笑)。
バチェラーになる人の選考基準が一番厳しいのではと思いましたね。女性陣はいろいろな業種の方がいましたが。
愛犬家までいましたからね。絶対職業じゃないだろうと(笑)。
――棋士が「バチェラー」にハマっているというのが意外でした。
私以外に見ている棋士がいるか分かりませんが(笑)。久保さんはどうしてバチェラーを引き受けたんですか?
最初は僕も「そんな女性を品定めするような番組どうなの?」と思いましたよ(笑)。でも、ネットメディアがどんどん台頭してきている中で、Amazonが力を入れたコンテンツの主人公になれるということ。さらにもしかしたら新しいリアリティー番組のフォーマットを作ることができるかもしれない。そうした経験はめったにできないと思いました。できれば恋愛がテーマじゃなければ良かったんですが……そういう斜めから見られるテーマに本気で取り組むのもありだと思って引き受けました。おかげで今までビジネスマン的な見え方で来ていたのが、今はもう圧倒的なバラおじさんになってしまいました(笑)。
※番組では毎回候補者として残したい女性にバラを渡す「ローズセレモニー」が行われる。番組終了後も各イベントなどでは参加者に「バラを受け取ってください」と告げるのが恒例になり、今回も広瀬八段へのローズセレモニーが行われた(トップ画像参照)
――番組に対してAmazonはとても力を入れているように見えました。
当初お話をいただいた時点ではあまり分かってなかったんですよ。ところが、撮影初日にスタッフの人数やカメラの台数を見て「これはやばい」と思いました。あの大人たちは本気なんだなと。撮影が全部終わっていったん落ち着いた後、テレビCMの本数や予算をざっくり聞いてそれも驚きました。
想像以上の番組だったと。
はい。会社経営時代に受けた取材では、ちょっといいカメラでバッと撮って編集、オンエアって感じだったんですが、Amazonはそんなものじゃなかったですね。全部いいカメラで、スタッフさんも大規模。撮影初日は手も震えるし汗もすごいしトイレの回数も多いしめちゃくちゃ緊張してました。
久保さんでも緊張するんですか!
いやー、あの緊張は忘れられないです。 たまたま初日は大雨でほとんどの撮影が翌日に流れたんです。1日ホテルでゆっくりできたおかげでいくらか気持ちが整って、何とか2日目から撮影に臨めたんですけど。
偶然リハーサルみたいになったわけですね。
そうそうそう。運が良かったです、すごく。
広瀬「久保さんはまさに隙のない人間だなと思いました」
――番組を最後までご覧になられていかがでしたか。
途中からは予想しながら見ていました。「あの人はそろそろやばい」とか。終盤はドラマチックで、番組的にも盛り上がるというかだんだん切なさも増してきていましたね。
初めの頃から「俺は愛ちゃん(※)がいいと思う」と言ってたよね。すみません、人さまのことを(笑)。
※モデルの蒼川愛さん。大学生ながらバチェラーに参加し、見事最後の1人となる。ミスid2018のファイナリストでもある
彼女は早稲田じゃないですか。私も妻も同窓なので最初はそういう理由で応援していたんですけど。
ああー、なるほど。
だんだん久保さんも蒼川さんに惹かれているんじゃないかなと思いはじめて、そのままゴールインしてもおかしくないなと。ふとした時にでる態度、しぐさが違っていましたね。
そうだったんですか?(笑) 小学館のチームにも分かりやすすぎるって文句を言われていました。でも、僕はそんなつもりはなかったんですけど……。
でも最後の最後まで確信は持てなかったですね。それだけもりもりさん(※)が追い上げていて。
※番組出演者の森田紗英さん。ダークホース的な存在で、序盤から久保さんに熱烈なアプローチをしていた。放送終了後、長髪をバッサリ切ってイメチェン
蒼川さんは最初から頭の良さというか勉強を頑張ってきた人なんだろうなという印象があって、見た目だけじゃないと感じていたんですよね。話をするうちにそれが正しかったと分かってきて、でも他の女の子たちもそれぞれに魅力を持っていたので、できるだけ全員をフラットに見るようにしていました。もりもりは後半、こんな感じ(急上昇するジェスチャー)で来ていて、最後の最後まで悩みましたが、やっぱり蒼川さんだなと決めました。
将棋界では「隙がない(※)」というフレーズが流行っているんですが、久保さんはまさに隙がない人間だなと思いました。
※カツラ芸で知られる佐藤紳哉七段がNHK杯のインタビューで答えたセリフ「豊島? 強いよね。序盤、中盤、終盤、隙がないと思うよ」が元ネタ。異色のプロレス風インタビューとして将棋界では伝説になっている
普段は結構隙だらけなんですけどね……。
オンエア上は全く見せなかったということですか。
どうなんだろう。変にカットされたってことはないと思うけど、後半はかなり女性陣に詰められたりしてましたし、岡ゆり(※)には激詰めされましたからね。
※着付け師の岡田ゆり子さん。番組出演時、21歳と若かったが“強キャラ”という印象を視聴者に与えた
激詰めですか?
