盛り上がってきました「品川新駅大喜利」 そもそも駅名ってどんな言葉が選ばれる?月刊乗り鉄話題(2018年6月版)(2/3 ページ)

» 2018年06月19日 10時30分 公開
[杉山淳一ねとらぼ]

品川新駅に「芝浜」は粋じゃないかな

 品川新駅については、ネットではたくさんのアイデアが披露されています。そんな中で品川新駅の建設発表のころに見つけた「芝浜」がいいな、と思いました。

 このツイート、落語好きならピンときたと思います。「芝浜」は落語の演目です。もともとは三遊亭圓朝が即興で作った「酔っぱらい、芝浜、皮財布」の三題噺でした。それを四代目柳家つばめから教わり、三代目桂三木助が完成させました。初演からわずか1年で芸術祭奨励賞を受賞したという名作です。

動画が取得できませんでした
桂三木助(三代目)師匠の落語「芝浜」(YouTube/克也石黒)

 どんな話か、ネタバレですがあらすじを紹介します。下げに至るまでの話芸も見事。ぜひ聴いてみてください。

江戸に大層目利きの良い魚屋がいた。しかしこの男、酒好きの寝坊助のぐうたら者。しっかり者の女房にせき立てられて、仕方なく仕入れに出掛けると魚問屋がまだ開いてない。暇つぶしに浜で顔を洗っていると大金が入った財布を見つける。これはしめたと仲間とどんちゃん騒ぎ。翌朝、部屋で目覚めると財布がない。

女房は「財布なんか知らない。あんた夢でも見たんだろう」と素っ気ない。すっかり気落ちした魚屋は、このままじゃいけないと一念発起。酒を断って懸命に働く。もともと目利きがいいこともあって、3年もたつ頃には大きな店を構えるようになった。

そして3年後、女房は魚屋に恐る恐る打ち明ける。実はあの財布はあったんだ。盗んだとしれたら死刑になるかもしれないから、お上に届けた。しかし長らく落とし主は現れず、お上から下げ渡されたんだ。あんたをだまして悪かったと。

しかし魚屋、真面目に働くうちに性根も真っすぐになったと見えて、女房に怒るどころか感謝した。安心した女房は、お祝いだと魚屋に酒を勧める。大好きな酒を目の前にして喜びを隠せない魚屋。しかし、注がれた杯を置いてしまう。

「よそう。また夢になるといけねぇ」

 芝浜は仲睦まじい夫婦の物語。商人の出世を描いたサクセスストーリーでもあります。新しい街にふさわしい話です。何よりも江戸とこの地にちなんでいます。国際都市東京の玄関口の駅には似合わないかもしれない? いや、国際都市だからこそ、日本の伝統文化をテーマとした駅名がふさわしいと思いませんか。発車ベルは出囃子がいい。新しい街には新しい寄席があったらなおのこと「粋」ってものです。

photo 筆者所有のベスト落語 三代目 桂三木助 「芝浜」(日本コロムビア)

 三代目三木助は1961年に58歳で亡くなりました。しかし27歳年下の奥様、小林仲子さんはご存命です(2018年6月現在)。三代目三木助のお孫さんは2017年9月に五代目三木助を襲名。2018年6月15日に襲名披露興行を行いました。芝浜駅開業記念式典で、小林仲子さんを来賓に、五代目三木助の芝浜を演じるなんて、粋ですよ。鉄道に関する創作落語を得意とする噺家さんもいらっしゃる(関連記事)。にぎやかな記念落語会ができそうです。

 日本に1つくらい、落語に由来した駅があってもいいじゃありませんか。

(杉山淳一)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
先週の総合アクセスTOP10
  1. 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
  2. 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  3. 安達祐実、成人した娘とのレアな2ショット披露 「ママには見えない!」「とても似ててびっくり」と驚きの声
  4. 兄が10歳下の妹に無償の愛を注ぎ続けて2年後…… ママも驚きの光景に「尊すぎてコメントが浮かばねぇ」「最高のにいに」
  5. “これが普通だと思っていた柴犬のお風呂の入れ方が特殊すぎた” 予想外の体勢に「今まで観てきた入浴法で1番かわいい」
  6. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  7. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評
  8. お花見でも大活躍する「2杯のドリンクを片手で持つ方法」 目からウロコの裏技に「えぇーーすごーーい」「やってみます!」
  9. 弟から出産祝いをもらったら…… 爆笑の悲劇に「めっちゃおもろ可愛いんだけどw」「笑いこらえるの無理でした」
  10. 3カ月の赤ちゃん、パパに“しーっ”とされた反応が「可愛いぁぁぁぁ」と200万再生 無邪気なお返事としぐさから幸せがあふれ出す
先月の総合アクセスTOP10
  1. フワちゃん、弟の結婚式で卑劣な行為に「席次見て名前覚えたからな」 めでたい場でのひんしゅく行為に「プライベート守ろうよ!」の声
  2. 親が「絶対たぬき」「賭けてもいい」と言い張る動物を、保護して育ててみた結果…… 驚愕の正体が230万表示「こんなん噴くわ!」
  3. 水道検針員から直筆の手紙、驚き確認すると…… メーターボックスで起きた珍事が300万再生「これはびっくり」「生命の逞しさ」
  4. フワちゃん、収録中に見えてはいけない“部位”が映る まさかの露出に「拡大しちゃったじゃん」「またか」の声
  5. スーパーで売れ残っていた半額のカニを水槽に入れてみたら…… 220万再生された涙の結末に「切なくなった」「凄く感動」
  6. 桐朋高等学校、78期卒業生の答辞に賛辞やまず 「只者ではない」「感動のあまり泣いて10回読み直した」
  7. 「これは悲劇」 ヤマザキ“春のパンまつり”シールを集めていたはずなのに…… 途中で気づいたまさかの現実
  8. 「ふざけんな」 宿泊施設に「キャンセル料金を払わなくする方法」が物議 宿泊施設「大目に見てきたが厳格化する」
  9. がん闘病中の見栄晴、20回以上の放射線治療を受け変化が…… 「痛がゆくなって来ました」
  10. 食べ終わったパイナップルの葉を土に植えたら…… 3年半後、目を疑う結果に「もう、ただただ感動です」「ちょっと泣きそう」