【食べたら更新】朝井麻由美の「ウニ日記」

幸せのオレンジ色を記録していく場所です。

» 2018年04月15日 12時00分 公開
[朝井麻由美ねとらぼ]

ウニ日記、始まります

 ウニが好きだ。これはウニをあまりに愛しすぎてしまった一人の人間が、淡々とウニを食べた日のことについてしたためていく日記である。「連載」と言っていいのかすら分からない。何かウニについて含蓄のあることを書くわけでもなければ、お役立ち情報を意識して更新するわけでもない。あるのはただ、ウニの写真と、それを食べたときの感情、そして、気付き。私くらいウニが好きだと、ウニひとつひとつに対して何らかの「気付き」がある。愛ゆえだ。



 なお、この日記は、写真フォルダに残っていた最古のウニということで2014年1月のウニから始まっているが、当時行った中には閉店している店すらある。既に閉店した店について語るなど、元来ニュース性が重視されるインターネットメディアの記事としてはあるまじき行為である。それでも私は、ウニを食べて、書く。グラビアアイドルを撮るかのように、さまざまな角度からウニを撮り、画像加工をする。



 初回は2014年1月から2018年4月までの、合計23回のウニ体験について書いた。今後も、ウニを食べたときにひっそりと更新される予定だ。

 最近ではウニ好きが高じて、ウニ以外の食べ物を食べているとき、常に脳裏にはウニがちらつくようにすらなってきた。私が今日食べることのなかったウニはどうなるのだろう。私が食べずして、誰がウニを食べるのだろう。本気でそう思っている。



 人生で食べられるウニの総量は限られている。ウニを食べ尽くすには人の一生はあまりに短い。ウニは決して安くはないが、生涯のウニ総量を言い訳に、今日も私はウニを食べる。いつか、人生で最もたくさんのウニを食べた人間として、何らかの文献にでも記録されたらいいと思っている。


2014年1月17日

 写真フォルダをさかのぼると、最も昔のウニ写真はこれだった。最古のウニではあるが、当然この日に初めてウニを食べたわけではない。

 この日は、どうしてもウニを食べたくなり、衝動的に築地に行ったんだったと思う。驚くべきは、2014年前後の写真フォルダにこのウニ写真以外の食べ物がほとんどないことである。もともと私は食べる前に写真を撮るのを面倒くさがりがちだった。それが、ウニだけは撮っていたあたり、ウニを目の前にしてよっぽど喜びに打ち震えていたのだろう。写真を撮る習慣がなかったために、撮り方もまだこなれていない。今ならもっとこのウニ丼をおいしそうに撮ってあげられるのに。


築地のウニ丼と、別の店の握り。ウニを撮り慣れておらず、ピントが合っていない

 また、特筆すべきはこの日、ウニ丼を食べたあとに、別の店で握りまでいただいていることだ。これは明確に覚えている。ウニ丼に載っているウニだけでは、物足りなかったのだ。白米に対してウニの量が少なく、最後に残った酢飯を口に詰め込みながら、私はさらなるウニを欲した。ウニばかり食べてしのびなかったからか、言い訳がましく大トロも一緒に注文した痕跡がある。今ならウニ二貫にしていただろう。


2014年1月20日

 勝どきの立ち飲み屋「かねます」へ「ウニの肉巻き」を食べに行った。SNSなどでもしばしば話題になっている有名店である。平日の16時、オープン直後に行っても並んでいることが多い。この日、ウニの肉巻きを食べた私は言葉を失った。地球上にこんな食べ物が存在していては、人はダメになると思った。この食べ物を巡って、人類は争いを始めてしまうのではないかと恐れた。


当時の端末が古かったからか、こちらも写真のクオリティが低い

2014年7月7日

 東京・麹町にある「ほっ」へ。そこらのウニ丼よりもウニの量を多くした「理想のウニ丼」を取材で食べに行った。ここは海鮮の店でも居酒屋でもなく、バーである。店構えもバーそのもの。店内にはカウンター席しかないため、海鮮居酒屋のような店を想像して行くと結構ビックリする。