もう大変……そのシーンは結構カットされてるんですが、北海道で岡ゆりがベロッベロに酔っぱらったことがあって「久保さんってどうやって愛情表現するの?」「この中の誰かにもう愛情表現してるの?」とかってすごい勢いで詰めてきたんです。それがトリガーで全員から集中砲火を浴びてもうどうしようという(笑)。
そういうときはどう対応するんですか。
普段だったら、ただただ素直に謝る、対応するしかないんですけど、あの場では“言えないこと”が多すぎて。「実は正直な気持ちはこうだよ」なんて言ってしまったら「ええ?」となってしまう。それが一番困りましたね。
女性陣が泥酔することはよくあったんですか。
お酒を飲むシーンが多かったので時々ありました。酔っぱらいランキングで言うと1位:岡ゆり、2位:もりもり。あとの子たちは一応カメラが向いているから自制心が働いてたのかと思うんですが、僕自身も1回だけ……森田家実家(※)に行ったときがもうホントにすごくて、お父さんがポカリスエットかっていうくらいのペースで日本酒を飲ませてくるんですよ。
※番組では女性が残り3人となった時点で「実家訪問」イベントが行われた。北海道にある森田家はアットホームな雰囲気で、「気持ちのパンツを脱ぐ」(もりもり父)などの名言が飛び出た
――日本酒のあとに飲むやつですよね、それ(笑)。
とにかくずーっと日本酒を飲んでいて。お父さんはめちゃめちゃ強かったですね。僕が撮影終わって失礼した後もスタッフたちと飲んでいらっしゃったみたいです。
スタッフにも飲ませるんですか!?
はい。一升瓶が何本か空いて大騒ぎだったみたいですよ。すごいハッピーな方でした。
広瀬「将棋を知らない友人からも『お前魂抜かれたのか』と連絡が来ました(笑)」
プロの勝負事の世界にいる方って精神力がものすごいと思うんですよ。一体どんな風に養っているんですか。
将棋の場合は子どもの頃からやっているのでその積み重ねですね。勝ったとき、負けたときにどうメンタルをコントロールするか。誰かから教わるわけじゃないですけど、自分自身である程度ルールを決めてやっています。
会社経営でも結局最後まで粘り強かった人、折れない人は絶対うまくいくんです。僕は精神力の面ではそんなに強いほうじゃないんですよ。
僕も強くないです。最後まで諦めないことは将棋でも重要で、どうしても局面によっては相手の実力も信用して「もうだめだな」と淡々と諦めながら指してしまうことがあるんです。あまりプロ棋士は口には出さないですけど、そういう人は少なくないかなと。将棋は自分から「負けました」と言わないと終わらないので、きついなと思いつつ歯を食いしばってやれる人は当然強いですね。
想像を絶する世界ですよね。失礼にあたっちゃうかもしれないんですが、今回の対談にあたって広瀬さんについてググったらインパクトのある写真(※)が出てきたんです。ぼうぜんとしている広瀬さんの写真で「羽生さんと勝負して魂が取られた」と……。
※2015年に行われた王位戦での様子。Twitterに投稿されたある写真が将棋クラスタを超えて拡散し、現在もGoogleで広瀬八段を検索すると上位に表示される。Naverまとめも人気
ああ(笑)。あれは「諦め」とは別の状況ですね。勝負終盤の入り口くらいだったかな。考えるときのポーズは人それぞれバリエーションがあるんですが、自分は上を向くことがあって。その棋戦が1分間に1回だけ静止画を撮影して中継するタイプで、たまたまそういう写真が撮れちゃったみたいです。
――ネットで話題になっていることは把握していたんですか。
当時、将棋を知らない友人からも「お前魂抜かれたのか」と連絡が来ました(笑)。実際は大真面目に考えていただけなんですよ。
