最低作品賞・最低監督賞・最低脚本賞ノミネート! 「絵文字の国のジーン」は何がそんなにダメなのか
唯一無二の体験。
ありとあらゆる評論家、無数の観客たちから大量の酷評をくらい、先に発表されたラジー賞では晴れてアニメ作品史上初の最低作品賞・最低監督賞・最低脚本賞ノミネート。映画評価集計サイトRotten Tomatoesでは前代未聞の支持率0%(現在は9%)を記録した「絵文字の国のジーン(原題:The Emoji Movie)」がこのたびはれて日本公開となる。
「子供に見せていいものではない」
- The Guardian
「腐臭を放つクソを前に、あなたは何ができるだろうか」
- Vox
「(あらすじを)聞いたか? これが世界の終わりだよ」
- New York Post
「ユーモア、ウィット、アイデア、ビジュアルスタイル、魅力的なパフォーマンス、独自の視点。それらの全てが欠けた、あなたの時間を完全に無駄にする、魂を砕く災害」
- WRAP
「生きる気力を失った」
- IMDB匿名レビュアー
タイトルから分かるように、本作のメインキャラクターは絵文字たちだ。デジタル文化の先駆者として今や美術館にも所蔵されるようになったとはいえ、「絵文字がハリウッドでついに映画化」と聞いて喜ぶ人がどれだけいるか。なぜ映画化した、と思った人が大半なのではないだろうか。
取り立てて不愉快な物語……ではない
ざっくりと本作のあらすじを述べると、舞台はアレックス少年のスマホの中に存在する都市「テキストポリス」。そこでは1人につき1つだけの表情を持った絵文字たちが日々を過ごしながら、仕事としてアレックスくんのために表情を作ってテキストボックスの中で待機する。
しかし表情がころころと変わってしまう主人公・ジーンはうまく自分の役割:「ふーん」の絵文字になることができず、アレックスが好きな女の子にメッセージを送るという重大なタイミングでやらかしてしまう。事態を重く見たテキストポリスのベテラン管理者・スマイリーはデリート・ボットを差し向け、彼をこの世界から削除しようとする。
ジーンはボットから逃げながら、最近めっきり使われなくなった落ちこぼれ絵文字のハイタッチと共に凄腕ハッカーのジェイル・ブレイクの元を訪れる。彼女の力を借り、不具合を修正して一人前の絵文字になるためクラウドを目指し冒険の旅に出る! という話である。
絵文字を映画化、などというムチャクチャな試みからひねり出したにしては、「自己実現」「ボーイミーツガール」「本当の自分って何だろう?」といった押さえるところを押さえた、悪くいえば「いかにも今風」なストーリーを小手先で組み立てたといった印象だ。表層的な部分に限っていえば――例えばすさまじい破綻があるとか、画的なクオリティーが致命的に崩壊しているとか、いくつかの寒いジョークを除けば(子ども向けではない、という意味での)下劣な下ネタがあるといったこともなく、とんでもなく不愉快な物語というわけではない。では、この作品の何がそんなに批判を受けているのか……。
要点は2つ。1つは既存作品との明らかな類似、そして本作が極めて商業広告的であるという点だ。
何がそんなにダメなのか
まずは既存作品との類似についてだ。本作では現実世界でのアレックスの行動とテキストポリスでのジーンたちの逃避行が並列して描かれる。絵文字たちはアレックスの行動をスマホ内から把握し、彼のためになるようテキストポリスで奮闘するという、残念ながら100人が見て100人ディズニー・ピクサー作品「インサイド・ヘッド」を想像せざるを得ない作りになっており、独自色が無い。
これは前述したストーリーのプロットについても言えることだが、問題意識もその解決策もとってつけた感がどうしても否めない。はっきり言えば何もかもが雑だ。最後の最後まで「たぶんこうなるんだろうな」と想像することが起きるべくして起こり、そこに一切のツイストはない。「インサイド・ヘッド」のキャラクターたちが少女ライリーの感情そのものを体現していたのに対し、ジーンたちはたかだか絵文字なのである。
そしてもう一点。話は逸れるが、映画上映前に流れる大量の予告とコマーシャルにうんざりしている人はいないだろうか。残念ながら、本作では上映中にも同じ思いをさせられることになる。
作中ジーンたちはスマホ画面を駆け回り、削除ボットから逃げるためにFacebook、Just Dance、YouTubeといったアプリの中を冒険することになる。ダンスアプリで楽しく踊り、音楽アプリでは文字通り音の波に乗る。きわめつけには作中大写しになる「キャンディークラッシュ」のロゴと、それに続く物語上全く意味をもたないプレイ動画だ。「このアプリはセキュリティがしっかりしているから安全なのよ!」なんてセリフには一周回って笑ってしまう。
アカデミー短編アニメ賞を受賞した「ロゴラマ」(2009)というアニメ映画がある。これはあらゆるキャラクター、風景、小物、その全てが企業ロゴで構成されているすさまじいブラック・コメディでありながら、それらを無数に並べることでその広告・ブランディングとしての機能を無意味にした画期的な映画だ。
だが「絵文字の国のジーン」はしっかりと、時間をかけて念入りにこれらアプリの宣伝をする。そしてせっかくジェイル・ブレイク※という名のキャラクターを使っておきながら、アレックスのスマホがiPhoneではない……のは、おそらく本作がソニー映画だからだろう。いつ新型のXperiaの宣伝が始まるのか、映画の本筋とは関係のないところでハラハラさせられてしまった。
※iPhoneでいうところの「脱獄」を意味する。メーカーが意図しない動作を可能にする、ソフトウェアを改造する行為