 かねて「世の中のウニ丼はウニとご飯のバランスが悪い」と思っていたマスターが、独自のルートでウニを安く仕入れてウニ丼を始めたらしい。そうなのだ、世のウニ丼のほとんどは、ウニの量が少なすぎるのだ。大抵がウニのほかに、玉子焼きやきゅうり、ガリ、海苔などをのせて、ウニの少なさをごまかしている。こっちはウニを食べに来ているわけで、きゅうりやガリに用はない。ウニ以外のいろいろなものを丼にのせることでスペースを稼ぐならば、ウニ丼を名乗らないでほしい。いっそ、ウニきゅうり玉子焼き丼に改名すべきではないか。

 さて、この店には二種類のウニ丼があり、「理想に近いウニ丼」がこちら。これだけでも相当ウニがたっぷりのっている。なにしろ、玉子焼きやきゅうりをのせてごまかしていない。


「理想に近いウニ丼」

 そして、こちらが「理想のウニ丼」。並べなくても分かるくらい、明らかにウニの量が違う。


「理想のウニ丼」
左が「理想に近いウニ丼」、右が「理想のウニ丼」

 「理想のウニ丼」のほうは、ウニで覆いつくされていて、ご飯が見えない。


「理想のウニ丼」を近くで見てみましょう
「理想のウニ丼」を食べます

 さらにはこのウニ丼、お米もウニの混ぜご飯になっているのだ。


ウニの混ぜご飯
ウニの下にもウニ
付け合わせのお味噌汁にもウニ

 なお、後述するが、2018年3月現在はこの店で出しているのは「理想のウニ丼」のみ。また、ご飯もウニの混ぜご飯ではなくなっている。約4年ぶりに食べに行ったところ、ウニの量は健在ながら、ご飯が白米にダウングレードされていることが発覚した。好きなアイドルや役者が引退するとき、「もっとライブや舞台を観に行っておけばよかった」と嘆くファンは多い。どんなに好きでも、忙しさにかまけて足繁くは行けないのが現実だ。ウニ好きでありながら、二度、三度と行かなかった自分を恥じている。


2014年10月1日

 かつて渋谷にあった「大漁まこと」。はまぐりラーメンで有名な店だったが、ほかにもカニやイカ、そしてウニなどさまざまな魚介を使ったつけ麺を提供。残念ながら現在は閉店してしまった。移転のための閉店だったらしいが、どこかへ移転した話はその後聞かない。

 食べたのは、「濃厚 雲丹まみれつけ麺」。つけ麺というより、ウニ料理と言ったほうが近い。こってりとしたウニのスープで食べる太麺パスタという感じだった、と思う。味の記憶は薄ぼんやりしてしまっているけれど、思っていた以上にウニの味が強く、一口食べた瞬間、強烈な衝撃が走ったそのときの感情は今でも覚えている。


「濃厚 雲丹まみれつけ麺」

2014年12月27日

 金沢へ行った際に食べたのどぐろ丼に、ウニがのっていた。こういうちょっとしたウニも、ウニ体験のひとつとして数えていきたい。大きくても小さくても、かけがえのないウニであることに変わりはない。


ウニがのっているのどぐろ丼


2015年1月20日

 ウニパスタを注文すると大抵、パスタが盛られたてっぺんに申し訳程度のウニが2つ3つお上品に乗っている。パスタソースのほうにウニが使われているとはいえ、固形物としてのウニの量はあまりに少ない。



 今までの人生で最強のウニパスタは、取材で食べた「ケンズカフェ東京」のパスタ一択。見渡す限りウニが敷き詰められたパスタはほかで見たことがない。


顔よりも大きいお皿に盛られたウニまみれのパスタ

 ただし、20人以上の貸切予約限定。これを20人で分けたら果たして一人あたりのウニの取り分はどれくらいか……とか野暮なことは考えてはいけない。この見た目を存分に楽しもう。



 なお、「ケンズカフェ東京」はガトーショコラでも有名なお店。当時、シェフの氏家健治さんは「いつか自分の店を持ったら、ウニがすき間なく敷き詰められたパスタを出そうと思っていた。ロマンです(笑)。利益度外視だけど面白いからやっているだけ」と言っていた。利益度外視のロマン、今でもやっているのだろうか……と調べてみたら、どうやら2015年6月でウニパスタのコースは終了し、ガトーショコラの店一本に絞ったようだ。