――久保さんは将棋などの頭脳ゲームはプレイしないんですか。
苦手なんですよ。数学などのロジックを組み立てていくものは大好きなんですが、ゲーム系は負けたときに死ぬほど悔しいじゃないですか。
プロもそうですけどアマチュア同士でもアツくなるようですね。将棋は運に左右されないので負けたら自分の責任以外の何物でもない。そこがフェアなところでもあって魅力なんですけどね。
でも、負けて帰ってきてもそう見えないよね。勝ったのか負けたのかよく分からない。
今のところは隠し通せてます。
腹の中ではグツグツしているんですか。
帰るまでの間に落ち着くこともあります。勝ち負けにはいろいろあって、本当にいいとこなしで負けてしまった場合はさほど引きずらないですね。
――広瀬さんは麻雀もお好きでかなり真剣に取り組んでいるそうですね。
将棋と同じように捉えています。負けたときは振り返って反省していますね。
ああ、僕も麻雀はちょっとだけやりますね。でも、とにかく負けると頭に血が上っちゃうタイプなので意識的にスポーツに寄せています。仕事で頭と精神力を使うので、遊びもそれだとリフレッシュできない。会社経営時代は何も考えずに走るとか、ひたすら筋トレするとか、サンドバッグを殴り続けるとか、そうやって気持ちをフラットにしていましたね。
将棋連盟にも最近フットサル部ができて、僕も月1回くらいでやっています。ただ草フットサルなのでレベルはすごく低くて……。
――ニコ生で放送していましたね。
関東と関西に分かれて、名人と竜王が両方メンバー入りしていまして。いまどっちも30歳くらいなんですよ。
そうなんですか! それはニコ生周りだとざわつきますよね。
――僕たちも将棋好きの仲間で集まって見ました。間違いなく世界で一番棋力の高いフットサルの試合だなと(笑)。
棋士は頭が良いと思われていますけどフットサルだと全然関係ないですね。サッカー観戦が好きな棋士は多くて戦術はある程度理解できるんですが足が付いてこないので(笑)。
将棋の世界は現役が長いというイメージがありますが、年齢と強さの関係はどうなっているんですか?
10〜20代の棋士は「瞬発力がある」という表現を使いますね。頭の回転が速いので秒読み勝負では若手が有利だと思います。中堅・ベテランになると経験が豊富なので「この局面はこの一手」という直感だけで勝負して勝つことができるようになると言われています。
インスピレーションを大事にして、読みで本当に正しいのか検証すると伺ったことがあります。
プロは皆そうですね。パッと手が見えて、持ち時間が許される間はそれをちゃんと読む。直感が正しいかどうかが実力ですね。第一感で指す手がいまいちだとあまり強くないなと思われちゃいますね。
なるほど。恋愛も大体直感ですよね。年を取るごとに直感に対して経験や理屈で「この子と付き合ったらどんな関係性になる/どれだけ続くか」など先読みができるようになってきましたが、若い頃は直感だけで突っ走ってましたね。
直感の精度は上がってきますか。
上がると思います。何となくパターンで見えてくるじゃないですか。じっくり考えなくてもこの感じの子だったら自分に対してはこんな風にフィットするんだろうなと。経験を積むと類型化できるようになってくるので。……なんか恋愛で言うとすごい遊んでるように聞こえちゃいますね。
(笑)。
恋愛でも仕事でも、若い頃は時間をめちゃくちゃかけて選択肢を1個1個検証していくんですよね。でも30歳を超えるとできなくなる。寝ないと頭働かないし。だから直感の精度を上げていくことが大事だと思います。