ともあれ、「絵文字の国のジーン」は近年連発されるCGアニメ映画のクオリティの高さと、その素晴らしさを実感させてくれる作品だ。またこの手の映画では珍しいことに、本作は公開と同日のデジタル配信を予定しているため、劇場ないし自宅で是非お楽しみいただきたい。日本語吹替の声優も櫻井孝宏、杉田智和、子安武人と非常に豪華だ。
何より本作鑑賞後に見る「シュガー・ラッシュ」は格別に面白い。「レゴ・ムービー」のラストには何度も感動させられる。「ソーセージ・パーティー」の悪ふざけは破壊的だ。「ヒックとドラゴン」飛翔シーンの爽快感は何ものにも代えがたい。「リメンバー・ミー」もとても楽しみだ。
間違いなく、他では得難い映画体験であることを保証する。
(将来の終わり)
関連記事
- 前情報不要! インド映画の最高傑作「バーフバリ 王の凱旋」を今すぐ見てくれ
今一番面白いやつ。 - 開始10分でホワイトハウスが倒壊するサメ映画 「シャークネード」シリーズ一挙レビュー
今回は3〜4作目「シャークネード エクストリームミッション」「シャークネード4(フォース)」をレビュー。 - 「GODZILLA 怪獣惑星」ネタバレレビュー 実質“まどか☆マギカ1〜3話”だった
ネタバレ注意。 - トム・フォード最新作「ノクターナル・アニマルズ」 解釈を観客に委ねるということ
※重大なネタバレあり。 - 脅威 は「北」からやってくる ――「新感染 ファイナル・エクスプレス」
韓国アニメ界で活躍するヨン・サンホ監督による初の実写映画。韓国版シン・ゴジラとも言えるクオリティになっていた。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
-
1歳赤ちゃん、寝る時間に現れないと思ったら…… 思わぬお仲間連れとご紹介が「めっちゃくちゃ可愛い」と220万再生
-
【今日の計算】「8+9÷3−5」を計算せよ
-
「プロ野球チップス」で誤字 伊藤大海投手を「176m」と記載してカルビー謝罪
-
「ママ友襲来10分前」→さぁ、どうする……? 大爆笑の“あるある”再現が400万再生突破「腹ちぎれました」「バナナ食べんでもええやん」
-
富山県警のX投稿に登場の女性白バイ隊員に過去一注目集まる「可愛い過ぎて、取締り情報が入ってこない」
-
21歳の無名アイドル、ビジュアル拡散で「あの頃の橋本環奈すぎる」とSNS騒然 「実物の方が可愛い」「見つかっちゃったなー」の声も
-
「大型魚の餌に!!」 熱帯魚店の“思わず目を疑うPOP”に恐怖 「サメでも飼うの?」
-
2カ月赤ちゃん、おばあちゃんに手をスリスリされた瞬間…… 愛と幸せあふれる空間に笑顔になる「これぞ天使だ」
-
漂う違法感 東京に戻る息子へ持たせた“大量のブツ”に「九州人あるある」「帰省からの帰りいつもこれ」の声
-
異世界転生したローソン出現 ラスボスに挑む前のショップみたいで「合成かと思った」「日本にあるんだ」
- 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
- 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
- 安達祐実、成人した娘とのレアな2ショット披露 「ママには見えない!」「とても似ててびっくり」と驚きの声
- 兄が10歳下の妹に無償の愛を注ぎ続けて2年後…… ママも驚きの光景に「尊すぎてコメントが浮かばねぇ」「最高のにいに」
- “これが普通だと思っていた柴犬のお風呂の入れ方が特殊すぎた” 予想外の体勢に「今まで観てきた入浴法で1番かわいい」
- 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
- 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評
- お花見でも大活躍する「2杯のドリンクを片手で持つ方法」 目からウロコの裏技に「えぇーーすごーーい」「やってみます!」
- 弟から出産祝いをもらったら…… 爆笑の悲劇に「めっちゃおもろ可愛いんだけどw」「笑いこらえるの無理でした」
- 3カ月の赤ちゃん、パパに“しーっ”とされた反応が「可愛いぁぁぁぁ」と200万再生 無邪気なお返事としぐさから幸せがあふれ出す
- フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
- 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
- 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
- フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
- スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
- 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
- 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
- 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
- がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
- 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」