高級キーボードの「使えば分かる良さ」って一体、何なんです? 「REALFORCE」の東プレに聞いてみた
高級キーボード未経験の筆者が、教えてもらってきました。
キーボードの価格帯は広く、安いものなら千円札でお釣りがきます。その一方で、1万円以上は当たり前、2万〜3万円台も珍しくない「高級キーボード」も人気を博しています。
筆者の経験上、高級キーボードユーザーに「まだ使ったことがないんだけど、どこが良いの?」と尋ねると、返ってくるのは決まって「使えば分かる」という答え。それ以外の回答が難しいのかもしれませんが、肝心の使用経験がないからこそ質問しているわけでして……。聞く側にとっても、答える側にとっても悩ましいところです。
何とかして未経験者にも分かるように、言語化することはできないのでしょうか。国産高級キーボードの代表格「REALFORCE」を製造する東プレに聞いてみました。
東プレさん、高級キーボードの「使えば分かる良さ」って一体、何なんです?
―― 高級キーボードの「使えば分かる良さ」って、もっと具体的に表現できないものなのでしょうか。
東プレ:今回は、REALFORCEを例に説明してみましょうか。同製品の特徴の1つは耐久性です。
弊社は1983年から静電容量方式(※)という仕組みを使った耐久性の高い業務用キーボードを作っていて、身近なところだと一部コンビニのATMなどにも利用されています。その技術を一般ユーザー向けに活用したのが、REALFORCEシリーズです。
※ キーボードの仕組みは大きく分けてメンブレン方式、メカニカル方式、静電容量方式の3つ。特に高級キーボードは静電容量方式の独壇場で、価格.comによるとおおむね1万5000〜3万円ほど(執筆時点)
それから、もう1つの特徴は、社内での言い方を使うと“フィーリング”の良さ。いわゆる「使えば分かる良さ」に相当するのは、これだと思います。
―― なるほど。では、そのフィーリングの良さって何なんですか?
そうですねえ、言い換えるなら、使い心地の良さというか。
うーん、実際に使ってもらえば分かるところだと思うんですが……。
―― どうしてもそこに行き着いてしまうものなんでしょうか……。
感覚的なところがあるので、言葉にするのはやっぱり難しいですね。でも、仕組みから理解すれば、分かりやすく説明できると思います。
例えば、安価なキーボードでは、よくメンブレン方式が採用されています。内部に2枚のシートが入っていて、キーを底まで押し下げてシート同士が接触すると「オン」になって入力できる仕組みです。
―― それが使い心地、フィーリングにどう影響するんですか?
このとき、指にどんな負担がかかっているのかというと、押し下げている間、指への荷重が増していきます。それでキーを押しきると、今度は反力が掛かります。底に当たったところで、押し下げているのと反対方向の力が生じるんですね。
メンブレンキーボードを打つという動作は、この繰り返しです。長時間使用していると、少しずつ指の筋肉に負担がかかり、疲労感につながります。
―― 指を軽くぶつける作業をひたすら反復しているようなイメージでしょうか。
静電容量方式のREALFORCEは、仕組みが異なります。各キーの下に円すい状のバネが入っていて、キーの操作に合わせて伸び縮みします。すると「静電容量」が変化し、一定以上の変化を「オン」と見なして入力できる仕組みです。
底打ち(キーを最後まで押しきること)しなくても、入力検知ができるように調整しているので、指に反力が掛からない使い方が可能です。データ入力のような「キーボードを打ってなんぼ」の世界でREALFORCEを使っている方だと、「打つ」というか「優しく触る」ような使い方だったりしますね。
また、キーを押し下げていくと途中でスッと軽くなる感触があります。キー内部にドーム型のラバーが入っているんですが、その荷重が抜けるポイントがあって。使い慣れると、ここでキーの押し込みを無意識的にやめられるようになります。
―― キー内部のラバーって、使い心地を良くするために入れているんですか?
フィーリングの良さに配慮した設計になっていますが、本来は押されたキーを元の位置に戻すためのパーツです。バネがあまり強くないので、ラバーを入れないとキーがへこんだままになってしまうんです。
―― そもそも構造的に必要だったものが、一石二鳥で役立っているというわけですか。
このような特性があるため、REALFORCEではより楽に、より少ないストレスで、キーが打てます。
手が疲れたりイライラしたり、そういう嫌な感じがなくて、キーボードの存在を意識せず作業に集中できることが、高級キーボードならではの「使えば分かる」良さなんだと思います。
数万円もする高級キーボードと聞くと、「他とは違う、どんな良さが“ある”のか?」と考えてしまいがちですが、実は使用時のストレスや違和感が“ない”というのがその答え。キーボードの存在を意識せず、作業中に思考を妨げることがないというのが、理想的なキーボード体験であるというわけです。
ちなみに、ねとらぼ編集部内にも高級キーボードユーザーがおり、どこが良いのか聞いてみたところ、次のように説明してくれました。
「指へのダメージを少し軽減してくれる効果がある。1回打つだけだと安いキーボードとの違いを感じにくいけど、仕事終わりまでPCに向かっていると、指のヒットポイントにけっこうな差がついていて、『あ、腕が軽い』みたいな。ドラクエに例えるなら指に装着する『しんぴのよろい』、FFなら『リジェネ』を指にかけているような感じ」。
さすが毎日のように記事を書いているだけあって、「使えば分かる」よりも親切な教え方。でも、分かりやすいような、余計に分からなくなったような……。
(マッハ・キショ松)
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言うほど青い光と感じないけど……。
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