「海賊版という認識なかった」 Anitubeに毎月広告費1300万円を支払っていた代理店が取材に応じた(1/2 ページ)
Anitubeの運営者が起訴されていたことも分かりました。
海賊版サイト問題で注目されている広告代理店のモラルと責任。複数の関係者へ取材を続けたところ、渦中の海賊版サイトに広告を配信していた代理店Z社(※)が取材に応じ、Anitubeに月1300〜1500万円の広告費を支払っていたことを認めました。また取材の過程でAnitubeの運営者が2017年10月に起訴されていたことも分かりました。
※CyberZとは別会社です。
Anitubeと密接な関係があった広告代理店Z社
動画海賊版サイト「Anitube」は、政府から漫画村などとともにサイトブロッキング対象として名指しされた一つ。多くのアニメなどが無断で配信されていましたが、4月16日ごろからサイトへアクセスできなくなりました。
サイトにはいくつかのWeb広告が貼り付けられており、広告料がAnitubeの運営費になっていたことは間違いないとみられています。
広告代理店Z社はAnitubeと関わりを持っていた企業で、アドネットワークを経由してDMMのアダルト広告、NTTソルマーレが運営する電子書籍配信サイト「コミックシーモア」、アムタスが運営する「めちゃコミック(めちゃコミ)」のアダルト広告、リアズが運営するチャットアプリの広告などを配信していました。
DMM、NTTソルマーレに関してはこれまでの取材で、掲載NGのサイトを記した「ブラックリスト」を広告代理店側に配布していることが分かっていますが、海賊版サイトは日々増えていっているということもあり、各広告代理店はリスト入りを免れたサイトに続々と広告を配信していたようです。さらに悪質な広告代理店では、ブラックリストを企業側から受理しているのに掲載を続けるといったケースもあるとのことで、広告代理店側のモラルが問われています。
Z社「海賊版サイトと認識しておりませんでした」
ねとらぼ編集部では社名があがったZ社に取材を交渉。なぜ海賊版サイトへ広告を配信していたのか、出稿主は海賊版サイトへ広告を配信しているという認識があったのかなどの質問をぶつけたところ、企業名を出さないことを条件に、取材に応じてもらうことができました。
――Anitubeとの取引が始まったのはいつ頃からでしょうか。
Z社:2014年からです。
――月にどれ位の広告費が支払われていましたか。
Z社:月によって変動はありますが、平均で月1300〜1500万円程度の取引がありました。
――どういったいきさつでAnitubeと取引を始めることとなったのですか。
Z社:当時の担当者が退職しているため取引に至った経緯は不明です。申し訳ございません。
――Z社がAnitubeなどの海賊版サイトに広告を配信しているということは把握していましたか。
Z社:海賊版という認識はありませんでしたが、2018年2月にアニメ・マンガ海賊版対策協議会に委託された企業より弊社に問い合わせがあり、Anitubeは海賊版サイトの可能性が極めて高いと判断し、3月末にて取引を停止しました。
――編集部では一連の取材で、Anitubeはブラジルの「ANIGRUPO AGENCIAMENTO DE ESPACOS PUBLICITARIOS LTDA」という法人が運営しており、運営者についてはMaurilio Sueo Nos氏ではないかとみています。この情報についてはいかがでしょうか。
Z社:運営者であるかは把握しておりませんが、弊社が広告取引を行っていた際の担当者はご指摘の方で相違ありません。
――海賊版サイト等に広告が出てしまう可能性について、クライアントには説明していましたか。またクライアントから「Anitubeに出稿したい」など、海賊版サイトを指定して出稿するケースはありましたか。
Z社:海賊版サイトと認識しておりませんでしたので、弊社から特段の説明はしておりませんが、クライアントよりAnitubeと媒体指定されるケースもありました。
――社内で配信先の選定を行う判断基準などは存在しましたか。
Z社:弊社サービスをご利用いただくにあたりまして、利用規約に同意して頂くことで広告掲載が開始されます。しかしながら違法性のある、または違法性の高い媒体を全て排除できているわけではないため、著作権者等からの問い合わせ・通報を頂き次第、調査の上速やかに掲載停止の対応をとっております。
――結果的に海賊サイトに資金を提供し、著作権侵害のほう助を行っていたことについてどのように考えていますか。
Z社:結果的には海賊版サイトへの資金を提供していた形になってしまったことは事実ですので、今後は管理体制を強化し健全化を推進してまいります。
海賊版サイトに広告を出して効果はあるのか?
Z社の回答では「海賊版サイトと認識していなかった」とのことですが、中には海賊版サイトと知っていてあえて出稿していた代理店もあったといいます。なぜ広告代理店はリスクを負ってまで海賊版サイトに広告を出稿するのか。こうした状況について、ある関係者は前述のZ社の内部事情について「2〜3年前ごろのAnitubeは非常に費用対効果の高いサイトと認識されていた」と語ります。
例えば“バナーを1クリックされたらいくら”という単価の広告の場合、クリック後の成約率(発火率)の高さによって広告単価が決まるため、調子の良いものの場合、1クリック20〜30円程度の単価のものがあったとのこと。仮に押し間違いなどでバナーがクリックされたとしてもその後の発火率が低ければ結局単価は上がらないため、結果的にAnitubeは成約率が非常に高いサイトであったということになります。
いずれにせよ無料視聴をうたうAnitubeなどの海賊版サイトをきっかけにオンラインゲームコンテンツや電子コミックビジネスの顧客が増えていたのだとすれば皮肉なことです。
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