将棋もまさにそういう感じですよ。個人差はあれど手を読むスピードは衰えてくるので、羽生さんは「いかに読まないようにするかを大事にしている」と言っていました。羽生さんはここ25年くらいずっと第一線で戦っていて、ギリギリの勝負しかしていない。そのギリギリを読んできたからこそできる芸当でもあるんでしょうけど。
なるほど。僕、自分の本を読んだらめちゃくちゃ理屈っぽくて「こんなん考えながら行動なんかできないよ」ってなるなと思ったんです。でも、普段はこれを意識してるわけじゃなく、なんとなく習慣になっていることを「その行動の裏にはこんなロジックがあるよ」と理屈付けして説明しているだけなんですよ。実際は無意識でできるような習慣になっている。勝負事でもそうなのかもしれないですね。
久保「女性陣を物語の一緒の作り手、同志みたいに思っていました」
――本の中で気になったところはありますか。
パワーワードはたくさんありましたね。インターン(※)とかすごかったです。注釈やウサギのツッコミも面白い。
※一般的には職業体験のことだが、久保さんは「付き合う前のセックス」の意味でも使う
久保さんはとても負けず嫌いで注釈にツッコミを入れてくるんです。解決できていない質問に「久保ギブアップ?」と書いたら赤字が入って別の表現になりました。いいじゃんギブアップしても(笑)。
――論理的な久保さんと素朴なツッコミとのギャップが面白いですよね。序盤に損切り(※)の概念がでてきて、ウサギが「ドライだな―」とツッコんでいたり。
※経済用語の1つ。久保さんは人間関係にも用いる。例:「3年間付き合った(投資した)が、将来的にプラスにならないのであれば損切りした方がいい」
久保さんの考え方は一般人の感覚からちょっと置いてけぼりになる部分があるかなと思って、下の注釈やコメントでバランスを取りました。「バチェラー」のスタジオ視点みたいな感じですね。個人的には久保さんに共感できるところはほとんどないんですが(笑)、何でもビジネスみたいにかみ砕いて整理する、全てのことを平等に捉えているのは新しい考え方としてすごく面白かった。
損切りはビジネスでは超大事で「これ絶対うまくいかないだろうな」「今すぐやめればいいのに」という事業に固執するケースが時々あります。やめるのもそりゃエネルギーがいるけれど、一時のつらさで決断を遅らせると後々よりつらいことが待っている。私生活も結構同じで、ずるずるいってヤバそうなら早めに決断したほうがいいんですよ。不安要素があるなら、一時はしんどくても早めに解決したほうがいい。そう思って書いてるのに、小学館の人たちは何にも腹落ちしてない(笑)。
(笑)。私は「質問7:恋愛の加点評価制」のくだりが印象的でした。そもそも条件(※)が厳しい……。
※久保さんの越えていてほしい基準:顔とスタイルの良さ、地頭の良さ、周囲への気遣い、自分自身のやりたいことへの熱意など
付き合う相手に対しては、言い方は悪いんですが足切りラインはあるんです。でもそれさえ超えてくれれば、あとは好きになるって決めたその人の良いところをみつけていくようにしています。仕事、特に採用だとちょっとでも違和感があったらやめるというのが僕のポリシーなんです。それに比べると恋愛はまだ妥協するタイプかなと思います。
嫌なところが見えて嫌いになっちゃうことはないんですか?
あまりないですね 。今まで付き合ってから「この子のここが嫌だ」という理由で別れたことはないです。基本振られることが多いってのもあるんですけど。嫌だなってところは言ったりしますからね。
バチェラー出演以前/以後で、本にあるメソッドは変化しましたか?
