おれたちが知ってる「ドラえもん」があんな姿やこんな姿に 28組の現代アーティストが描く「ドラえもん展」六本木で開幕

「あなたのドラえもん」を現代のアーティスト28組30人が制作した企画展「THE ドラえもん展 TOKYO 2017」が11月1日からスタート。内覧会の様子を紹介。

» 2017年11月01日 00時15分 公開
[黒木 貴啓ねとらぼ]

 ドラえもんたちが牛革、漆、屏風(びょうぶ)、黒板アート――素材だけでもいろんな形に変身。日本を代表するアーティスト28組30人がそれぞれ“世界にひとつだけのドラえもん”を作った企画展「THE ドラえもん展 TOKYO 2017」が、2017年11月1日から2018年1月8日まで六本木ヒルズ・森アーツセンターギャラリーで開催される。10月31日に行われた内覧会の様子を紹介しよう。

ドラえもん展 六本木 あらゆる素材で3メートル近いカラフルなドラえもんを作り上げた「さいごのウエポン」(増田セバスチャン)

ドラえもん展 六本木

 「THE ドラえもん展 TOKYO 2017」は、2002年〜2006年に全国13会場を巡回した「THE ドラえもん展」の続編となる企画展。前回も参加した奈良美智さん、蜷川実花さん、福田美蘭さん、村上隆さん、森村泰昌さんを筆頭に、会田誠さんやしりあがり寿さんなどこの15年間で頭角を表した作家、幼いころからドラえもんを見て育ったいわゆる“ドラえもん世代”である新進気鋭の作家まで、幅広い世代のアーティストが参加している。

ドラえもん展 六本木 「あんなこといいな 出来たらいいな」(村上隆)

ドラえもん展 六本木 「ドラちゃん1日デートの巻 2017」(蜷川実花)

ドラえもん展 六本木 「依然としてジャイアンにリボンをとられたままのドラミちゃん@真夜中」(奈良美智)

 今回のテーマは「ドラえもんと現代アートの競演」。15年前のラインアップはデザイン、映像、写真作家が多く、現代美術作家はごく少数だったのに比べ、「今回は『美術』の濃度が高まった」と企画展監修の山下裕二さん(明治学院大学教授)は図録で振り返っている。「この15年の間に、いわゆる現代美術が、大きく裾野を広げたという動向を反映しているからなのである」(本展図録より)。

ドラえもん展 六本木 あちこちで吊るされるひみつ道具のオブジェ

 そのような28組が「あなたのドラえもんをつくってください」というシンプルな“お願い”に応える形で制作した「ドラえもん」は、順路を1つ進むたびに見る者のドラえもん像を打ち壊してくれる。例えばしずかちゃんをテーマにした3つの作品だけでも次のような自由奔放っぷりだ。

ドラえもん展 六本木ドラえもん展 六本木 「しずかちゃんの洞窟(へや)」(鴻池朋子)

 鴻池朋子さんの「しずかちゃんの洞窟(へや)」は12×5メートルの大きな牛革いっぱいに、しずかちゃん、それを取り囲むようにのび太たちやさまざまな動物を水性クレヨンで描かれている。薄明かりで照らされた牛革はまるでラスコー洞窟の壁画のようで、しずかちゃんに原始や母性的な何かを感じてしまう。

ドラえもん展 六本木 「キセイノセイキ〜空気〜」(会田誠)

 シャワーを浴びるしずかちゃんをセル画のようなアクリル画で描いた会田誠さんの「キセイノセイキ〜空気〜」は、なんと肝心なしずかちゃんが“見えない”。ひみつ道具のせいなのか彼女は透明で、シャワーから滴り落ちる水の形から、なんとなくしずかちゃんを見いだす作品となっている。おなじみのお色気シーンが余計につややかに見えるなど、いろいろと刺激的な一枚だ。

ドラえもん展 六本木 「僕らはいつごろ大人になるんだろう」(坂本友由)

 「本展でもっとも驚かされた作品の1つ」と監修の山下さんが触れていた、坂本友由さんの「僕らはいつごろ大人になるんだろう」。びしょぬれになった巨大なしずかちゃんを小びとになった気分で見上げる、約3×1メートルの大きなアクリル画だ。映画「ドラえもん のび太の宇宙小戦争」の小びとの惑星で彼女が海から上陸したワンシーンを切り取っているが、しずかちゃんは顔を赤らめながらスカートの裾をしぼり、その下には虹がかかりと、フェティシズムも感じ取れる作品となっている。