 ここまで書いただけでも、いくつもの店が既に閉店していたり、路線変更していたりしている。ウニとの至福な時間は永遠ではないのだ。ウニとの出会い、ひとつひとつを大切に生きていきたい。


2015年6月7日

 「海栗BAR Kai 一章」へ行った。全てのメニューがウニまみれという、ウニ界のワンダーランドのようなお店である。

 この日のメニューは、自家製ウニ塩、自家製ウニ塩で食べる豆腐、本日のウニ 産地食べ比べ三種、いかのウニ塩辛、自家製からすみとウニ、ウニの茶わん蒸し、ウニのムース、自家製ウニバターとバケット、自家製ウニバターと極上有明海苔、ウニの昆布醤油漬けと甘えび、アボカドディップとエビ ウニソースのカクテル、エビ天ぷらとウニマヨネーズ、ノンオイルウニドレッシングのサラダ、尾崎牛とウニの握り、極上ウニの握り三種、ウニのパスタ、ウニ出汁で食べる稲庭うどん、小さめなウニ丼、自家製ウニのアイスクリーム、尾崎牛ハンバーグ、尾崎牛ステーキ、岩ガキ。


「本日のウニ 産地食べ比べ三種」

 22種類のメニューのうち、ウニではないのがハンバーグ、ステーキ、岩ガキの3種類のみという狂気ぶりである。ウニに目がくらみ、鬼と化した私という魔物は、ほとんど「このメニューのウニ、端から端まで」のようなことをやってしまった。この日のお会計での、伝票に筆圧強めに書かれていた数字は思い出したくない。


「ウニのムース」

 特においしかったのは「本日のウニ 産地食べ比べ三種」「ウニのムース」「ウニの昆布醤油漬けと甘えび」。ウニのアイスも食べたが、それはそれはもう、おいしいんだけど、あなた、どうしてこれをアイスにしちゃったの、と。


「ウニの昆布醤油漬けと甘えび」

2016年11月16日

 2日間ウニをひたすら食べまくる取材のために東北へ。この旅でのルールは、ウニ以外のものは口にしてはいけない、である(飲み物は可)。朝もウニ、昼もウニ、おやつもウニで、夜もウニ。到着後、最初の店に入った私は「生ウニ丼と、生ウニの刺身と、いちご煮をお願いします」と真顔で注文した。結構わりとまあまあ恥ずかしかった。


生ウニの刺身
生ウニ丼
いちご煮

 夕飯は、本八戸駅の屋台街「みろく横丁」で、ウニの貝焼き、ウニのあんかけチャーハンをいただいた。仕事帰りのおじさんたちがべろんべろんに酔っぱらう狭い店内で、女1人、黙々とウニを食べ続ける姿はなかなか異様な光景だったと思う。ウニばかり注文したら、お店の人がウニ増量してくれた。


ウニの貝焼き
ウニのあんかけチャーハン

 翌日、久慈駅構内の「三陸リアス亭」の「うに弁当」を買いに行った。


久慈駅

 この店のおかみさんは、「あまちゃん」の「夏ばっぱ」のモデルとなった人らしい。事前に予約をしておかないと入手困難な名物弁当である。


うに弁当
ウニがびっしり!

 「うに弁当」に使われているウニは蒸しウニ。生ウニと比べたらさすがに味は劣る。けれど、ウニがびっしり敷き詰まっている駅弁、それ自体がエンターテインメントなのだ。このまま食べずに額縁に入れて飾りたい、と本気で思った。ウニがすき間なく並んでいる姿ほど、人の幸福感を煽るものはないのだ。


2017年3月11日

 代官山の「ジェニスガストロ」で特濃ウニのフランを食べた。なんと1個400円。ただし量は決して多くない。完食後、もう1つ注文しそうになるのを、すんでのところでこらえた。ここは喫茶店ではなく、レストランだ。カプチーノをおかわりするように、いくつも食べるものではない。大人の世界には、そういう暗黙の決まり事がある。大人だから、我慢した。でも、大人だから、400円くらいどうってことなく払えてしまうのが困る。



 大人ぶってなんかいないで、あのとき素直におかわりしておけばよかった……、その気持ちがより「特濃ウニのフラン」の後味に旨味を加えている気がする。


2017年3月15日

 自由が丘「ミキヤズ」で「ウニと大葉のクリームソース」を食べた。ウニのソースがつゆだくだった。パスタを食べ切ったあとにもたくさん残ったソースを、スプーンですくってゴクゴク飲んだ。




