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» 2018年06月17日 12時00分 公開

アルミホイル丸めて叩いても「鉄球」にはならないでしょ?→「いや、なるかも」という話

目指すところは宇宙なのかもしれない。

[QuizKnock,ねとらぼ]

 少し前の話になるが、「アルミホイルを丸めてハンマーでたたきまくる」のがネット上でブームになったことがある。



 アルミホイルの球を丹念にたたき続けると、光沢を出してさながら鉄球のようになる。試した人の中には完全に「鉄球を作りました!」と宣言しちゃっていることも。

 しかし、残念ながらアルミホイルは丸めてたたいてもアルミニウムで、いくら固くても丸くても鉄にはならない。「鉄」球じゃないのだ(揚げ足取りではない、はず……)。

 ――いや、本当にならないと言い切っていいのだろうか? どうにかしてアルミを鉄にできないか?


そもそも元素は別の元素になれる?

 アルミニウム(Al、原子番号13)も鉄(Fe、原子番号26)も1つの元素からなる金属である。では、アルミニウムが鉄に化けるなんてことはあるのか?

 ある元素が別の元素に変化するのは、



  • 原子核が崩壊する
  • 核分裂が起きる
  • 核融合が起きる

 のいずれかの場合しかない。原子核の崩壊は不安定な元素(放射性元素)で生じる現象で、今回は当てはまらない。

 核分裂が起きると、原子はそれより原子番号が小さい2つ以上の原子に分かれる。今回は原子番号が小さいアルミニウムから鉄を作りたいので、核分裂も違う。

 したがって、アルミニウムから鉄を作ろうとすると必然的に核融合を起こすことになる。


核融合とは?

 原子は、陽子と中性子からなる原子核と、その周囲を回る電子からなる。この原子核が高速でほかの原子核と衝突すると、2つの原子核が合体して1つの原子核になることがある。これを核融合という。

 例えば、日本の理化学研究所が合成に成功した原子番号113の新元素「Nh(ニホニウム)」は、ビスマス(Bi、原子番号83)に亜鉛(Zn、原子番号30)を秒速約3万kmで衝突させることで生み出している。

 ここで着目したいのが原子番号。原子番号は陽子の数を表していて、核融合後の陽子の数は元の原子核の和になるので、この例だと、ビスマス(83)+亜鉛(30)=ニホニウム(113)というわけだ。

 そこで、アルミニウムと鉄に注目してみる。アルミニウムは原子番号13で、鉄が26。アルミニウムをアルミニウムにぶつけたら……13+13=26!  鉄の原子番号と一致するじゃないか。

 いや、原子番号だけつじつまが合っても鉄が生まれるとは限らない。核融合では陽子と同様、中性子も合わせた数になるが、合成後の陽子と中性子の個数のバランスが悪いと不安定になり、崩壊を起こしてしまう可能性がある。

 (ほとんどの)アルミニウムの中性子の数は14個、つまり2つのアルミニウムが融合すると中性子の数は28個になるはず。鉄は多くの場合中性子を30個もつが、中性子28個の同位体(※)も比較的安定する。つまり、アルミニウムにアルミニウムをぶつければちゃんと鉄ができる(はず)!

※同じ種類の元素でも、原子核に含まれる中性子の数が異なるものがあり、それらをまとめて「同位体」という。アルミニウムはほとんどが14個の中性子をもつが、まれに13個しかもたないものも存在する。

 まずい、アルミホイルで鉄球ができてしまう説の信ぴょう性がどんどん増していく……。(まずくはない)


核融合を起こすには?

 もちろん、ハンマーでたたいたくらいでは核融合なんて起こらない。ニホニウムを生成したときのように、核融合が起きるには原子核が超高速で衝突する必要がある。

 「超高速」は固体状態の金属では到底到達できないので、原子単体を取り出して加速器にかけるか、高温・高圧にしてプラズマ化するかせねばならない。

 この超高温とはどのくらいか? 実はこのような核融合は星の内部でしばしば起きていて、鉄レベルに重い元素が核融合するのは30億度を超える場合であるとされる。

 アルミの球をハンマーでたたけば多少温度が上がる。これを繰り返して30億度にすれば、正真正銘の「鉄球」ができるはずだ!


できるはずだ! はずだ、はずだ、はずだ……(山びこ)

おまけ

 鉄と核融合は実は密接に関係していて、恒星内で起きる核融合では鉄より重い元素は生まれないことが分かっている。

 鉄より重い、例えば金や銀といった元素は超新星爆発の超高温でしか生成しない。鉄がやたら豊富に存在するのにも理由があるんだなあ。

制作協力

QuizKnock


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