ドラえもん展 六本木 中国の仙人図を組み合わせることでドラえもんの「寄せ絵」を作った「波上群仙図」(福田美蘭)

ドラえもん展 六本木 ドラえもんが現実にいたら、猫と人間がバイオテクノロジーによって融合した存在になっているはず――というコンセプトの「救世銅鑼ェ門」(小谷元彦)

ドラえもん展 六本木ドラえもん展 六本木 白地のドラえもんの立体に、プロジェクションマッピングでさまざまな色や模様が投映される「OPTICAL APPARITION」(西尾康之)。裏側にはよりショッキングな造形とマッピングが広がっている

「OPTICAL APPARITION」(西尾康之)
ドラえもん展 六本木ドラえもん展 六本木 ドラえもんの漫画が印刷された紙で作ったドレスこと“ドラス”。「時(とき)を駈けるドラス」(森村泰昌+コイケジュンコ)

ドラえもん展 六本木 乾漆のマントに、うっすらと別の漆でドラえもんがタイムトラベルする様子を描いた「タイムドラベル」(渡邊希)

ドラえもん展 六本木 黒板アートで映画「ドラえもん のび太の新魔界大冒険 〜7人の魔法使い〜」を表現した「静かな決意」(れなれな)

ドラえもん展 六本木 油画「To the Bright 〜のび太の魔界大冒険〜」(篠原愛)。映画「ドラえもん のび太の魔界大冒険」でのび太たちが人魚の歌声に誘われツノクジラに食べられそうになる恐ろしいシーンを、グロテスクさと美しさが同居する一枚に仕上げた

ドラえもん展 六本木 「光と影」(中塚翠涛)。映画「ドラえもん 新・のび太と日本誕生」の未来から過去、光と闇の世界、架空の動物ドラ・ペガ・グリを抽象的なイメージで和紙に染め刷りした

ドラえもん展 六本木 「LOST ♯9」(クワクボリョウタ)。映画「ドラえもん のび太のひみつ道具博物館」の世界を、LEDを光らせながら走る鉄道模型と日用品を使って光と影で表現

「超時空間」(後藤映則)。ナイロン素材の“時空間”をさまざまなパターンの光線が通ることで、映画「ドラえもんとのび太の宇宙開拓史」のキャラが動き出す
ドラえもん展 六本木 作者の頭部が連なる時空間をタイムマシンで進む様子を表現した「山本空間に突入するドラえもんたち」(山本竜基)。写真右はその場で解説する山本竜基さん

 展覧会の出口には、「ドラえもんがいてくれたらと、今日も思う。」という一文が書かれている。アーティストたちが独自のフィルターを通して形にした「ドラえもん」たちは、日常に溶け込んでいた「あなたのドラえもん」を見つける足掛かりとなるかもしれない。

ドラえもん展 六本木

黒木貴啓


THE ドラえもん展 TOKYO 2017

会期:2017年11月1日〜2018年1月8日 会期中無休

時間:10時〜22時(火曜日は17時まで 入館は閉館の30分前まで)

会場:六本木ヒルズ・森アーツセンターギャラリー

入場料(当日):一般1800円、中高生1400円、4歳〜小学生800円

公式サイト:http://thedoraemontentokyo2017.jp/

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

先週の総合アクセスTOP10
  1. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  2. 富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
  3. 2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに少々強引な寝かしつけをされると…… コントのようなオチに「爆笑!」「可愛すぎて無事昇天」
  4. 異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
  5. 【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
  6. 21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
  7. 1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
  8. 業務スーパーで買ったアサリに豆乳を与えて育てたら…… 数日後の摩訶不思議な変化に「面白い」「ちゃんと豆乳を食べてた?」
  9. 祖母から継いだ築80年の古家で「謎の箱」を発見→開けてみると…… 驚きの中身に「うわー!スゴッ」「かなり高価だと思いますよ!」
  10. 「妹が入学式に着るワンピース作ってみた!」 こだわり満載のクラシカルな一着に「すごすぎて意味わからない」「涙が出ました」
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」