変化はないです。番組で一番使っていたのは「脱力」(※)。あれだけ女性に囲まれてると格好つけたくなるじゃないですか。でもそうすると疲れるし、逆に力みすぎてミスったりしちゃう。だからカメラを向けられていたときはとにかく脱力することを意識していました。あとは「持ち物の有効活用(※)」「ターゲティング(※)」。相手が何を求めているのかを見極めて、その上で番組内で自分でお返しできるのはなんだろうとずっと考えてました。やっぱり女の子たちも評判だったり時間だったり、いろんなものを犠牲にして出演してくれているはずなんですよ
そうですね。
であれば僕はお返ししなきゃないけない。いやらしい話になるけど、「どんな出方をしたい子たちなのか」とかも考えました。そこに対して自分が持っている中でできることはなんだろうと。
――番組プロデューサーみたいな視点ですね。
出演者ではあるんですが、25人の女性も含めて一番の作り手じゃなきゃいけないと思っていました。特にリアリティーショーは、場のセッティングをしていただいた後に起こることは全て自分たち次第。僕は女性陣を物語の一緒の作り手、同志みたいに思っていました。
なるほど。だから最終的には出演している女の子全員に好印象を持てるようになっていたんですね。
例えばもりもりだったら最初は嫉妬深い、ドロドロした子だと視聴者には見えちゃうかもしれない。でも彼女のけなげさだったり魅力的なところは、嫉妬心の裏返しでもある。だったらどんどんデートに誘うよりも上手に時間を置くことの方があの子は輝くんですよ。
あれだけデートに誘わなかったのはそういう理由で……! 謎が解けました。番組ではシーンごとに女性陣のコメントが挿入されてますが、当然久保さんは知らないんですよね。
全然分かんないです。配信を見て初めて、「おい、あゆ(※)すげえな」って思ったり(笑)。
※フードコーディネーターの柏原歩さん。番組内では圧倒的なあざとさを披露。久保さんからの評価はおおむね高く、他の出演メンバーからはぶりっこと思われていた(ように視聴者には見えた)
――今田耕司さんたちがスタジオで「バチェラー」にコメントするトークセッションはどう見ていましたか。
あれは基本的に僕がディスられるじゃないですか。逆にそれはありがたいなと。今田さんとゲストが視聴者の声を代弁してくれる。ただ番組の反応で一点気になっているのは「男はやっぱり若い子が好きなのか」という。
われわれの間でもその見解に……。
なりましたね……。
違うんですよ! 「歳で選んでない」とは声を大にして言いたい。でも常にかき消されてます。
――どうしても後半に30代が残らなかったという結果が……。
そうなんですよね。でもそれは理由があって、30代のメンバーは後半になるに連れて「気持ちにブレーキがかかってるな」という瞬間が見えてくるんです。やっぱり結婚という言葉が話数が進むごとにリアルになって、「この訳の分からない男を実家に招き入れないといけないのか」みたいに尻込みしちゃうのかなと。その点で若いメンバーの方が勢いよくぶつかってきてくれるんです。
ちょうど私たちも「バチェラー」が放送された前後に結婚して、実家訪問というアクティビティーがあったので、久保さんが女の子たちの実家を訪れる回はすごくドキドキしました。あれは恋愛関係が急に現実になりますね。
ですね。しかも複数の女の子が候補として残っている段階なので、周りからは「よく行けるね」と言われました。スタッフさんも「久保さん、よくやるね」と(笑)。でもあれは体験して良かったですね。付き合って本当に結婚を考えるのであれば家族との相性は大事。番組を通じてあらためて知ることができるいい機会でした。
番組内で一番驚きましたし、もっとも人間力が試される場だったなと。久保さんはどのご家族にもそつなく対応されていたんで立派だと思いました。
あのときは「ウソだけはつかない」よう心掛けました。両親からしたら「すみません、3人のお嬢さんたちをてんびんにかけてる状態で来ました」という話じゃないですか。だからせめて、正直な状態でぶつかっていこうと。
――蒼川家では結構お母さんに反対されていましたよね。「あなたで大丈夫なのか」と試されている。
使われている尺は短かったのですが、彼女のお母さんとは2人で1時間くらい話しましたね。当然その場でうまくいくとは思ってないんですよ。でも、きっと厳しい話になるだろうなという覚悟で臨むと意外と大丈夫です。いい未来を思い描いてそっちに持っていこうと力むとダメになるんですよ。
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