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» 2018年01月19日 19時30分 公開

週末珍ゲー紀行:デジタル時代の飛び出す絵本 新感覚のアハ体験が味わえるパズルアドベンチャー「Gorogoa」

脳内に新たな部屋を作るゲーム。

[Ritsuko Kawai,ねとらぼ]

 ゲームライターのRitsuko Kawaiさん(@alice2501)が気になる“珍ゲー”を紹介する本連載。今回取り上げるGorogoaは、2017年12月に発売されたばかりの一風変わったパズルアドベンチャーゲームです(PC、iOS、Nintendo Switch対応)。

 絵本のようなイラストを動かすと、絵柄が変わり、物語が進行していく――。文字や言葉は一切使わない、「デジタル時代の飛び出す絵本」をぜひ味わってみてください。



ライター:Ritsuko Kawai

週末珍ゲー紀行

カナダ育ちの脳筋女子ゲーマー。塾講師、ホステス、ニュースサイト編集者を経て、現在はフリーライター。下ネタと社会問題に光を当てるのが仕事です。洋ゲーならジャンルを問わず何でもプレイしますが、ヒゲとマッチョが出てくる作品にくびったけ。Steamでカワイイ絵文字を集めるのにハマっています。趣味は葉巻とウォッカと映画鑑賞。ネコ好き。




デジタル時代を象徴する新たな飛び出す絵本

 世の中にあふれる“変なゲーム(珍ゲー)”を紹介する週末珍ゲー紀行。第15回は、膨大な量の手書きイラストのみで描かれたパズルアドベンチャーゲームGorogoaを紹介します。言語を一切使わずに表現した精神世界を、プレイヤーの柔軟な発想だけを頼りに旅するトリックアートのような作品。デジタル時代を象徴する新たな飛び出す絵本です。


珍ゲー Gorogoa

珍ゲー Gorogoa

 子どものころに飛び出す絵本に魅せられたことはありませんか。本に秘められた創造物が現実との境界を曖昧にするアナログ世界の魔法。現代ではギフトカードにも広く用いられています。その起源は13世紀。ベネディクト会の修道士、パリのマシューが残した装飾写本「Chronica Majora」の中に仕込まれたのが最初だといわれています。もともとはアカデミックな領域のみで使われていましたが、18世紀末に子ども向けの童話を立体的に表現する手法として採用され、黄金期を迎えました。

 そして人類が仮想現実にまで手を出し始めた現代。アナログ世界で人々の想像力をかきたててきた飛び出す絵本を、電子書籍のようにデジタル世界で再現できたらどうでしょう。本作はまさにデジタル版の飛び出す絵本です。プレイヤーはもともと1枚のイラストを、4つのスペースに適宜分解、移動させることで絵本に住まう少年を別の空間へと誘い、空想世界の神獣を追い求めるという彼の目的を手助けしていきます。それぞれのイラストに内包されたいくつもの空間や事象が飛び出す様は、宇宙のバブル構造を彷彿(ほうふつ)とさせるでしょう。


珍ゲー Gorogoa

珍ゲー Gorogoa

 ゲームのタイトルに使われている「Gorogoa」とは、作者のジェイソン・ロバーツ氏が幼少期に生み出した架空の生き物に由来しています。どの国の言語にも属していない完全な造語で、その固有名詞には何ら特別な意味は宿っていません。しかし、そこには言語の壁を越えて全ての地球人に触れてほしいという、ロバーツ氏の思いが込められています。その制作意図の示す通り、このゲームには物語の語り部もいなければ、情報伝達の手段としての言葉は一切使われていません

 頼れるのは鋭い観察力と柔軟な発想力だけ。それも決してありきたりな因果律に縛られることなく、奇想天外の連続に対応できる子どものような感性が求められます。豊かな想像力の持ち主なら2時間程度でクリアできるでしょうが、もしかしたら人によっては永遠に絵本の世界をさまようことになるかもしれません。その体験はミヒャエル・エンデの「はてしない物語」のようであり、同時に映画「インサイド・ヘッド」で描かれた子供の精神世界のようでもあります。絵本から何を感じ取るかは千差万別なれど、言葉にならない新感覚のアハ体験をとおして、あなたの脳内に秘密の小部屋へと通じる新たな扉が開かれることは間違いないでしょう。


Ritsuko Kawai


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