2017年4月6日

 「寿司さいしょ」と「格之進R」が共催するイベント「うにく祭り」へ。



 ものすごくおいしいウニが、ものすごくおいしいお肉で巻かれていて、ものすごくおいしいトリュフオイルがかかってて、ものすごくおいしい食べ物はものすごくおいしいなと思ったのだった。



2017年4月11日

 通りすがりに「ウニのローストビーフ丼」の文字が見えたので、吸い寄せられるように店内へ。店の名前は覚えていないけれど、手帳を見返すと高田馬場だった可能性が高い。ウニと肉の上に、卵黄を乗せるのはズルい、と思った。



2017年5月6日

 「寿司さいしょ」ではウニの大量入荷ができたときに不定期で「ウニ祭り」をやっている。前回行った「うにく祭り」は、ウニの肉巻きがメインだったが、今回の「ウニ祭り」ではウニの握りを大量にいただける。目の前でおびただしい数のウニ軍艦が握られ、一人10貫配られる。



 さらには、その日入荷したバフンウニやムラサキウニ、ミョウバンを使っていない塩水ウニなどさまざまな種類のウニが追加でやってくる。


バフンウニ、ムラサキウニ、塩水ウニなど

 最後のトドメで、「うにく」が登場。ちなみに「寿司さいしょ」はこの「うにく」で商標を取得しているのだ。


「うにく」

 「ウニ祭り」のイベントは常連も多く、各地のウニ好きがたくさん来ている。大量のウニ軍艦を、少しずつ大切に食べる人もいれば、すごい早さで一気に食べてしまう人もいる。私は後者だ。1秒でも新鮮なうちに食べたい。


2017年6月19日

 オイスターバーの「オストレア」にて、期間限定で提供されていたウニ牧場のウニを食べに行った。天然昆布だけを食べて育ったウニだそうだ。旨味が強かった。



2017年10月24日

 どうしてももう一度行きたいと焦がれていた「海栗BAR Kai 一章」へ再び行ってきた。食べ物が美しく撮れるアプリを導入したため、撮影がはかどる。


「生ハムとウニ」
「尾崎牛のウニ巻き」
「ウニの茶わん蒸し」

 相変わらずのウニだらけのメニューに興奮してウニのグラビアを撮りまくっていたら、画像フォルダがすごくオレンジ色になった。


すごくオレンジ色です

 最初から最後までウニ。デザートのアイスもウニ味。何もかもがウニ。すごくウニだ。


「本日のウニ産地食べ比べ三種」


「厳選ウニの握り三種」

 ちなみに、二年前に行ったときはたったの3リツイートでほとんど見向きもされなかったにもかかわらず、今回は1000リツイートを超えた。時代がウニに追い付いてきたのだ。



「ウニのクリーミーパスタ」
「自家製ウニのアイスクリーム」

2017年11月26日

 青山の「焼肉ホルモン 青一」で「肉うに」と「ローストビーフうに重」を食べた。


「肉うに」

 少し炙っただけの生肉にウニ、という官能的なビジュアルだけで破壊力のある逸品。


「ローストビーフうに重」

2017年12月5日

 私が日本で一番おいしいと思っているおにぎり屋・「ぼんご」。大塚駅前にある「ぼんご」は、おにぎりを求める人々で行列ができることも少なくない。


左が「うにくらげ」、右が「卵黄の醤油漬け」

 「ぼんご」で私がほぼ毎回必ず頼むのは、うにくらげと、卵黄の醤油漬け。あと、すじこもおすすめ。ウニも卵黄もすじこも、命の誕生に関わる食べ物である(※ウニの身の部分は卵巣や精巣にあたる)。生命の神秘はおいしいのだ。

 ところで、これまでの軌跡を数えてみたところ、2014年には5回ウニを食べ、2015年は2回、2016年は1回。それに対して、2017年に食べたウニの回数は9回。そしてこのあと続く2018年はなんと4月にして既に6回も食べている。加速度的に増していくウニ頻度。1日1ウニ生活も夢じゃない。


