ドラゴン呼び出すのなら神の領域に行くしかないじゃん 漫画『GREAT OLD〜ドラゴンの創り方〜』が熱い(1/3 ページ)
知に限界があると考えるか、乗り超える覚悟があるか、それが問題だ。
人間の学問では、どうしてもわからないことがある。じゃあどうすればいいか。神の知の領域に踏み込むしか無い。できるのか? なんかそれやばくないか。
新人まんが賞NEXT CHAMPION大賞受賞者・伊科田海さんによる漫画『GREAT OLD〜ドラゴンの創り方〜』は、知の限界に挑む少年を描いた作品です。2月8日にはコミックス1巻が発売されました。
人間の知識を極めた少年
主人公のシャール・ムーマンは、人智学会と呼ばれる地上における全ての学問を学ぶことができる超高等教育機関の首席。いうなれば人類トップクラスの頭脳の持ち主です。人智学会で学ぶのは、医学や言語学や化学など、現実の地球とあまり差異はありません。
しかし、真理を追い求める人は、人智ではいずれ事足りなくなってしまう。卒業した時点で安泰な人生送れること間違い無しなのに、シャールは進学を希望します。
向かうのは、都市伝説化すらしている、一般の人が知らない神智学会と呼ばれる組織。人智を超えた研究をしている場所です。……言葉で書いてもピンと来ないのですが、神智学会の全景画像を見れば、ヤバいところなのが一発でわかります。
学問は便利な道具じゃない
このマンガの面白いところの1つが、人智を超える学問を専攻していても、ひょいひょい便利に使えるものではない、という部分。
例えば召喚術。なんらかの生き物を呼び出す、というとんでもないシロモノ。シャールも期待します。しかし呼び出せたのはこれ。
うん、シャール君、言いたいことはわからなくはないよ、召喚って言ったら悪魔とかドラゴンとか、どーん!って呼び出すイメージだしね。
しかし論理的に「召喚」を考えておきたい。生物の構造を把握して、物理演算でうんぬんカンヌンして呼び出すのだから、そもそも実在するもの、かつ熟知しているものしか呼び出せない。しかも生物は個体によって身体が異なるので、同じ術式では召喚はムリ。いわば特定個体を分析した上でのワープみたいなもの。こう考えると生命であるヤドカリの召喚って、めちゃくちゃすごい。人智ではできない。
ドラゴンなど未知の存在は召喚は不可能というより、学問としてはナンセンスです。とはいえ、わかってはいるけど、やっぱり地味に見えてしまう。
幻視学を嗜む人に術をかけてもらったシャール。目の前に巨大なドラゴンが現れ、そのリアルさに驚きます。
けれどもそれは本物ではなく、いわば脳に直接語りかけるバーチャルリアリティーのようなもの。だから痛みを錯覚することはあるけれども、実際はケガはしない。
相手にイメージを送るというのは現実社会でもまだできない相当すごいことなんですが、幻が現実に影響を及ぼせる、とまで考えていたら期待はずれかもしれない。
求めているのは魔法的なものだとしても、そこにはちゃんと理由があって現象が起きるはず。理屈が通らないものは、いくら人智を超えても叶わない。それ以上を求めるなら、さらなる理屈を、神智の上の領域を自分で生み出さないといけない。
学問は面白いものなはずだ
学問に取り組む理由は、大きくわけて2つあるでしょう。1つは、何かを成し遂げるために学問が必要だから。もう1つは、新しいことを探求して発見するため。この2つは基本的に、研究を進める上で不可分なものです。
しかしシャールが学問にいそしむ理由はというと、後者全振り。理由は読めばわかります。
この作品は、学問が目的達成のためだけにあるわけではないことを、きちんと描いています。神智学会で錬金を得意とする男性ドワーヌは「神智学会ならどんなことでも『わかる』日が必ず訪れる」とシャールを励まします。人間の持つ、人智を超えた知的好奇心は、必ず満たし続けられる。ドワーヌは、学ぶことの楽しさをよく知っています。
召喚を学びアレイは、シャールを連れて神智学会を案内します。特に知り合いでもないのに。その理由が、イカす。学ぶって、ワクワクすることだ。
何かを証明するために狂気的に突き詰め、目的のために手段を惜しまなくなると、学問は危険な武器になります。ましてやタブーに近い命に抵触するところに挑むとなると、なおさら。
神智学に不可能はないとしても、使用者による善悪感情はあるから、扱いが難しい。
壮大な世界観
さて、1話後半で明示されたシャールの目的は、実は1巻の時点である程度はかなってしまいます。しかし、その裏には何やら壮大な計画が見え隠れしていて――。
ここからシャールがどう行動していくのかが見もの。とびっきり優秀な彼が新天地でめまぐるしく状況が変わる中に置かれて、一体どうするのか。いろいろと気になる王道少年漫画です。
『GREAT OLD〜ドラゴンの創り方〜』 第1話
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