なぜ台湾人はハム太郎ソングでとっとこ走り回ったのか アニソンDJ界の流行「ハム太郎コール」、ルーツを探る(1/3 ページ)
「ハム太郎とっとこうた」に合わせて台湾人が輪を作って走り回った動画が話題に。あの瞬間が生まれたのは、偶然だけではなかった。
「とっとこ〜走るよハム太郎♪ すみっこ〜走るよハム太郎♪」の歌詞でおなじみ、2000年代アニメ「とっとこハム太郎」のオープニング曲「ハム太郎とっとこうた」。こちらを台湾のアニメソング専門DJイベントで流したところ、100人近くの台湾人がダンスフロアをぐるぐる走り回り続けた動画が2017年11月末にTwitterを駆け巡った。
フロア客のほとんどは成人男性。大きな輪を作りながら片腕や両腕を挙げて、重低音の打ち込みビートにあわせてぴょんぴょん跳ねるようにして走り続ける。「大好きなのはひまわり種」とハム太郎が歌うと、「「「俺もー!」」」と一斉にコールする。かわいらしい曲調に対してすさまじいカオスっぷりだが、とにかくみんな楽しそうだ。
参加スタッフが「とっとこハム太郎を流した時の台湾の方々の反応をご覧ください」とTwitterに動画を投じたところ、「台湾でなぜこんなにハム太郎で盛り上がるの!?」という驚きとともに、「平和な世界」「俺もこの中混ざりたいw」とその幸せそうな空間をうらやましがる人が続出。約12万回もリツイートされた。
実はこの「ハム太郎とっとこうた」で周回してコールする行為は、2017年7月から日本のアニソンDJ界で徐々に広がり、秋ごろから流行しているものだ。年末のイベントでも各地で発生している様子が確認できる。
曲が発売されたのは2000年――どうして今になってアニソンDJ界で盛り上がっているのか、そこからなぜ台湾人もハム太郎でとっとこ走る瞬間が生まれたのか。流行が始まった瞬間を知るアニソンDJ・いまのさん(@hayato0821)と、台湾のイベントで曲をかけた張本人・DJちっぺさん(@chip_Pe)に、熱狂のルーツを取材した。
ハム太郎コールはどうして生まれたか
いまのさんによると、アニソンDJ界ではこの行為にこれといった名称はついておらず、言っているとしても「とっとこハム太郎のコール」ぐらいだという。以下、「ハム太郎コール」と称したい。
ハム太郎コールには厳格なルールはないが、基本的にみんな次のような行動をとる。
- みんなで大きな輪を作りながらぐるぐる走り続ける。
- 歌詞「大好きなのはひまわりの種」の後に、「俺もー!」と叫ぶ。
- 間奏部分で、アイドルライブの定番MIX(掛け声)である「タイガー、ファイヤー、サイバー、ファイバー、ダイバー、バイバー、ジャージャー!」を叫ぶ。
後は輪の中央のスペースや脇でオタ芸をしたりと、自由にしている。別にアニソンDJイベントで「ハム太郎とっとこうた」が流れたら上記の行為をしなくてはいけないわけではなく、ただの流行であることをあらかじめ念押ししておきたい。
このハム太郎コールの流行の始まりは、7月1・2日にお台場潮風公園で開催されたアニメ×ダンスミュージックの野外DJフェス「Re:animation」の第10回公演だったといまのさんは推測する。
「DJは特に深い意味はなく、『全員が知っているから』程度の感じで『ハム太郎とっとこうた』を流したんだと思います。すると2、3人が突然走り回り出して、周辺の人がそれに群がっていって、例の絵が完成していました」
当時の様子を収めた動画が残っている。ハム太郎の曲が流れる野外の芝生の上を、70、80人ほどの男の子や女の子たちが輪を作って走り、「俺もー!」と叫ぶ。間奏でのMIXは数人程度しかしていないようだが、あのハム太郎コールがすでに出来上がっている。
参加していたTwitterユーザー・すぱりださん(@super_reader)がこの動画を7月2日にTwitterで「とっとこハム太郎に合わせてみんなで走ってんのホントクッソ面白いんだけどwwwww」と投稿すると、3万回以上リツイートされるなど話題に。さらにYouTubeに転載されるなどして、「ハム太郎で大人たちが走り回ってコールするおもしろ動画」としてまたたくまに広がっていった。
「Re:animation」第10回以外のアニソンDJイベントでハム太郎コールが起こっている動画は、すぱりださんの動画がバズる以前ではまったく見つからないが、以降ではTwitterやYouTubeで10本近く確認できる。小規模なイベントから、横浜アリーナを使った大規模イベント「ANIMAX MUSIX」まで、あちこちでハム太郎がかかりハム太郎コールが発生しているようだ。
この前にどこかでハム太郎コールは起こっていたのかもしれないが、同イベントとすぱりださんの動画が流行の火付け役となったのは間違いない。いまのさんも、「よく半年でここまで有名になったな〜って言うのが率直な感想です。話題の動画の中に自分も写り込んでますが、TwitterやらYouTubeやらでここまで拡散されるとは思いませんでした」と驚いていた。
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