2018年1月10日

 質のいい海鮮を提供してくれる八重洲の居酒屋「いづみや」。



 ウニが好きすぎて、一番美しく見える角度で撮ってあげたい、というよく分からない境地に入り始めた。一人で飲みに来てるのにウニのお代わりをしたら、相当なウニ好きと思われたらしく、二回目は箱で出してくれた。多分、量もおまけしてくれている。「好き」を素直に出すって大事だ。


いろいろな角度から撮ったウニ

2018年1月28日

 四谷のウニ専門店「ウニココ」。とんでもない店に出会ってしまった。


「ウニの食べ比べプレート」

 まず、この店の名物「ウニの食べ比べプレート」は、その日に食べたウニのスタンプを押してもらえて、50個集めようというウニ廃人向けの仕様。


この日食べてスタンプを押してもらったウニ

 そこそこシャレたイタリアンレストランなのに、ウニを食べた回数にスタンプ制を導入しているあたり、何かがおかしい。季節や産地でまったく味わいが変わるウニをたくさん食べに来てほしい、という店主のはからいから生まれたシステムである。季節によって日本全国のウニが食べられるらしい。紫色のスタンプはムラサキウニ、朱色のスタンプはバフンウニである。


「ウニと牡蠣と生カラスミのミニバーガー」
「安納芋のクレマ」
「ウニパスタ」

 ウニの食べ比べ以外の料理もすごい。前菜はウニと牡蠣と生カラスミが挟まったミニバーガー。ウニとイクラとキャビアとトリュフがこんもり乗った安納芋のクレマ。パスタよりもウニの量のほうが多いウニパスタ。ウニキャラメルのソースがかかった烏骨鶏のパンナコッタ。


「烏骨鶏のパンナコッタ ウニキャラメルソースがけ」

 メインのロッシーニに至っては、黒毛和牛の上にフォアグラと蒸しウニを乗せて、その上から煮詰めたトリュフソースをかけて、烏骨鶏の卵黄とウニとキャビアをかけて、最後に削りトリュフを乗せたという、よく分からない領域に達していた。この世界の食の暴力の全てがここにあった。


「ウニココのロッシーニ超え」

2018年2月5日

 梅が丘のお寿司屋「美登利総本店」の寿司食べ放題でウニを食べた。ちなみに、毎週月曜日にやっていたこの食べ放題サービスは、2018年2月末で終了してしまった。安価でウニを大量に食べられる貴重な場がなくなってしまったのは惜しい。



2018年3月6日

 このウニ日記を書くことが決まってから、過去のウニ写真、及び記憶を掘り起こすのに結構時間がかかった。その間、私は3回もウニを新たに食べてしまった。1ウニ進んで2ウニ下がる。



 その3回のウニの1回目が、「寿司さいしょ」の「ウニ祭り」だ。2017年4月に初めて行ってから、写真が残っているだけで3回目。この間に一度、端末の写真を保存する前に紛失してしまったことがあるため、もっと行っているような気もする。


全て塩水ウニ

 今回は、ミョウバン不使用の塩水ウニだけを使った「ウニ祭り」だった。数種類のフィルターを用いて、さまざまな表情のウニを撮ってきたので、見てほしい。




2018年3月27日

 2014年7月に行った「ほっ」のウニ丼を再び食べに。店内が暗くてうまく撮れなかったため、写真はなし。おいしそうに撮れなかったウニは、無理には載せない。ウニには常にキレイな姿でいてほしいのだ。

 この日、じつに4年ぶりに食べに来たが、「理想のウニ丼」はウニの混ぜご飯ではなく、普通の白米になっていた。そういう意味ではウニの総量は減ったものの、ご飯に対して十分すぎるウニが乗っているのは健在。普通に食べていても、つまり、ウニをケチらず食べていても、最後に米でなくウニのほうが残るのは素晴らしい。


2018年4月4日

 築地で仕事の打ち合わせをしたあと、ウニを求めて市場のほうへ行った。「うに小屋」ではその場で殻つきのウニを食べられる。



 店の端に備え付けてある、殻入れの赤いバケツがなかなか味わい深い。



 殻つきウニを食べた後、そのすぐ隣の「うに虎」へ。食べたのは5種食べ比べ丼。この日のウニは上から時計回りに根室産、青森産、厚岸産、宮城産、釧路産だった。根室産はコクうま、青森産はやや苦く、厚岸産は甘い。宮城産は大粒で爽やかな味わい、釧路産は濃厚。特に気に入ったのは、厚岸産と釧路産だった。

