「niconico(く)」発表会、現地の記者はどう見たか 大炎上を登壇者らと見つめる“永遠とも思える2時間”
「niconico」らしい仕掛けが、完全に裏目に。
11月28日、4年ぶりとなる「niconico」の新バージョン「く」(読み方は「クレッシェンド」)の発表会が行われました。不調が続く同サービスの大型バージョンアップであることから、注目が集まっていましたが……すでに結果をご存じの方も多いでしょう。ネット上ではネガティブなコメントが殺到し、「大失敗」としかいえない形で幕を降ろしました。
では、発表会のリアル会場の反応はどうだったのでしょうか。ドワンゴ代表取締役会長・川上量生氏ら3人が登壇した“永遠とも思える2時間”をレポートします。
開始早々から「炎上」
「く」は当初、10月から提供される予定だったものの、延期に。この発表会でようやくサービス開始時期(2018年2月28日)が明らかにされました。そのためか、川上氏のほか、栗田穣崇氏、夏野剛氏が登場した発表会冒頭から、ネット上では厳しい声が多少現れていましたが、3人は明るく振る舞っており、笑顔のシーンも見られました。
しかし、川上氏が動画の遅延対策、高画質化の進捗について説明しはじめると、発表会のもようを中継していたニコニコ生放送の番組には「は???」「全く解決してない」などのコメントが続出。段階的に進められているものの、「対応が遅れている」と理解されたようです。ここから発表会が終わるまでの約2時間、「炎上」が続きました。
会場でも、大荒れの番組はリアルタイムに確認できる状態。より正確に言うならば、「視聴しなければならない状態」でした。というのも、今回の発表会のメインは、新たに導入される「nicocas」の実演。それを見るためにはネット環境が必要で、参加者らにノートPCが配布されていたのです。
また、会場となった「ニコファーレ」は、「ネットとリアルが融合する次世代ライブ空間」とうたう施設で、壁面には番組を映し出す大きなディスプレイが。本来は登壇者と会場参加者、ネット視聴者の一体感を生み出し、楽しんでもらう仕掛けなのでしょう。
ですが、ネット上の厳しい声が弾幕のように流れる会場内で、登壇した3人の気持ちを考えるのは、心苦しいものがありました。一体感の演出が確実に、しかし、悪い方向に働いていたと思います。
独自機能も大不評で、空気は冷えたまま
「niconico(く)」新機能の実演では、結果論かもしれませんが、評判の悪いものから順に取り上げる形になってしまいました。
例えば、最初に紹介された「オープニング」「エンディング」は、リアルタイムな映像合成で番組を演出する機能です。しかし、そのために用意されたテンプレートが、なんというか「ほっこり感」「子どもっぽさ」が強いテイストで、ネット上では「いらん」「寒い」「ひでえなこれ」といったコメントが。会場内でも、一般来場者の席のほうから同様の声をあげる人がいました。
後半では、臨機応変に使用カメラが切り替えられる「マルチカメラ」機能などの実演があり、小声で「これは良さそうだね」と話し合う記者も。しかし、冷めきった空気を戻すには遅すぎた、というのが筆者の印象です。
10分間の質疑応答を「質問には全て答える」と急きょ延長
今回の発表会は1時間45分の予定で、そのうち1時間10分が新機能の実演。質疑応答の時間は、10分間とされていました。まずは記者の質問を受け付け、その後、一般来場者、生放送コメントという順になっており、ユーザーの疑問にはあまり答えられない構成です。
しかし、川上氏は、一般来場者が挙手している最中に「今回は全ての質問に答えよう」と発言。栗田、夏野の両氏は無言でそれを受け止め、質疑応答は会場内で手が挙がらなくなるまで続けられました。その結果、発表会は約20分間延長されることに。
外部からは分かりにくいのですが、「niconico(く)」は「開発がしやすい」という点も特徴だそうです。2006年から運用されている「niconico」のシステムは、おそらく老朽化していて扱いにくいのでしょう。
プレミアム会員数が減るなかで行われている今回のバージョンアップは、いわば“サービスの生命がかかった大手術”。川上氏は高画質化、遅延対策に必要な期間について「半年間」と明言しており、2018年半ばまでには一通りの開発が完了すると考えているようです。
川上氏が全員の質問に答えようとしたのは「必ず復活するから、それまで待っていてほしい」という気持ちの現われなのではないか。でも、ユーザーは待ってくれるのか? ――10年以上、「niconico」を利用している筆者は、複雑な思いを抱えたまま席を立ち、2時間座っていただけとは思えない強い疲労を感じながら、会場を後にしました。
(マッハ・キショ松)
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