 ウニだけでも十分な力量だというのに、この店のウニ丼には卵黄まで乗っているあたり、最強のウニ丼を提供してみせる、という強い意志を感じる。まずは産地のウニをそれぞれ単体で一枚一枚食べて、次にご飯と混ぜていただく。丼を半分くらいまで食べたあたりで卵黄を崩して、ウニとのハーモニーを楽しむのがおすすめだ。



2018年4月27日(2018年8月12日更新分)

 中野へ舞台を観に行く道すがら、「特濃生ウニのプリン(当店人気No.1)」という看板を見かける。ウニはおいしい。プリンもおいしい。おいしいものとおいしいものが組み合わさったら、それはおいしいに決まっている。観劇中、数分に1回ウニプリンが頭によぎる。可及的速やかにウニプリンを食べなければならない。帰り際、吸い寄せられるように入店するも、ウニプリンは完売。ウニに笑う日もあれば、ウニに泣く日もある。



2018年4月28日

 お寿司食べ放題に行った。昨日のウニプリンの恨みを晴らさいでか。寿司食べ放題だけど、私からすれば、ウニ食べ放題と言ったほうが正確である。米がウニを乗せているのではなく、ウニが米に乗っている。主語はいつだって、ウニのほうだ。



2018年5月23日

 長崎出張の帰りに、空港でウニを食べた。ここの店は、長崎でとれた魚介類だけを使っているらしい。正直、空港の中の店に期待はしていなかったけれど、ちゃんとおいしかった。ちゃんとしたウニだった。港町のウニはちゃんとしている。



2018年6月9日

 新宿でウニを食べた。「築地すし好」というチェーン店だ。これが思いのほか、旨い。最初はウニ3貫でとどめておいたところ、予想外の旨さにびっくりして追加で8貫も頼んでしまった。注文するときに少々恥ずかしい、というのは、ウニ好きが皆、通る道である。



2018年6月13日

 以前、ウニプリン完売で涙を飲んだ中野の「ボケリア」へ。今回はオープン時間を狙って万全の状態で出陣。まだ私以外ほかに誰もお客さんがいない中、「ウニプリン」を食べた。ウニが、確かにプリンだった。そこにあるのは紛れもなくウニ。しかし、プリンである。どういうことなのだろう。ウニはプリンだったのだろうか。はたまた、プリンがウニなのだろうか。

 調理されたウニというのは、風味が落ちてしまうことも少なくない。しかし、これはウニがきちんとウニのまま、そこに存在していた。調理されても、ウニとしてのアイデンティティを保っていた。これを奇跡と呼ばずして、なんと呼ぼうか。



2018年6月30日

 寿司食べ放題をやっている銀座の「雛鮨」へ。この日は少しウニの量は控えめ。初対面の人たちがたくさんいる会合だったからだ。大人数で行く寿司はいつだって、ウニを食べたい気持ちと自意識との戦いである。



2018年7月3日

 ウニパスタを食べた。ソースの量をダブル(2倍)にできるとのことで、迷わずダブルに。ウニパスタが抱える普遍的な問題として、パスタの量に対してソースが足りていないというのがある。そもそも私は味が濃いものを多めにとらないと、炭水化物を食べられないタイプの人間だ。カレーも、ご飯の2倍はルーがほしい。たぶん、ご飯無しでルーだけでも食べられると思う。ウニパスタも同様、まっさらなパスタだけでは食べられないが、ウニパスタのソースだけをゴクゴク飲めと言われたら、可能だ。

 運ばれてきたパスタは、ウニが濃厚だからなのか、付け合わせに生の玉ねぎが添えてあった。まずは玉ねぎだけを最初に一気に食べる。他の何にも邪魔されることなくウニに浸りたかったからである。口直しに生玉ねぎでサッパリなど笑止千万。付け合わせは甘え。


(更新分ここまで)


朝井麻由美(@moyomoyomoyo

フリーライター・編集者・コラムニスト。近著に『「ぼっち」の歩き方』(PHP研究所)、『ひとりっ子の頭ん中』(KADOKAWA中経出版)。一人行動が好き過ぎて、一人でバーベキューやスイカ割りをする日々。


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